あやかし研究部

しらたき

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旅路[1]

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「り…り…」
一つの木造机を挟み、部長(のしっぽ)を見つめながら言葉を探る。
「り…り…っ!臨界現象!」
「裏切り。」
「嘘…だろ…」
がっくりと項垂れ、大きくため息を吐く。まさかこのちびがここまで語彙を蓄えているとは。
「小童が。部長の貫禄を舐めるでないぞ。」
「いや、まだ負けるわけには…り、臨界点!」
そこで口元を抑えて、はっとしたようにまた机に伏す。
「ふふふ、我に勝とうなど、1000年早いのじゃ!」
部長は椅子に立ち上がり、ぎりぎり私の上から誇らしげに笑う。
「くっ…」
「真白、部長に戦いを挑むのはやめといた方が良いですよ。少なくとも、頭脳戦では…。」
響野はゆっくりと部長の背後に周り、そして脇を掴む。
「えいっ」
こちょこちょこちょ…と囁きながら部長の脇をくすぐる。と、同時に痛烈な悲鳴とも取れる笑い声が聞こえる。
「あっははははははは!あは、ちょ、やめ…ははは!」
「ふふっ…」
見ていると笑いが堪えきれず、こちらまで笑ってしまう。
「ちょ、笑って…あはははははは!」
こうして愉快な時間は過ぎていった。

「…次から、部長に対してあんな事はしないようにするのじゃ。分かったか?」
踏み台の上に乗り、なんとか威厳を保とうとしながら、我々を注意する。
「…ごめんなさいです。」
「え、私も謝らないといけないの?」
部長はその姿勢のまま、尻尾をぶんぶんと揺らして続ける。
「罰として、真白と響野の二人にはわしが行こうとしていた任務をやってもらうのじゃ。」
そう言って、一枚の紙を渡す。
「ここに行って、上手く解決してから戻ってこい。」
「部長、それはただの仕事の押し付けだと思うです。よく無いですよ。ぶーぶー!ね、真白?」
「え?あ、あぁ。ぶーぶー…」
その後ブーイングも虚しく、切符代と私の為の数枚の霊符だけを持たされ、我々は部室の外へ出る事になった。

「真白ちゃんは、これが初任務ですよね。」
私自身はあまり使わない、月橋市駅の5番ホームで待ちながら、響野先輩と話す。
「初任務…緊張するなぁ」
私は、先程渡された札をひらひらと見せる。
「でも一応、ざっくりとどんな部かは昨日説明を受けたんだけどさ。」
部長の声を回想していると、警戒音と共に列車がやってくる。昼頃だからか、空いている車内へ乗り込んで、端の方の席に2人で座る。
「…普段、混み混みの電車ばかり乗っているからか、違和感が凄い…。」
「私は…部室まで徒歩で行けるですから、乗り物に乗るのは少しわくわくするです。」
ちょっとした話を少し。それからさりげなく本を取り出して、数十分程読み続ける。時折隣から僅かな笑みが漏れ、それもまた旅の収穫の一つとなってゆく。
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