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幼馴染が添い寝を強要してくる

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「…………てことで…今日…一人で寝られないんだけど…。」

 腕の中でもごもご喋る暁斗である。

「……氷空は?」
「…………友達んとこ泊まりに行った…。」
「…………なるほど。」

 え、…まじ???そんな…エロ漫画みたいに都合良く???












 氷空ぃいいいい!!!なぜなんだぁ!!!なぜこのタイミング……!!!そういや駆もそんなこと言ってたわ!!うわぁあああああああ!!!


「おとなりどーぞ…。」
「…おう。」

 なんかちょっと畏まってるっぽくて可愛い。ちくしょう。



 …………静かだ…。

「あの…」
「ん?」
「…なんか、話そ?」
「なんでこそこそ話みたいなの。ふっ、」

 二人で、何も隠すこともないのに囁くように話す暁斗が可愛くて笑ってしまう。

「だってなんか…声大きくしたらなんか怖いの出そう…」

 ……………。可愛いな。

「………………はいはい。何話すの?」

 囁くように俺も言った。

「何が良い?」
「…なんでも?」
「…お母さんが晩ご飯のメニュー聞く時の一番困るやつ。」
「うん。」

 二人で顔を合わせて笑う。そしてまた少し静かになった。

「…………さっきの…」
「な~に。暁斗。」
「さっきの…して?」
「………えっと…さっきの。」
「さっきの!!……………ぎゅって。」

 少しだけ唇を尖らせて彼は言った。

 可愛いな。可愛い。
「可愛いな。」

 思わずにやけながら、抱き締めた。

「かわっ……!?可愛いって…!」

 えっ、待て待て待て声に出てた!?え、まじで!?ちょっ………え!これ大丈夫なやつ!?いやそんな訳がござらん!!!

 慌てて離れて、おずおずと目を見る。

「…ご、ごめん?」
「か、わいくはない、から。」
「お、う…………。」

 いや可愛いって。

 少し声が硬くなって、念を押すように上目遣いで見てくる。

 いや可愛いって!!!


 はぁ、これ俺も暁斗とは別の意味で寝られんぞ。気を抜いたら勃起する。

「は、早く…しろよ…。」
「……………勘弁しろよ…。」

 俺が一瞬真顔になってたからか、暁斗が少し焦る。

「えっ…!」
「え、いやごめんこっちの話。嫌とか、そういう訳じゃないから。」

 改めて、おもむろに暁斗を抱き締めた。横になりながらだから、右腕だけ暁斗の頭の下敷きになる。
 触れている所が温かくて、何なら少し熱い。8月下旬とはいえ夜は少し冷えるのに。じわじわ、熱くなる。今日って熱帯夜なのか?、なんて。布団の中が少しだけ、湿度を増す。

 急に何してんだろって我に帰って、少し気恥ずかしくなって。重力でひっついた薄い布団を左腕で上げると、少し足が出てしまう。布団から出た俺の足を暁斗の足が追いかけてきて、すりすりと足の甲同士で擦り付けられる。
 赤くなった顔で暁斗の方を見ると、きょとんとした顔をしてこちらを見た。

 あ~もう…何なのこいつ…、無自覚に煽ることしてきやがる。わざとじゃねぇのって疑うくらい的確にツボついてくる………。結局勃ったし…。

 バレないように少し体を離すと、暁斗はくっついてきた。

「おまっ…」
「えっ…何???」

 バレてないみたいだ…。

 暁斗は顔を赤くしてはにかむように笑い、俯いた。

「………えっと…あったかいね…?」
「なっ、………おう…。」

 あぁ…………拷問のような地獄のような、…徹夜の始まりだ。











皆さ~ん!久しぶりの暁斗視点ですよ~!(by作者)

暁斗▷

 無理無理無理。観たこと自体には後悔ないけどいかんせん怖すぎた。巧のやつ…。いつもおっとりキャラ(?)だから、寝れなくなる程怖いやつ薦めてくるとは思ってなかった…。



 まぁ…自分で誘っといて何だけど、さすがにこの歳で一緒に寝るって変かな。でも一人でいるの怖い…し、徹夜してでも何かする気分にはなれない。

 けどやっぱちょっと緊張しなくもなくもなくもない…。あれ、どっちになったかな?………いやまぁ……緊張してます…です、…うん。

 えっと…なんか……間が持たない。ちょっとテンパって話してるかも。こそこそ話みたいに言ってたら、微笑まれた…。その上こそこそ話みたいに返してくるし…!!ちょっと可愛いし超格好良いし!!けどなんかあっちばっか大人みたいでちょっとモヤモヤする!!

 …………隣で寝てるだけって、こんな感じだっけ。…………もっと心強いような気がしてた。あ、でもさっき、怖くなくなってたよな…。

「…………さっきの…」
「な~に。暁斗。」
「さっきの…して?」
「………えっと…さっきの。」

 少し困惑した声色で繰り返す忍がもどかしくなってくる。

「さっきの!!……………ぎゅって。」

 言うのって、ちょっと恥ずかしいな。ハグってそのまま言うのも恥ずかしいからぎゅーにしたけど、なんかそっちの方がちびっ子みたいで恥ずかしいかも…。なんか、かっこいい言い方ないのかな…。大人ってどう言ってんだろう。

「可愛いな。」

 …、え。

 漏れ出るような、どちらかというと、ひとり言みたいな。

 一瞬、頭が真っ白になる。

 かわいい…?かわ…え、俺…??!えっ、いや、違くて、いや、でも俺しかいないし、待って、いや、…は!?
 …………ていうかめちゃくちゃ良い声で言うな。その声で『可愛いな』とか言われたら、たぶん女の子イチコロだろ。あぁ、自分で想像してちょっと落ち込むけど…。
 でも、何でこのタイミングで俺に言ったよ!?
 あ~!!近いし!!!これ俺、心臓の音とか、本当に聞こえてない?抱き締めるの今?!

「かわっ……!?可愛いって…!」

 なんか、謝られて。結局、ぐだぐだに、有耶無耶になって。一旦離れたから、ちょっと、ペースを取り戻す。けどやっぱ、何話せばいいのかはわからない、し。

「は、早く…しろよ…。」
「……………勘弁しろよ…。」

 忍が一瞬真顔になってたから、少し焦る。してもらえないのかな。嫌かな。

「えっ…!」
「え、いやごめんこっちの話。嫌とか、そういう訳じゃないから。」

 なんだ。良かった。

 …近い。さっきは全くと言っていいほど気にならなかったのに、少し回復して恥ずかしくなってくる。熱い。夏でも夜は涼しいのに、頭も、腕も、そこから広がるみたいに熱をもつ。

 忍が布団を上げたので足がはみ出る。何だか居心地が悪いような気がして、机に肘をつくみたいな自然な感覚で、足を擦り付ける。ちょっと気持ち良い。……忍、ちょっとだけ…顔、赤いかも。やっぱ暑いかな。ごめんね。
 とは思ったけど、離れたのが寂しくて、意地でもくっつきたくて。

「おまっ…」

 !?

「えっ…何???」

 危ない、なんとか誤魔化せたか。え、待って忍勃起してる!?何故??!Why??What???

 なんとか平静を取り戻しつつ、思った。
 え、これってなんかえっちなイタズラとかしたら進展するかな?

 ……まぁ、当然ながらそんな勇気とかなくて、そのまま寝た振りして寝られなかった。
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