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内弟子物語 第Ⅳ話 怪我2
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次の日、内弟子稽古が終了した時、藤堂は全員に言った。
「そろそろ今月も終わりに近いが、来月は特別稽古月間として週1回、だからトータルで4回行なうことになるが、終日稽古を計画した。今やっている整体術講座の休日を利用し、内弟子だけのスペシャル稽古だ。そこでは武道だけでなく整体も入るが、それにプラスしてさらに特別なことも学んでもらう。そこで活殺自在をもっと深く、しっかり理解してほしい」
ちょっと含みのある言い方だったが、内弟子にとって自分たちだけの特別稽古という言葉は大変心地よく響いた。それこそがここに内弟子として在籍している意義であり、今もっとも自分たちの心が燃える理由だったからだ。
「やったー。特別稽古って何をやるんですか?」
一番最初に龍田が尋ねた。こういうことについてはすぐに反応する。少々お調子者の部分があるが、見方を変えればムードメーカーにもなる。龍田の質問は他の内弟子にも飛び火した。
「特別というから特別のことでしょう」
比較的おとなしい松池も、期待感を感じている様子だ。
「何かすごいことを教えてもらえるんですか?」
年が若いせいか、龍田に劣らず調子に乗ることがある堀田も、当然のように期待大といった感じだ。特に武術に対して漫画的な過大な期待を持っている部分もあるため、特別という言葉の響きが気持ちの奥底にある期待に火を着けたようだ。
高山は何も言わなかったが、その目は同じようなことを期待していた。目はカッと開き、藤堂の言葉に耳を傾けている。
内弟子たちは藤堂のほうを凝視し、表情は嬉しさで満ちている。そして次にどういう言葉が出てくるか、気持ちも逸っていた。
「そうだ。特別なことだ。これまでみんなにあまり話していなかったことを話す予定だ」
また含みのある言い方で藤堂が答えた。
全員、さらに期待が高まり、先ほどよりも目や表情が一段と輝きを増した。
「えっ。すごい。楽しみだ」
龍田がはしゃいだ。性格的にこのような話にはすぐにテンションが上がる。内弟子たちは互いに顔を見合わせ、嬉しそうな顔をしている。
ただ、長男的存在の御岳は、その中では比較的冷静だった。もちろん、嬉しいには違いないのだが、そこは内弟子第1号だ。後輩たちに示さなければならない顔というのもある。
「で、具体的にはどのようなプログラムになるんですか?」
御岳は自分の立場を理解し、尋ねた。
「みんなのリアクションから想像すると、これまで見せたことのない秘技を学べると思っているかもしれないが、技術的なことだけでなく、頭の中のほうも充実させていこうと思う」
藤堂は内弟子一人一人の目を見ながら、真顔で答えた。
今までテンションが上がっていた内弟子たちは、急に現実に戻った感じになった。藤堂が言った「頭の中」という意味が理解できなかったのだ。
「頭の中って、どういうことですか?」
みんなを代表するような感じで高山が尋ねた。
高山にとっては、内弟子として入門以来、武術的なことについて、あるいは活法としての整体術についても、技術だけでなく知識的なことも十分すぎるほど教わったつもりでいた。そこで活殺自在の理も含めて頭の中に入れるべきものも学んだつもりだったが、そういうことではないのかと思い、質問したのだ。
他の内弟子も似たり寄ったりの心境だった。それまで学んでいた内容と明らかに異なる技術と、それにまつわる理論的・知識的な部分も教授してもらっていたつもりだっただけに、これ以上何を頭の中に入れなければならないのかが理解できなかったのだ。
そのような内弟子たちの心を読んで、藤堂は言った。
「そろそろ今月も終わりに近いが、来月は特別稽古月間として週1回、だからトータルで4回行なうことになるが、終日稽古を計画した。今やっている整体術講座の休日を利用し、内弟子だけのスペシャル稽古だ。そこでは武道だけでなく整体も入るが、それにプラスしてさらに特別なことも学んでもらう。そこで活殺自在をもっと深く、しっかり理解してほしい」
ちょっと含みのある言い方だったが、内弟子にとって自分たちだけの特別稽古という言葉は大変心地よく響いた。それこそがここに内弟子として在籍している意義であり、今もっとも自分たちの心が燃える理由だったからだ。
「やったー。特別稽古って何をやるんですか?」
一番最初に龍田が尋ねた。こういうことについてはすぐに反応する。少々お調子者の部分があるが、見方を変えればムードメーカーにもなる。龍田の質問は他の内弟子にも飛び火した。
「特別というから特別のことでしょう」
比較的おとなしい松池も、期待感を感じている様子だ。
「何かすごいことを教えてもらえるんですか?」
年が若いせいか、龍田に劣らず調子に乗ることがある堀田も、当然のように期待大といった感じだ。特に武術に対して漫画的な過大な期待を持っている部分もあるため、特別という言葉の響きが気持ちの奥底にある期待に火を着けたようだ。
高山は何も言わなかったが、その目は同じようなことを期待していた。目はカッと開き、藤堂の言葉に耳を傾けている。
内弟子たちは藤堂のほうを凝視し、表情は嬉しさで満ちている。そして次にどういう言葉が出てくるか、気持ちも逸っていた。
「そうだ。特別なことだ。これまでみんなにあまり話していなかったことを話す予定だ」
また含みのある言い方で藤堂が答えた。
全員、さらに期待が高まり、先ほどよりも目や表情が一段と輝きを増した。
「えっ。すごい。楽しみだ」
龍田がはしゃいだ。性格的にこのような話にはすぐにテンションが上がる。内弟子たちは互いに顔を見合わせ、嬉しそうな顔をしている。
ただ、長男的存在の御岳は、その中では比較的冷静だった。もちろん、嬉しいには違いないのだが、そこは内弟子第1号だ。後輩たちに示さなければならない顔というのもある。
「で、具体的にはどのようなプログラムになるんですか?」
御岳は自分の立場を理解し、尋ねた。
「みんなのリアクションから想像すると、これまで見せたことのない秘技を学べると思っているかもしれないが、技術的なことだけでなく、頭の中のほうも充実させていこうと思う」
藤堂は内弟子一人一人の目を見ながら、真顔で答えた。
今までテンションが上がっていた内弟子たちは、急に現実に戻った感じになった。藤堂が言った「頭の中」という意味が理解できなかったのだ。
「頭の中って、どういうことですか?」
みんなを代表するような感じで高山が尋ねた。
高山にとっては、内弟子として入門以来、武術的なことについて、あるいは活法としての整体術についても、技術だけでなく知識的なことも十分すぎるほど教わったつもりでいた。そこで活殺自在の理も含めて頭の中に入れるべきものも学んだつもりだったが、そういうことではないのかと思い、質問したのだ。
他の内弟子も似たり寄ったりの心境だった。それまで学んでいた内容と明らかに異なる技術と、それにまつわる理論的・知識的な部分も教授してもらっていたつもりだっただけに、これ以上何を頭の中に入れなければならないのかが理解できなかったのだ。
そのような内弟子たちの心を読んで、藤堂は言った。
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