18 / 104
颯玄、熱情 1
しおりを挟む
颯玄は17歳になった。祖父の下で再修行に入り、6年が経っていた。
再入門以来、稽古のことには何も言わず黙々と修行に励んでおり、技を教わりつつその裏の部分についてもいろいろ学んでいた。最初の頃はそういうことにあまり興味が無かったというのが本音だが、経験を積み、年齢が上がってくると生来の向上心が作用したのか、そういう稽古が楽しくなっていた。
久米家の歴史、空手・武術の歴史、武道哲学、身体の仕組み、活法術など、普通の稽古では学べないような分野まで教わった。まだこの頃の颯玄には理解しがたい内容もあったが、可能な限り祖父から吸収した。
まだまだ知識面でも学び足りないところがあることを感じていたが、表芸である武技の修行も怠ることはない。そもそもそちらの方の関心が高かったからだが、祖父のところから帰った後でも自宅のそばで一人で稽古していた。
祖父のところでの稽古も、年齢に応じて変化しており、小さなころは祖父と2人だけで稽古することが多かったが、15歳の頃になると、祖父が他の時間帯で教えている年上の人たちとの稽古も行なわれていた。年齢的には近いものの全員年上で、やはり長年祖父から教わっているだけに、組稽古をしていても技の力や速さに圧倒されることもある。
稽古自体はみんな一緒に同じことをするのではなく、それぞれが稽古しているところに祖父がやってきて必要なことを個別に教える、というカタチで行なわれ、その中で組稽古という場合もある、といった感じだ。大人の人が稽古している中には、颯玄がまだ教わっていない形や技を見ることがあるが、祖父の許可が無ければ教われない。何を基準にそうなっているのか、颯玄には分からなかったが、17歳になった今は何となく分かるような気がしていた。
そんなある日、颯玄は本当の自分の実力は、ということを考えていた。
隣ではいつもの約束組手では押され気味の真栄田が形の稽古をしている。いつも通りの迫力ある技であることを感じていたが、ふと、もし今、本気で戦ったら勝負はどうなるだろう、という気持ちが湧いてきた。これまでは祖父の目もあり、約束組手までしかやらせてもらっていない。
颯玄なりにある程度稽古を重ねたつもりでいたので、腕試しをしたいという気持ちが出てきたのだ。その意識は少し前からあったが、一線を超えられないでいた。
しかし、この日は真栄田の技がすごいと感じたからこそ、自分の実力がどこまで通じるかということを試したいという思いが急速に高まった。
幸い今、祖父はいない。もしいたら行動は起こさなかっただろうが、恐る恐る真栄田に自由組手を申し込んだ。
再入門以来、稽古のことには何も言わず黙々と修行に励んでおり、技を教わりつつその裏の部分についてもいろいろ学んでいた。最初の頃はそういうことにあまり興味が無かったというのが本音だが、経験を積み、年齢が上がってくると生来の向上心が作用したのか、そういう稽古が楽しくなっていた。
久米家の歴史、空手・武術の歴史、武道哲学、身体の仕組み、活法術など、普通の稽古では学べないような分野まで教わった。まだこの頃の颯玄には理解しがたい内容もあったが、可能な限り祖父から吸収した。
まだまだ知識面でも学び足りないところがあることを感じていたが、表芸である武技の修行も怠ることはない。そもそもそちらの方の関心が高かったからだが、祖父のところから帰った後でも自宅のそばで一人で稽古していた。
祖父のところでの稽古も、年齢に応じて変化しており、小さなころは祖父と2人だけで稽古することが多かったが、15歳の頃になると、祖父が他の時間帯で教えている年上の人たちとの稽古も行なわれていた。年齢的には近いものの全員年上で、やはり長年祖父から教わっているだけに、組稽古をしていても技の力や速さに圧倒されることもある。
稽古自体はみんな一緒に同じことをするのではなく、それぞれが稽古しているところに祖父がやってきて必要なことを個別に教える、というカタチで行なわれ、その中で組稽古という場合もある、といった感じだ。大人の人が稽古している中には、颯玄がまだ教わっていない形や技を見ることがあるが、祖父の許可が無ければ教われない。何を基準にそうなっているのか、颯玄には分からなかったが、17歳になった今は何となく分かるような気がしていた。
そんなある日、颯玄は本当の自分の実力は、ということを考えていた。
隣ではいつもの約束組手では押され気味の真栄田が形の稽古をしている。いつも通りの迫力ある技であることを感じていたが、ふと、もし今、本気で戦ったら勝負はどうなるだろう、という気持ちが湧いてきた。これまでは祖父の目もあり、約束組手までしかやらせてもらっていない。
颯玄なりにある程度稽古を重ねたつもりでいたので、腕試しをしたいという気持ちが出てきたのだ。その意識は少し前からあったが、一線を超えられないでいた。
しかし、この日は真栄田の技がすごいと感じたからこそ、自分の実力がどこまで通じるかということを試したいという思いが急速に高まった。
幸い今、祖父はいない。もしいたら行動は起こさなかっただろうが、恐る恐る真栄田に自由組手を申し込んだ。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
彼が愛した王女はもういない
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。
どちらも叶わない恋をした――はずだった。
※関連作がありますが、これのみで読めます。
※全11話です。
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
良いものは全部ヒトのもの
猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。
ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。
翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。
一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。
『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』
憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。
自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
婚約破棄を訴える夫候補が国賊だと知っているのは私だけ~不義の妹も一緒におさらば~
岡暁舟
恋愛
「シャルロッテ、君とは婚約破棄だ!」
公爵令嬢のシャルロッテは夫候補の公爵:ゲーベンから婚約破棄を突きつけられた。その背後にはまさかの妹:エミリーもいて・・・でも大丈夫。シャルロッテは冷静だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる