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第2章 王都へ

123 グリフォンの主

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「さっきの狼さんの主は誰になるんですか?」
「ファムの事?五年生のラム先輩だよ。ちなみにゲオルドはリチャード先輩のグリフォンになるんだ」

部屋を出てすぐに狼さんの主を確認する。

「何で知りたいの?」
「うちのマーブルが狼さんに怪我を負わせてしまったので、謝りたくって」
「あれはやっぱり見間違えじゃなかったんだ」

ヒューイ先輩は遠い目をして呟く。
何かおかしな事を言っちゃったかな?

「あのっ。怪我は回復魔法で治してあります!ただ、怪我をさせたのは事実なので、謝りたくって」
「サラちゃんは回復魔法が使えるんだね。わかった。ラム先輩を見つけたら、一緒に謝りにいこうか」
「ありがとうございます!」
「でも、みんなが待ってるだろうから、先にご飯を食べてしまおう」
「はいっ!」

悪いことをしたらすぐに相手に謝るのは大事なことだ。
でも、その謝る相手がわからないので、ヒューイ先輩に聞くしかなかった。せっかく、色々と優しくしてくれたのに、巻き込んでしまう形になって申し訳ないけど、今回は甘えさせてもらおう。

みんなのいるテーブルに戻ると、茶色の髪に青色の瞳の見知らぬ少年が一人増えていた。

「リチャード先輩っ!」

ヒューイ先輩の知り合いのようで、嬉しそうにテーブルに駆け寄る。
リチャード先輩って、さっき聞いた五年生の先輩の事かな?

「おう!ヒューイ」
「お帰りなさい!どうしたんですか」
「ヒューイたちが後輩たちに色々教えてるって聞いたから、様子を見にな。ちゃんと先輩らしく色々教えてあげたらしいじゃないか。偉いぞっ」
「ちょっ!リチャード先輩、頭を撫でないでくださいっ」

ヒューイ先輩は口では文句を言いつつも、誉められて嬉しそうだ。
周りにいる先輩方もその光景を羨ましそうに見ていて、リチャード先輩がみんなに慕われているのがよくわかった。

「他の子達は既に紹介が済んでいるから、ヒューイから彼女の事もリチャード先輩に紹介してあげて」
「あ、そうだねっ。リチャード先輩、彼女は新入生のサラちゃんです」
「初めまして」
「五年生のリチャードだ。よろしくなっ」

ミーナ先輩の言葉に慌てて私の方を見ると、リチャード先輩に私を紹介してくれた。
私が挨拶すると、リチャード先輩は歯を見せてニカリと笑ってくれた。

「リチャード先輩はもうご飯を食べたんですか?」
「食べようとしたところで、他の奴らから新入生が入寮したって聞いたんだ。だから、俺だけでも挨拶しようと思ってな。ガイたちはあっちで先に食事をしているぞ」

リチャード先輩が指差した先には何人かの生徒がご飯を食べていて、こちらの視線に気づいた一人が手を振ってくれた。
もしかしたらあの中にラム先輩がいるのかな?

「じゃあ、俺も飯を食べに戻るか。寮の事でわからないことがあったら、俺やヒューイや周りにいる連中に遠慮なく聞いてくれよっ」
「あ、あのっ」
「ん?どうした?」

食事前に申し訳ないと思いつつも、これを逃したらいつ会えるかわからないので、つい声をかけてしまう。でも、何て話せば良いかわからずに悩んでいると、ヒューイ先輩が代わりに話してくれた。

「サラちゃんがラム先輩にお話があるんです。お互いの食事が終わったらラム先輩に会いたいんですけど、リチャード先輩からラム先輩にお願いしてもらえませんか?」
「ラムと?いつ仲良くなったんだ?」
「いえ、ラム先輩はサラちゃんの事は全く知らないはずです。ちょっと、色々あって」
「ふーん。よくわからんが、まぁいいや。食べ終わったらこっちに来るから、ここで待ってろ」

リチャード先輩はそう言うと、仲間のもとに帰っていく。

「はい」
「あ、ありがとうございますっ!」

リチャード先輩の背に向かってお礼を言うと、「気にするな」と言うように手をひらひらさせて去っていった。

「ヒューイ先輩もありがとうございました!」
「ボクはリチャード先輩にお願いしただけだから。でも、すぐに会えそうで良かったね」
「はいっ!」

ヒューイ先輩にもお礼を言い、席に戻ると、席にいたみんなから何があったのか聞かれる。
だけど、ヒューイ先輩の「リチャード先輩たちを待たせたらいけないから、先にご飯を食べさせて」と言う言葉で質問は一旦は収まり、私はご飯を食べたあとに待ち受ける懺悔の時間にドキドキしつつご飯を食べるのであった。

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