上 下
133 / 278
第3章 王立魔法学校入学編

174 悔しがる

しおりを挟む
「結局、好意持ちの子がいるかわからなかったなぁ」

学生寮への帰り道、キャシーちゃんがポツリと呟く。

「機会がないと自分から好意持ちですって言いにくいんじゃないかなぁ」
「やっぱり授業中に自己紹介でもする時間がない限り難しいのかしら?光の精霊様の好意持ちって周りにいなかったから、もしいたら絶対に友達になりたかったのにっ」

キャシーちゃんは本当に楽しみにしていたようで、残念そうに肩を落としている。

「でも、同じ光魔法学の授業を受けている子同士、好意持ち関係なく友だちになれると良いね」
「そうね!…そうなんだけど、もう既にみんなグループを作っちゃってるのよねぇ」

私の言葉に勢いよく顔をあげたあと、目の前の光景を見てまた肩を落とすキャシーちゃん。
確かに一緒に教室を出た子たちは大体がグループを作っていて、一人で廊下を歩いている子はいなかった。

「ほ、ほら!光魔法学は私も一緒だし、一人じゃないよっ」
「光魔法学はね。料理の授業が不安だわ…。わたし一人で友だち作れるかしら」

元気づけようとしたけれど、逆効果だったようでキャシーちゃんを余計に落ち込ませてしまう結果に…。

「そんなこと言わないで~!私も闇魔法学は誰も知り合いいないけど、新しい友達ができるよう頑張るから。キャシーちゃんも頑張ろう?」
「そ、そうね!」

それでもなんとか私のつたない励ましで、キャシーちゃんが立ち直ってくれた所で学生寮にたどり着く。

「二人ともお帰りなさい。マーブルも」
「「ただいまっ」」「にゃんっ」
「夕飯までまだ時間があるし、あたしの部屋で話す?」
「やったっ!」
「お邪魔していいの?」
「うん。マーブルもどうぞ」
「にゃん♪」


自分の部屋に荷物を置いてから、キャシーちゃんと揃ってアミ―ちゃんの部屋の扉を叩くと、アミ―ちゃんは部屋の中にいて、私たちを出迎えてくれた。
キャシーちゃんを毎朝起こすため、キャシーちゃんの部屋には何度もお邪魔してるけど、アミ―ちゃんの部屋は初めてだ。
部屋の作りはみんな一緒なのだけど、キャシーちゃんの部屋がぬいぐるみやピンク色の雑貨で可愛らしく飾り付けられているのとは対照的に、アミ―ちゃんの部屋は水色と黄色の雑貨がセンス良く置かれた、シンプルだけどとても居心地の良い部屋だった。
そんな部屋でマーブルをみんなで撫でたり、まったりと過ごしていたら、あっという間に夕飯の時間まであと少しとなっていた。

「いっけない。もうすぐ夕飯の時間よ」
「もうそんな時間?」
「そう言われたらお腹が空いてきたかも」
「にっ」
「そうそう、ハルたちが夕飯も一緒に食べようって言ってたわよ」
「本当!?じゃあ、早く行かなきゃ!」

ハル君の名前にキャシーちゃんが慌てて立ち上がると、素早い動きで扉の前に行き、こちらを振り返る。

「二人とも早く!」
「はい、はい」
「マーブルおいで」
「にゃん」

私の膝の上で寝そべっていたマーブルにポシェットの開け口を見せて、そのままポシェットに入ってもらう。


「あ!ハル君だ♪」

ハル君たちとは食堂に行く途中で合流することができた。キャシーちゃんがハル君を見つけて、嬉しそうに駆け寄る後ろをアミーちゃんと一緒についていく。


「おっ!良いところで会ったな。一緒に行こうぜ」
「うん!」
「二人ともお疲れさま―。授業はどうだった―?」
「先生が若くてビックリしちゃった!でも、空中に光る文字をサラサラって魔法で書き上げてね、凄かったよー」

フィン君に授業の感想を聞かれたので、一番印象的だった事を話す。

「へぇ!やっぱり、光魔法は他の属性とはひと味違うねー」
「四属性の魔法は誰でも使えるけれど、光属性と闇属性に関しては適正がないと使えないんだから、凄いのなんて当たり前よ!」

フィン君に誉められて、キャシーちゃんが誇らしげに答える。

「確かに回復魔法もあるし、使えたら便利よね」
「他の属性でも治癒魔法が使えるらしいわよ。もちろん、回復魔法ほど強力ではないらしいんだけどね」
「へぇ!あたしでも使えるのかしら?」
「土魔法も使えるのかっ?」
「風魔法はどうかなー?」

キャシーちゃんがサーシャ先生から聞いたことを披露するとアミ―ちゃんだけでなく、ハル君たちも興味を引かれたようだ。
私はキャシーちゃんの話で、土魔法にも治癒魔法があるのかモスに教えてもらおうと思っていた事を思いだし、モスの方を見るると、心なしかモスの眉間にシワがよっているような…。
いつもはあまり表情の変わらないモスの珍しい表情に思わずまじまじと見つめてしまう。

『治癒魔法が無くとも土魔法には攻防に優れた素晴らしい魔法がいくつもあると言うのに、あのわっぱが治癒魔法などに踊らされおって』

どうやら土魔法には治癒魔法はないようだ。
そう言ったモスの声があまりにも悔しそうで、モスに聞かないで良かったと密かに胸を撫で下ろす私だった。


―――
5/7 一部文章を修正しました。
誤:「光魔法学《わね》。料理の授業が不安だわ…。わたし一人で友だち作れるかしら」
正:「光魔法学《はね》。料理の授業が不安だわ…。わたし一人で友だち作れるかしら」

    
しおりを挟む
感想 263

あなたにおすすめの小説

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。