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稽古再開 2
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しかし、祖父に言われた巻き藁相手の背刀打ちはさすがにできなかった。
そこで実際に当てずに行なえる基本の空突き、空蹴り、受けといった基本稽古を教わった範囲内で繰り返した。
基本の突きや受けの場合、内八字立ちで行なうように何度も言われている。両脚の締めが大切ということも聞いている。これで良いのかと思いつつ、自分としては言われた通りにやっているつもりで数をこなしている。もちろん、祖父から言われている通り、気合を入れながらだ。
だから庭でやっているとはいえ、家の中にいる祖父にもその様子は伝わっていた。颯玄にとっては一人で黙々とやっているのでどうでも良いことだったが、祖父はその様子をじっと聞いていた。
基本稽古は数をこなし、それによって合理的な身体操作を身体に染み込ませようとするものだが、予め要点を押さえておかなければ、逆に悪い癖が付いてしまう可能性がある。だからこそ、最初にきちんと説明を聞き、それに従って行なわなければならないが、まだ颯玄の年齢でそういった自己管理ができるわけはない。だから回数が増え、疲労も溜まってくると、どんどん技の乱れが見えてくる。颯玄にとっては数をこなすだけが目的になっており、その質は低くなっている。
それが蹴りになると、疲労度は倍増する。単に足を振り上げるだけならともかく、空手の技としての蹴りの場合、基本に則った身体の制御が要求される。そこが単に身体を動かすだけと違って疲れる理由になるのだが、空手の稽古として行なうのであればその理に従って行なうしかない。
颯玄はまだ子供といっても空手に対する意識は強く持っており、ましてや今は一度挫折した後に再開した身だ。もう二度と無作法な真似はしたくない。子供心であってもそう誓っていた颯玄に、手を抜くという選択肢はなかった。
ただ、さすがに背刀の打ち込みで手を傷付けた時はそのまま続けられず、他の稽古に切り替えたが、稽古そのものを止めたわけではない。
だが、さすがに休憩を挟まなければどうしようもできない段階というのがある。
その時は庭に仰向けになり、呼吸を整えた。
まだ空は明るい。稽古を始めて2時間近く経っているが、始めた時間が早かったので青空が目に眩しい。
少しずつ呼吸が整ってくると、祖父が何も答えてくれなかった理由を考えるようになった。
「まだ本当に許してくれていないのかな。俺が音を上げるのを待っているのかな。背刀打ちの稽古についても何も言ってくれなかったし・・・」
そういうことを考えながら、呼吸が整った後もしばらく空を見ていた。
その時、颯玄の視界に祖父の顔が入ってきた。
そこで実際に当てずに行なえる基本の空突き、空蹴り、受けといった基本稽古を教わった範囲内で繰り返した。
基本の突きや受けの場合、内八字立ちで行なうように何度も言われている。両脚の締めが大切ということも聞いている。これで良いのかと思いつつ、自分としては言われた通りにやっているつもりで数をこなしている。もちろん、祖父から言われている通り、気合を入れながらだ。
だから庭でやっているとはいえ、家の中にいる祖父にもその様子は伝わっていた。颯玄にとっては一人で黙々とやっているのでどうでも良いことだったが、祖父はその様子をじっと聞いていた。
基本稽古は数をこなし、それによって合理的な身体操作を身体に染み込ませようとするものだが、予め要点を押さえておかなければ、逆に悪い癖が付いてしまう可能性がある。だからこそ、最初にきちんと説明を聞き、それに従って行なわなければならないが、まだ颯玄の年齢でそういった自己管理ができるわけはない。だから回数が増え、疲労も溜まってくると、どんどん技の乱れが見えてくる。颯玄にとっては数をこなすだけが目的になっており、その質は低くなっている。
それが蹴りになると、疲労度は倍増する。単に足を振り上げるだけならともかく、空手の技としての蹴りの場合、基本に則った身体の制御が要求される。そこが単に身体を動かすだけと違って疲れる理由になるのだが、空手の稽古として行なうのであればその理に従って行なうしかない。
颯玄はまだ子供といっても空手に対する意識は強く持っており、ましてや今は一度挫折した後に再開した身だ。もう二度と無作法な真似はしたくない。子供心であってもそう誓っていた颯玄に、手を抜くという選択肢はなかった。
ただ、さすがに背刀の打ち込みで手を傷付けた時はそのまま続けられず、他の稽古に切り替えたが、稽古そのものを止めたわけではない。
だが、さすがに休憩を挟まなければどうしようもできない段階というのがある。
その時は庭に仰向けになり、呼吸を整えた。
まだ空は明るい。稽古を始めて2時間近く経っているが、始めた時間が早かったので青空が目に眩しい。
少しずつ呼吸が整ってくると、祖父が何も答えてくれなかった理由を考えるようになった。
「まだ本当に許してくれていないのかな。俺が音を上げるのを待っているのかな。背刀打ちの稽古についても何も言ってくれなかったし・・・」
そういうことを考えながら、呼吸が整った後もしばらく空を見ていた。
その時、颯玄の視界に祖父の顔が入ってきた。
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