Between the Life and the Death

一目惚れ

僕の天使

スズコさんの家には自転車が２台と
原付が１台あった。

僕たちは自転車に乗り、
出掛けた。

「ここはさ、どこにも人がいないの。

でも店は開いてるから困らない。
ちなみにお金払う相手もいないから
それも困らないんよ。

あたし、泥棒しまくってる(笑)」

自転車で走りながら
スズコさんが言った。

この世界は本当に誰もいないんだ。

確かにこの状況で
一週間も過ごしたスズコさんは
地獄に来た気分だったろう。

僕はスズコさんが居てくれたから
天国だと思えたんだ。

まだここに来て２日目だが、
僕にとってスズコさんは天使だ。

可愛い笑顔

泣いた顔

僕に甘えてくれるところ

僕もスズコさんに甘えているだろう

スズコさんは心が温かい

スズコさんの良いところを
あげ始めたらキリがない。


２日目にして
僕はスズコさんに
ほぼ一目惚れしてしまっていることに
気付いた。

スズコさんは
僕をどう思っているのだろう。

本当は80歳のスズコさん。

孫か、ひ孫か、それくらいにしか
思われていない可能性もある。 

呼び方なんて『凛ちゃん』だしな。




「ここだよ凛ちゃん。」

田舎道を10分程で店に着いた。

小さな、雑多にいろいろな服が置いてある店だった。
予想はしていたが、
若者向けでは決してなかった。