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幼馴染が女装している
しおりを挟む文化祭の時期がやってきた。
あの夏の添い寝事件から約3ヶ月。特に何もなかった。告白でもすれば何か変わっただろうか。否。変わるとすればたぶん距離を置かれるくらいだろう。
「文化祭、クラスでの出し物を決めていきたいと思いま~す。定番のものをまとめてきたので参考にどうぞ。」
クラス委員長の女子が教室を見渡している。なかなか決まらないことを予見し事前に調べたよくある文化祭の出し物を書き出していく姿は流石としか言いようがない。
「ハイハ~イ喫茶店やりたいで~す!」
鹿山さんが勢いよく手を上げた。
「あ、俺ゲテモノ系の企画がいい!!」
「いや敢えてゲテモノ選ぶな(笑)」
それは茨の道だぞ新藤…。早松、発言としてはナイスだが意外とお前もノリノリだろ…。
「ゲテモノ~?まぁインパクトはあるよね。あ、誰か男子女装すれば~(笑)」
縞野さん、そこでノリの良さ発揮しなくていいからな…?
「やるわけ…
「俺はやるぅ!」
「ギャハハ真嶋っ…おまっマジ?(笑)」
「てか言い出しっぺがやるわけとか(笑)」
「お前強制な?」
早松、ニヤけながら言わないでやってくれ。
「うっわマジか~」
あれ、暁斗こういうとき積極的に意見出すと思ってたんだけど…と暁斗の方を見ると、寝てる。…うん。遠いから起こしにも行けないしな。ここで女装が決まっても尊い犠牲か。
最終的に男子全員やれって話になった。何ならメイド(笑)&執事(?)喫茶になった。一応俺は執事もやることになったが好奇心が邪魔してメイドを断れなかったのもある。後悔は正直していない!!
「えっ女装!?…まぁ、いいけど…お化け屋敷とかさぁ…脅かす役とかやりたかった~。まぁどちらにしろ楽しむけど!!もし時間合えば一緒に回ろうな!」
というのが暁斗の後日談。
つか、ホラー映画であんな怖がってたのにお化け屋敷は大丈夫なのか。
衣装合わせをしたところ。
まぁ、結論。骨格が…な。まぁ委員長の助言で露出少なめと露出多めの2種類を両方買ったため、俺みたいに案外目立たないやつもいる。運動部の奴らは筋肉でゴツイから激しく似合わず、ネタ担当で露出多めだ。
「お~…。見苦しい程ではないけど…男。骨格が。顔だけ見るとまぁ…美人…いや…でも男…。」
暁斗、こういうのはゲテモノか美女のどちらかがオイシイんだが…。
「そっちはまぁ…う~ん…似合って…るな…」
「どういう反応だよ」
いや、本当に似合ってるんだぞ?
クラシカルメイド服のちょっと堅くて綺麗な感じに茶色でゆるくパーマがかかっているウィッグの柔らかい印象をあえて合わせる異色のコラボレーション?
というより…違和感がない。
やや中性的な顔立ちとはいえ普段は女っぽいなんて思わない。
しかしこの、女と言われて『こういう人もいるのかも…』みたいな違和感のなさはなんだろう…。何なら美人。
女子のメイクの腕前もあり、なかなかに詐欺ってる。
まぁ、ちょっと顔面の圧強めだけど。元の顔はもうちょい優しくはないだろうか。
でも可愛い。
とか思っていたら新藤が馬鹿なことを言い出した。
「うわ…目が錯覚する…。ちょっと目覚ましたいからパンツ見せて。」
「はぁ~?お前…馬鹿?普通に考えろよ見せるか!」
気持ちはわかるがシンプルにイラッとしたのだ。許せ新藤。
「きゃ~痴漢がいる~」
棒読みだがまぁ早松あたりノッてくるだろう。
「うわ…無いわ…」
「オマエ!ガチなドン引きはヤメロ傷つくっ!」
「お前がやったんだろ!」
予想通り早松はノり、そしてドラマに出てきそうな警部の真似を始めた。
「唐突な取り調べwww」
「何笑ってんだ!」
エアーでバァンと激しく机を叩くが、真剣な口調とは裏腹に言い終わってニヤけている。
「俺はやってませ~んwww」
「…信じていいんだな?w」
「ウッソでぇ~すwww」
「てめぇ!ふざけんのも大概にしろォ!w」
とか言って詰め寄って壁ドンすると、新藤は一気に真っ赤になった。
「え、あ、ちょ、近ッ…。」
それを見た早松はじわじわと恥ずかしくなったらしく、耳を赤くしながら下を向いた。
「あ、え…いや、えっと、ごめん…。」
「文化祭で出す新刊、今決まったわ。」
「売り子は任せろ。」
背後にいた女子達がそう呟くのを聞いてしまい、何となく俺は申し訳ない気がした。
文化祭当日。
売り子をする時間が合わず、一緒に回る計画は白紙になった。
俺の担当の時間は終わり、暁斗が着替えを終えた…が。
「なんで衣装合わせのときよりパワーアップしてんの?」
「二宮が…あのときは不完全燃焼だったとか言い出して…。」
パッとこちらを認識した瞬間に、暁斗が目を合わせてくれなくなったどころか、全力で真下の方向に顔を合わせた。辛い。
「暁斗くんは超絶ポテンシャル高いの!!そこ活かさなくて何がメイク担当か!!?(まぁ正直ずっと前からやってみたかったんだけど)」
委員長…。それ私欲もあるだろ。顔に思いっきり書いてあるぞ。
「…だそうです。」
ちょっと美人過ぎて人前出せん。
「…………ナンパされんなよ?」
「うっせぇ!お前までそんなこと言ってくんの?!」
とか言ってまた視線を反らすので俺もう泣きそう。
「もう顔見てこいよ。手っ取り早いだろ。」
「あ、これ私ので良ければ。」
メイク担当、委員長が手鏡を差し出す。
「おぅ、ありがt…」
言葉に詰まった暁斗に俺は同意を求めた。
「…な?」
「いや誰だよ。俺だけど。…いやぁ…正直ここまでとは…。二宮、もうこれで食ってけるよ。」
「ありがとう。暁斗くんの顔面のおかげもあってこそではあるけど、そこから生じてくる問題として正直ここまで薄くしつつ綺麗なとこの強調、みたいな経験がなくて、だからこそ前回はあんなクソ派手メイクに見えてたんだけど、まぁつまりここまでの顔面になるとは考えてなかったものだからもう自分でも過去一の出来だと思うしもっと崇め奉ってもくれてもいいのだけれども。」
とりあえず文字量すげぇ。えっと…委員長ってメイクヲタなのか…?
(正解:男女問わず顔面がいい人が超好き。顔が良くなくても最終的に綺麗になってれば好き。)
「よっプロフェッショナル!!世界一!!」
「天才アーティスト!もはや神!讃えるための語彙力死す!!」
「止しなさい照れるでしょうが。」
あぁ、でもここを離れられないな。確実に暁斗がナンパされる。
一緒に回る約束してた孝代と巧には悪いが…意地でも残る。(いやまぁあいつらはあいつらで楽しむよな。まぁ大丈夫か。)
人も増え、ちょうど人手が足りないみたいだ。執事の方の格好はまだ脱いでいなかったので、暁斗に近づく野郎共対策も兼ねて給仕の方で仕事を貰うことにした。
余裕が出てきた頃、やっと俺は暁斗に聞けた。
「なんでさっきからこっち見ないの?」
「えっ……えっと…それは……」
暁斗が言葉に詰まっているとき、タイミング悪くマスクに帽子の怪しげな客が暁斗を呼んだ。
「メイドさん、美人だねぇ。本当に男?」
「…えぇ、そうですよ。今日は皆様にそう言われます。」
…こいつ何触ってんだよ。普通知らんやつの腰触るか?と、うっかり苛立ちをぶつけてしまった。接客なのにマズいとは思うがまぁ高校生だからな!とか、逃げかなぁ。
「お客様、当店のメイドはお触り厳禁、いやお触り現金支払い毎月五百万、分割払いで一生分でございます☆」
「おまっ…日下部、顔、マジ過ぎて怖ぇよ…」
中学の同級生だった。すまん。
暁斗(忍がカッチリした格好してる…目を合わせられない!無理!なんかもう無理!)
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