32 / 104
稽古停止、しかし・・・ 12
しおりを挟む
「お前、強いな。俺は続けて勝っていたので、少し天狗になっていたのかもしれない。今日は勉強になった。ありがとう」
湖城はそういって颯玄に頭を下げた。その様子に周りの人たちは湖城にも拍手を送った。
ただ、こうなると今度は颯玄が注目される。初戦でこれまで連勝していた湖城を倒したというのはすぐに噂になるだろう。戦いの前に颯玄と話していた上原には近くにいた人たちから、あいつは何者だ、という質問が続いていた。
上原が名前を教えると、その中の数人から声がかかった。
「今度は俺がお前に挑戦する」
「今のはまぐれじゃないのか? 俺が本当の実力を確かめてやる」
そんな感じで普通に挑戦しようとしたり、強さの確認をしようといった具合に様々だった。冷やかしもあるだろうから、実際に拳を交えるかどうかは分からない。
だが、颯玄は明言した。
「分かった。でも、俺は今戦ったばかりだから、3日後にまたここに来た時、改めて言ってくれ」
颯玄はそう言うと、上原と一緒にその場を立ち去ろうとした。その時、湖城が声をかけてきた。
「勝った時、今のようなことはよく言われる。俺も最初に勝った時はそうだった。でもそのつもりで次にここに来た時、そう言っていた奴はいない。勢いだけで言っているので、あまり本気にしないほうが良い。本当に戦うべき相手を探すのも大切だよ。そういう意味では俺は好敵手を見つけた。俺はもっと稽古するよ。そして自分の実力が上がったと思った時、改めて戦ってくれないか?」
颯玄にとっては掛け試しの初戦で、しかもその時連戦連勝していた相手にここまで言われ、断る理由は無いし、何よりも恐縮していた。同時に自分が負けた時、こういった感じでいられたらということを学び、逆に感謝する颯玄だった。
湖城はそういって颯玄に頭を下げた。その様子に周りの人たちは湖城にも拍手を送った。
ただ、こうなると今度は颯玄が注目される。初戦でこれまで連勝していた湖城を倒したというのはすぐに噂になるだろう。戦いの前に颯玄と話していた上原には近くにいた人たちから、あいつは何者だ、という質問が続いていた。
上原が名前を教えると、その中の数人から声がかかった。
「今度は俺がお前に挑戦する」
「今のはまぐれじゃないのか? 俺が本当の実力を確かめてやる」
そんな感じで普通に挑戦しようとしたり、強さの確認をしようといった具合に様々だった。冷やかしもあるだろうから、実際に拳を交えるかどうかは分からない。
だが、颯玄は明言した。
「分かった。でも、俺は今戦ったばかりだから、3日後にまたここに来た時、改めて言ってくれ」
颯玄はそう言うと、上原と一緒にその場を立ち去ろうとした。その時、湖城が声をかけてきた。
「勝った時、今のようなことはよく言われる。俺も最初に勝った時はそうだった。でもそのつもりで次にここに来た時、そう言っていた奴はいない。勢いだけで言っているので、あまり本気にしないほうが良い。本当に戦うべき相手を探すのも大切だよ。そういう意味では俺は好敵手を見つけた。俺はもっと稽古するよ。そして自分の実力が上がったと思った時、改めて戦ってくれないか?」
颯玄にとっては掛け試しの初戦で、しかもその時連戦連勝していた相手にここまで言われ、断る理由は無いし、何よりも恐縮していた。同時に自分が負けた時、こういった感じでいられたらということを学び、逆に感謝する颯玄だった。
10
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
彼が愛した王女はもういない
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。
どちらも叶わない恋をした――はずだった。
※関連作がありますが、これのみで読めます。
※全11話です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
良いものは全部ヒトのもの
猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。
ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。
翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。
一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。
『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』
憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。
自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
婚約破棄を訴える夫候補が国賊だと知っているのは私だけ~不義の妹も一緒におさらば~
岡暁舟
恋愛
「シャルロッテ、君とは婚約破棄だ!」
公爵令嬢のシャルロッテは夫候補の公爵:ゲーベンから婚約破棄を突きつけられた。その背後にはまさかの妹:エミリーもいて・・・でも大丈夫。シャルロッテは冷静だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる