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第一章:壊れ始める運命の歯車
第三話:救いの手~過去③
しおりを挟む咲空とは直接顔を合わせて会話できるくらいにはなった頃、再びお母様のお墓に私は行きました。
あの日と同じように全く変わっていないお墓が見えてきました。私は何気なくただ自然と、
「お母様、あなたはどうして私を産んだのですか?」
小さく独り言のように、問いかけても答えてはくれない疑問を投げかけました。その時私は自分がどんな表情をしていたのかさえ、微かに含んでいた悲しみに満ちた静かな声さえ気付いていませんでした。無意識だったのでしょう。勿論返事は返っては来ません。
私は酷く静かな静粛に包まれたお墓でお父様からお母様について聞かされた内容は、私を産んだ一週間後に亡くなったと聞かされただけでお母様がどんな人物だったのかさえ知らなかったことを改めて感じました。けれども感じても何も思いませんでした。
私はそんな自身がまるで他人のような気がして、怖くなりました。
私は気持ち悪くなっていき意味もなく泣き叫びました。そんな奇行を奇声をあげる日々は何日も続きました。そして、そんな日々を過ごしていく内に、何が悲しいのか、苦しいのか、一体自身が何をしたいのか、何に悲しみ苦しんでいるのかさえ、分からずになっていきそんな分からなくなってきている自分自身も怖くなり、もう赤子のようにただ泣き叫ぶしかありませんでした。
そしてそんな日々を、私に感情をもう一度教えて救って下さったあの方にお会いした日は一度たりとも、忘れる事はありませんでした。
あの方と出会う事になる運命の日、私は朝から吐きけに襲われず二日ぶりにきちんとご飯を食べることが出来ました。不思議と毎日魘される夢を見ませんでした。そこで私はいつもより軽くなった体を動かして、久しぶりに外に出てまたお母様のお墓に行きました。私自身、もう終わらせたかったのでしょう。
みんなにこれ以上迷惑を掛けたくなかったのもあります。ですが何よりお母様のお墓に近寄らない生活に戻ったら、私の心の中にある疑問を抱えていると私でないような気がしたからです。
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