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魔王城編
魔王城、上層探索 (3)
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しばらく考えてから思いついたのは結局、物理的な方法だった。
孵化させたい卵がここに置かれているのだとすれば、ここは孵化に適した条件が整えられた孵化場ということだ。だったら、適さない場所へ移動したらよいのではないだろうか。
「ライ、これ外に持っていかない?」
「外?」
「うん。ここは薄暗いでしょ? だから逆に明るいところに持って行ったら、孵化しなくなるかも」
「ふむ」
明るさもあるけど、この柱のようなものから引き離すべきだと思った。この柱から何か精気のようなものを与えられているように思えてならないのだ。
ライナスが同意してくれたので、いったん中庭に戻ることにした。
中庭では荷物の中から毛布を一枚出して、孵化場に持って行く。
卵を運ぶのにちょうどよい大きさの袋がないので、これに包んで運ぼうというわけだ。孵化場で詰め込めるだけ詰め込んでからライナスが背負い、こぼれ落ちたりしないよう私は後ろから様子を見ながらついて歩く。一度では運びきれず、二往復した。
運び出した卵は、中庭の隅にある日当たりのよい石畳の上に転がしておいた。
孵化場で見たときはほとんど透明のようだった球体の表面は、日光の下で見ると白く膜がかかっているようで、思っていたほど透明度が高くなかった。おかげでグロテスクな中身を見ずに済む。
すべて運び終えてから、私はライナスにひとつ提案をした。
「さっきの部屋の中央に、紫色の柱があったでしょ? あれを壊せないかな」
「どうだろう。やってみるか」
「うん」
あの部屋に戻りながら、ライナスに私の考えを説明した。つまり、あの柱が何らかの形で卵の孵化をうながしているのじゃないか、という推測だ。
「配置から考えて、あり得そうじゃない?」
「そうだね。配置か……」
ライナスはまた何やら考え込んでしまった。
考え込むほど深い話をしたつもりがなかったから、その反応は意外だった。でも彼の思考を邪魔したくなかった私は、そのまま口をつぐんでそっとしておいた。
孵化場では、私の覚えている限りの浄化魔法をまず試してみた。
どれも発動はするものの、何の効果も見られない。
回復魔法と補助魔法は、試すのをやめておいた。下手に効果があったら困るから。
そんなわけで、私は役に立ちそうもなかった。次は、ライナスだ。
「勇者のスキルで、何か使えそうなものはない?」
「どうかなあ。とりあえず片っ端から試してみる」
「うん」
ライナスがスキルを試す間、私は巻き込まれないよう壁際で見守った。範囲攻撃のスキルも少なくないから、ぼんやりして近くで見ていると危ないのだ。見た感じ、スキル自体は発動しているものの、円柱にダメージを与えられている様子はなかった。ライナスがどれほど頑張ろうが、円柱の表面には傷ひとつつかない。
「だめだな」
「みたいね」
がっかりしたけれども、できることがないのだから仕方がない。
孵化させたい卵がここに置かれているのだとすれば、ここは孵化に適した条件が整えられた孵化場ということだ。だったら、適さない場所へ移動したらよいのではないだろうか。
「ライ、これ外に持っていかない?」
「外?」
「うん。ここは薄暗いでしょ? だから逆に明るいところに持って行ったら、孵化しなくなるかも」
「ふむ」
明るさもあるけど、この柱のようなものから引き離すべきだと思った。この柱から何か精気のようなものを与えられているように思えてならないのだ。
ライナスが同意してくれたので、いったん中庭に戻ることにした。
中庭では荷物の中から毛布を一枚出して、孵化場に持って行く。
卵を運ぶのにちょうどよい大きさの袋がないので、これに包んで運ぼうというわけだ。孵化場で詰め込めるだけ詰め込んでからライナスが背負い、こぼれ落ちたりしないよう私は後ろから様子を見ながらついて歩く。一度では運びきれず、二往復した。
運び出した卵は、中庭の隅にある日当たりのよい石畳の上に転がしておいた。
孵化場で見たときはほとんど透明のようだった球体の表面は、日光の下で見ると白く膜がかかっているようで、思っていたほど透明度が高くなかった。おかげでグロテスクな中身を見ずに済む。
すべて運び終えてから、私はライナスにひとつ提案をした。
「さっきの部屋の中央に、紫色の柱があったでしょ? あれを壊せないかな」
「どうだろう。やってみるか」
「うん」
あの部屋に戻りながら、ライナスに私の考えを説明した。つまり、あの柱が何らかの形で卵の孵化をうながしているのじゃないか、という推測だ。
「配置から考えて、あり得そうじゃない?」
「そうだね。配置か……」
ライナスはまた何やら考え込んでしまった。
考え込むほど深い話をしたつもりがなかったから、その反応は意外だった。でも彼の思考を邪魔したくなかった私は、そのまま口をつぐんでそっとしておいた。
孵化場では、私の覚えている限りの浄化魔法をまず試してみた。
どれも発動はするものの、何の効果も見られない。
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そんなわけで、私は役に立ちそうもなかった。次は、ライナスだ。
「勇者のスキルで、何か使えそうなものはない?」
「どうかなあ。とりあえず片っ端から試してみる」
「うん」
ライナスがスキルを試す間、私は巻き込まれないよう壁際で見守った。範囲攻撃のスキルも少なくないから、ぼんやりして近くで見ていると危ないのだ。見た感じ、スキル自体は発動しているものの、円柱にダメージを与えられている様子はなかった。ライナスがどれほど頑張ろうが、円柱の表面には傷ひとつつかない。
「だめだな」
「みたいね」
がっかりしたけれども、できることがないのだから仕方がない。
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