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狼耳[2]
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「それじゃ、開始!」
開戦の狼煙は上がるも、未だお互い何も反応を起こさない。先ほどまでとは違い、現実程度には遠くに靄が掛かっている。空間跳躍、遠隔攻撃、どれも死角から来られればひとたまりも無い。
「後ろ、もらい!《霊力弾/速》!」
「やっぱり。《霊物質反射結界/拡》。」
後方に円形の結界を展開し、飛んできた幾らかの弾丸を弾き返す。
「けっ…《空間跳躍/大》」
…やっぱり、実戦ではどうしても霊符を使わないと速度が安定しない。上手く使えれば無詠唱の方が早いのだろうが。…脳内で沢山の弾が飛び交うイメージを映し出す。
「《雨式・霊力弾/速》!」
逃げた方向へ弾幕を張る。無詠唱だからか、上手く生成できなかった弾丸が何発か地面に転がっている。
「まあ上出来かな…?《空間跳躍/持》っ!」
急に横に飛び出して来た先輩に驚いて振り返ると、自らの弾が裂けた空間から私目掛けて飛んできていた。
「ど◯でもドア見たいな…いや、なんでもない。《円結界/硬》!」
「全く、釣れない後輩ですね…」
「こっちから行くしかないってことか。えぇと…《霊質生成/御剣》!」右手に出した棒状の例物質を固め、一振りの刀を作り出す。触ると、思ったより硬くて少し驚く。
「こいつで切り刻んでやる…ってね!《空間跳躍/長》!」
足に力を込め、間を削って先輩に一瞬でその刃を届かせる。が、その刀は彼女の爪で止められていた。
「うんうん、とっても良い勢いです。でもまぁ、私が半獣人だという事を知識として知っておくべきかもしれなかったようですが。」
ギリギリ…と暫く重ねてから、かんっ、と払って弾く。
「よければ、幾つかの資料を見繕いますよ?…ふふっ。」
「ぐぬぬぬ…今のはいけると思ったのに…。」
刀をぐっと握り直し、戯言と弱気を外野へ放り捨てる。まだやれる。例えば先輩が相手だとしても、もう少し抗わないと、と荒い血が語りかけてくる。
宙に浮く白世界の破片を蹴りながら、一気に間合いを詰める。両手で切り上げるとそれを爪で止められ、届かない刀身に思いを馳せる。
「《霊力弾/追》!」
自分の背中側に幾つもの尖状の弾丸を配置。複数から同時に打ち出し、その隙を離した剣で横から斬る。
「隙あり!」
「《結界/小》!振りがまだまだ遅いね。《雨式・霊力弾/破》」
対消滅する弾丸に一瞥し、結界から剣を引き抜く。
「随分疲れたようですけど、まだ続けますか?」
体をすり抜ける気遣いは放ったまま、私は霊符を構え直す。
「《身体強化/跳躍》。まだまだ、前半戦すら始まって無いっての。」
「《身体延長/爪》。先輩としての威厳を見せつけないと、ですね。負けませんよ!」
そろそろ第二幕を迎える頃だろうか。刀の鍔を整え、鞘に仕舞う。甲冑も兜も無いが、さながら武士にでもなった気分で私は瞳を開き直した。
開戦の狼煙は上がるも、未だお互い何も反応を起こさない。先ほどまでとは違い、現実程度には遠くに靄が掛かっている。空間跳躍、遠隔攻撃、どれも死角から来られればひとたまりも無い。
「後ろ、もらい!《霊力弾/速》!」
「やっぱり。《霊物質反射結界/拡》。」
後方に円形の結界を展開し、飛んできた幾らかの弾丸を弾き返す。
「けっ…《空間跳躍/大》」
…やっぱり、実戦ではどうしても霊符を使わないと速度が安定しない。上手く使えれば無詠唱の方が早いのだろうが。…脳内で沢山の弾が飛び交うイメージを映し出す。
「《雨式・霊力弾/速》!」
逃げた方向へ弾幕を張る。無詠唱だからか、上手く生成できなかった弾丸が何発か地面に転がっている。
「まあ上出来かな…?《空間跳躍/持》っ!」
急に横に飛び出して来た先輩に驚いて振り返ると、自らの弾が裂けた空間から私目掛けて飛んできていた。
「ど◯でもドア見たいな…いや、なんでもない。《円結界/硬》!」
「全く、釣れない後輩ですね…」
「こっちから行くしかないってことか。えぇと…《霊質生成/御剣》!」右手に出した棒状の例物質を固め、一振りの刀を作り出す。触ると、思ったより硬くて少し驚く。
「こいつで切り刻んでやる…ってね!《空間跳躍/長》!」
足に力を込め、間を削って先輩に一瞬でその刃を届かせる。が、その刀は彼女の爪で止められていた。
「うんうん、とっても良い勢いです。でもまぁ、私が半獣人だという事を知識として知っておくべきかもしれなかったようですが。」
ギリギリ…と暫く重ねてから、かんっ、と払って弾く。
「よければ、幾つかの資料を見繕いますよ?…ふふっ。」
「ぐぬぬぬ…今のはいけると思ったのに…。」
刀をぐっと握り直し、戯言と弱気を外野へ放り捨てる。まだやれる。例えば先輩が相手だとしても、もう少し抗わないと、と荒い血が語りかけてくる。
宙に浮く白世界の破片を蹴りながら、一気に間合いを詰める。両手で切り上げるとそれを爪で止められ、届かない刀身に思いを馳せる。
「《霊力弾/追》!」
自分の背中側に幾つもの尖状の弾丸を配置。複数から同時に打ち出し、その隙を離した剣で横から斬る。
「隙あり!」
「《結界/小》!振りがまだまだ遅いね。《雨式・霊力弾/破》」
対消滅する弾丸に一瞥し、結界から剣を引き抜く。
「随分疲れたようですけど、まだ続けますか?」
体をすり抜ける気遣いは放ったまま、私は霊符を構え直す。
「《身体強化/跳躍》。まだまだ、前半戦すら始まって無いっての。」
「《身体延長/爪》。先輩としての威厳を見せつけないと、ですね。負けませんよ!」
そろそろ第二幕を迎える頃だろうか。刀の鍔を整え、鞘に仕舞う。甲冑も兜も無いが、さながら武士にでもなった気分で私は瞳を開き直した。
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