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帰還編

裁きの天使 (7)

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 父は光の柱の中に浮いたまま、「兄さん、久しぶり」と伯父さまに声をかけた。

「ウィリアムなのか」
「うん。家のことを全部投げ出した挙げ句、ずっと連絡もせずにいてごめん」
「それはいい。お前はそうするしかなかったのだから。それより、死んでしまったと聞いたが本当なのか?」
「本当だよ。だからこうして天の遣いに選ばれたんだ」

 予定外の出来事に呆然としている伯父さまを前に、父は「結局あの人に殺されたようなものだな」とつぶやいてから続けた。

「でも今は、そんなことよりもっと大事なことを頼みに来た」
「私たちの娘と、その伴侶の保護をお願いします」
「あの子たちには失敗できない使命があるんだ。よろしく頼みます」

 父と母は、伯父さまに向かって口々に私たちの保護を要請した。
 それに対して伯父さまが「まかせなさい」と返事をした途端、光の柱がさらにひときわ光り輝いたと思ったら、父と母の間に年端もいかない少年が立っていた。少年は両親の手を取って引っ張りながら、声を張り上げた。

「はい、おしまい! お父さん、お母さん、もう時間切れだって。おしまいだよ、帰ろう!」
「わかったよ、ティモシー。それじゃ兄さん、頼んだよ!」

 父は苦笑いしながら少年の頭をなで、三人は手をつないだまま光の柱の中を通って天に還って行ったのだそうだ。

 この光景の目撃者は、伯父さまと案内の侍従だけではなかった。何しろ両親たちが現れたのは、王太子さまの居室のすぐ前でのことだ。王宮内で働く者たちの人通りもそれなりにあったし、王太子さまの居室からも何ごとかと扉を開けて外へ出てきた人々がいた。そこには王太子さまご自身も含まれる。
 両親が天から降りてきたときに通った光の柱の一部は王太子さまの居室の内部にもかかっていたため、常識から考えてあり得ない現象を目にして、室内にいた人たちはギョッとして部屋から飛び出したらしい。

 伯父さまが両親と話している間は固唾をのんで見守っていた人々も、両親が天に還っていくのを見届けた後は騒然となった。王太子さまがその騒ぎを治めた後、伯父さまはもともとの用事だった王さまの病状報告をして、辞去して馬車止めまでやって来た。
 そこへ忽然としてライナスと私が現れた、というわけだった。
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