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稽古停止、解除 4

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 サキが入門した初日、他の道場生たちの様子も違っていた。最初にサキがやってきた時からその容姿が注目されていたが、この日から一緒に稽古すると知らされ、驚いたのだ。道場生の大半はサキが空手をたしなんでおり、その腕前も並の男性では勝てないほどの実力であり、ましてや入門動機が颯玄を追いかけてきた、などは想像もしていない。

 もっとも、外間の他、わずかの高弟はサキのことや入門の可能性は知っていた。この日は外間がいたので、ざわついている道場生に落ち着くように言い、みんなに紹介した。

「今日から一緒に稽古することになったサキさんだ。ここでは初めての女性の道場生になる。みんな、仲良くやってくれ。ただ一つだけ注意しておく。サキさんは掛け試しで知られた空手家だ。いろいろ話が出てくると思うが、変な気は起こすなよ」

 外間は少し笑みを浮かべながら言った。

 その時、道場生の一人、城間が言った。

「サキって、あのサキか? 自分よりも強い男と戦って負かした相手と結婚すると言って連勝していたあの・・・」

 城間の話にみんなの顔色が一斉に変わった。組手稽古であってももし自分が勝てば、といった淡い期待が生まれたのだ。

 その様子を感じ取った外間がさらに続けて言った。

「みんな、何を考えたかは何となく分かったが、今回サキさんが入門したのは先日の掛け試しで颯玄が勝ったからだ」

「えっ、颯玄は1ヶ月間の稽古停止だったはずだ。それが掛け試しをやっていたのか。先生の言い付けを守らなかったということは問題ないのか」

 他の道場生から疑問の声が出た。心の内の何割かは嫉妬心のようなものも混じっていたわけだが、外間はそういう反発を抑えるために言った。

「颯玄がやった掛け試しは道場外でのことなので稽古禁止の指示違反に当たらないし、先生が昔、掛け試しの久米、と呼ばれていたことは知っているだろう。それを慕ってここで稽古している者も多いはずだ。掛け試しは喧嘩ではない。そこには決まりがあり、文字通り腕前を試す場ということは知っていると思う。掛け試しをやったことについて先生は何もおっしゃらなかったし、これから組手稽古も解禁された。空手を喧嘩に使ったりすることは強く戒められているが、自分の強さを確認したければ組手や掛け試しで戦うことも良いだろう。そういうところも含め、必要であればサキさんに教わると良い」

 ざわついていたみんなの様子は、この外間の話で落ち着いた。

 そうなると今度はサキの周りにみんな集まり、稽古に復帰した颯玄のところには誰も来なかった。

 その様子に少し寂しい思いをした颯玄ではあったが、またここで稽古ができることの喜びの方が大きかった。しばらく道場の雰囲気から遠ざかっていた颯玄は、他の道場生のことを放っておき、自分の稽古ということでいつものように基本を始めた。

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