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コンチェルト[2]
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あれから約2時間後。終わった解析の結果を確認する為、私達は資料室に入った。辺りにひしひしと、緊張に覆われた空気が漂っている。
「まず最初に伝えるが、この現象を単体で引き起こせる程の強力な妖怪は月橋市には居なかった。」
どうやら事は単純ではないらしい。でもまあ、そこまでの妖が居たのならばもっと早期に発見出来ていたはずだ。少しばかり納得し、次の言葉を待つ。
「そしてこれはある程度予測していたのじゃが…。市の中に四つ、空間の切れ目が存在していたのじゃ。」
「空間の切れ目…?」
「恐らく、瞬間的に強力な霊力が流れたが為に起きた現象であろう。中に入り修復すれば、月橋市が元来保持していた浄化・結界機能が発動するじゃろうな。」
「じゃ、次の作戦は空間の修復って事?」
そう聞くと部長は片目を閉じ、嬉々として答える。
「あぁ、そうじゃ。浄化機能さえ発動すれば、この現象も収まるであろう!」
つまり、それが勝ち筋。これは原因も理由も分からなかった病ではなく、ゴールの見えるマラソンとなったのである。
「それでは、作戦会議から始めるのじゃ。」
それから十分程の会議を経て、私達は準備を終えた。四つの切れ目にそれぞれ一人ずつ向かい、御霊は部長に着いて行くようだ。部室に御霊を一人置いておけば、きっとこの影響を受けてしまう。今まで通り、部長が守る必要があるのだろう。
「さて、私はここか…。」
それぞれの探索領域に応じて割り振られ、私は彩綺堂の裏側に行く事になった。目の前には、ほんの少しだけ光が注で屈折しているような場所が見える。部長曰く、とにかく進めばなんとかなる、だそうだ。
「…それじゃ、行きますか。」
手持ちの何枚かの霊符を確認して、それから深呼吸を二回程。大丈夫、きっと成功するさ。そう自分に言い聞かせる。
「いってきます。」
左足から、私はその避けた空間の中へと足を踏み入れるのであった。
「まず最初に伝えるが、この現象を単体で引き起こせる程の強力な妖怪は月橋市には居なかった。」
どうやら事は単純ではないらしい。でもまあ、そこまでの妖が居たのならばもっと早期に発見出来ていたはずだ。少しばかり納得し、次の言葉を待つ。
「そしてこれはある程度予測していたのじゃが…。市の中に四つ、空間の切れ目が存在していたのじゃ。」
「空間の切れ目…?」
「恐らく、瞬間的に強力な霊力が流れたが為に起きた現象であろう。中に入り修復すれば、月橋市が元来保持していた浄化・結界機能が発動するじゃろうな。」
「じゃ、次の作戦は空間の修復って事?」
そう聞くと部長は片目を閉じ、嬉々として答える。
「あぁ、そうじゃ。浄化機能さえ発動すれば、この現象も収まるであろう!」
つまり、それが勝ち筋。これは原因も理由も分からなかった病ではなく、ゴールの見えるマラソンとなったのである。
「それでは、作戦会議から始めるのじゃ。」
それから十分程の会議を経て、私達は準備を終えた。四つの切れ目にそれぞれ一人ずつ向かい、御霊は部長に着いて行くようだ。部室に御霊を一人置いておけば、きっとこの影響を受けてしまう。今まで通り、部長が守る必要があるのだろう。
「さて、私はここか…。」
それぞれの探索領域に応じて割り振られ、私は彩綺堂の裏側に行く事になった。目の前には、ほんの少しだけ光が注で屈折しているような場所が見える。部長曰く、とにかく進めばなんとかなる、だそうだ。
「…それじゃ、行きますか。」
手持ちの何枚かの霊符を確認して、それから深呼吸を二回程。大丈夫、きっと成功するさ。そう自分に言い聞かせる。
「いってきます。」
左足から、私はその避けた空間の中へと足を踏み入れるのであった。
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