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プレリュード[3]
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「確かこの辺りの…」
私の担当地域は南東方面。以前御霊と立ち寄った、あの辺りも含まれている。まずは近い所には徒歩で向かう事にした。
「―おや、真白ちゃん…で合ってるかい?」
そこでふと、顔を出した紙屋の店主と目が合う。
「あ、お久しぶりです。」
「なるほど、それでわざわざ此処に。大変だったろうに。」
現在の状況、それと我々の目的を話す。話していて、あやかし研究部というのがどれだけ顔が広いのかという事を痛感した。
「それで、この辺りではどのくらいの被害が出てますか?」
「うちら店側は未だ大丈夫だ。でも、この辺の家々でら結構まずいらしい。そうだな…ここにその機械を置くついでに『彩綺堂』って店に行くといい。」
「情報、ありがとうございます。」
ぺこりとお辞儀をして店を出ようとすると、“あぁ、それともう一つ”と彼女に呼び止められる。
「この街の奴ら、特に爺婆は若者にも新参者にも敬ってもらおうなんて一寸たりとも考えてない。むしろ、あんた程の力なら下手に尊敬するより普段通りの方が好まれる…かもね。」
「…そっか、分かった。」
私は店の外へ出て、すぐ先の場所に一つ目のビーコンを設置する。近づけると、まるでそこが定位置だと分かっているように、きゅっと引き寄せられるように動いてその空中に固定された。
「これ使って帰るんだっけ。」
部長から貰った札をぐっと握りしめると、光に包まれて景色が変わる。感覚としては部室の練習場に入る時に似ているような気がした。
「ただいま~」
着いた部屋には机と椅子、それから白紙の報告書が連なっていた。
「あ、真白じゃないですか。おかえりです。」
その一角、丁度響野先輩が報告書を書いているようだ。既に何人か先駆者が居たのか、横には記入済みの報告書も数枚重ねられていた。
「私は先に置いてくる。終わったらまとめて書いちゃおうかな。」
「そうですか。それでは、気をつけて行くですよ。」
心配する先輩に手を振り返し、私はビーコンをもう一つ抱えてその部屋から出た。
「この辺が件の…」
最後のビーコンを持って、紙屋の店主に言われた辺りへ歩く。と、そこには明治風の洋館が建っていたの大きな看板には「彩綺堂」と書き込まれている。中に入ろうと戸に手を掛けると、触れる間も無く一人でに開いた。まるで私が来るのを知っていたように。
「えと、ごめん下さい…かな?」
内装は外見に違わぬ様子で、様々な染料が展示されていた。少し眺めていると、奥の階段から一人の男性が降りて来る。和洋折衷と言うべき、黒を基調とした少し昔の服装を着ている。
「君があやかし研究部の使者かい?」
「そう、私だよ。」
そう答えると彼はにこりと笑い、手で階段の方を指し示す。
「それでは、予定通り会議を始めようか。どうぞ、こちらへ着いて来てくれたまえ。」
幾許かの緊張と不安を抱えたまま、私はその男へと歩いた。
私の担当地域は南東方面。以前御霊と立ち寄った、あの辺りも含まれている。まずは近い所には徒歩で向かう事にした。
「―おや、真白ちゃん…で合ってるかい?」
そこでふと、顔を出した紙屋の店主と目が合う。
「あ、お久しぶりです。」
「なるほど、それでわざわざ此処に。大変だったろうに。」
現在の状況、それと我々の目的を話す。話していて、あやかし研究部というのがどれだけ顔が広いのかという事を痛感した。
「それで、この辺りではどのくらいの被害が出てますか?」
「うちら店側は未だ大丈夫だ。でも、この辺の家々でら結構まずいらしい。そうだな…ここにその機械を置くついでに『彩綺堂』って店に行くといい。」
「情報、ありがとうございます。」
ぺこりとお辞儀をして店を出ようとすると、“あぁ、それともう一つ”と彼女に呼び止められる。
「この街の奴ら、特に爺婆は若者にも新参者にも敬ってもらおうなんて一寸たりとも考えてない。むしろ、あんた程の力なら下手に尊敬するより普段通りの方が好まれる…かもね。」
「…そっか、分かった。」
私は店の外へ出て、すぐ先の場所に一つ目のビーコンを設置する。近づけると、まるでそこが定位置だと分かっているように、きゅっと引き寄せられるように動いてその空中に固定された。
「これ使って帰るんだっけ。」
部長から貰った札をぐっと握りしめると、光に包まれて景色が変わる。感覚としては部室の練習場に入る時に似ているような気がした。
「ただいま~」
着いた部屋には机と椅子、それから白紙の報告書が連なっていた。
「あ、真白じゃないですか。おかえりです。」
その一角、丁度響野先輩が報告書を書いているようだ。既に何人か先駆者が居たのか、横には記入済みの報告書も数枚重ねられていた。
「私は先に置いてくる。終わったらまとめて書いちゃおうかな。」
「そうですか。それでは、気をつけて行くですよ。」
心配する先輩に手を振り返し、私はビーコンをもう一つ抱えてその部屋から出た。
「この辺が件の…」
最後のビーコンを持って、紙屋の店主に言われた辺りへ歩く。と、そこには明治風の洋館が建っていたの大きな看板には「彩綺堂」と書き込まれている。中に入ろうと戸に手を掛けると、触れる間も無く一人でに開いた。まるで私が来るのを知っていたように。
「えと、ごめん下さい…かな?」
内装は外見に違わぬ様子で、様々な染料が展示されていた。少し眺めていると、奥の階段から一人の男性が降りて来る。和洋折衷と言うべき、黒を基調とした少し昔の服装を着ている。
「君があやかし研究部の使者かい?」
「そう、私だよ。」
そう答えると彼はにこりと笑い、手で階段の方を指し示す。
「それでは、予定通り会議を始めようか。どうぞ、こちらへ着いて来てくれたまえ。」
幾許かの緊張と不安を抱えたまま、私はその男へと歩いた。
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