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再び、醸造町ヘルトニッヒ (2)
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その日の夕食には副会長の一家も招かれ、すっかり「事件を無事に解決したことへの感謝の会」といった様相だった。中心となって立ち回ったのはシモンなので、それと同じように感謝されるとアンジーは少々居心地が悪い。
「今回の立役者はシモンさんですよ」
「いやいや。一番肝心な場面でアンジーがうまく加勢してくれたからこそだよ」
ヒンメル商会側とすると、シモンとアンジーの二人に助けられたことに変わりはない。誰もが口々に感謝の言葉を並べる。中でも副会長とその夫人は、涙ぐまんばかりだった。
溢れんばかりの謝意に圧倒されたアンジーは、話題を変えるべくシモンに水を向けた。
「ねえ、シモンさん。聞きたいことがあったんじゃない?」
「ああ、そうでした」
シモンは副会長に、王都の春祭りで見かけたヒルデという女性を探していることを話した。
「王都の春祭りの運営に関わったヒンメル商会の関係者の中に、ヒルデという女性はいませんか?」
「おりませんなあ」
ヒンメル商会は、規模がほかの商会に比べて小さいこともあり、運営に携わった人員もほかの商会に比べたらだいぶ少ない。
今年の運営には、ヒンメル商会からは副会長が代表として参加しており、自商会内から動員した人員の名前はだいたいわかっているが、その中にヒルデという名の若い女性はいないと言う。
「やはりそうですか」
「やはり?」
思わしい回答ではなかったのに、さして落胆した様子のないシモンに、アンジーは首をかしげた。あまり落ち込まれても困るけれども、淡白すぎるのも、それはそれで気になる。
「うん。昨日のうちに、たぶんそうだろうなと思えるだけの返事はいただきましたからね」
「なるほど」
副会長は申し訳なさそうな顔をしつつも、ひとつ提案した。
「一応、念のために王都の支部に手紙を出して照会しておきましょうか」
商会長は、地元から連れて行った人員については完璧に把握してはいるが、王都の支部から運営に関わった者については完璧とまでは言えない。臨時雇いの者がいたかもしれないからだ。
だから念のため、王都の支部に問い合わせて確認してみようか、という申し出だった。
シモンはもちろん、ありがたくそれを受け入れた。
「結果はどちらにお知らせしましょうか?」
「旅を終えたらいったん王都の屋敷に戻るつもりなので、そちらにお願いできますか」
「かしこまりました」
そのやりとりを聞いてアンジーは、からかうような笑みを浮かべた。
「これで、ヒルデ嬢が実は王都にいるとわかったら、もう笑うしかありませんよね」
「それは言わないでください……」
アンジーはヒンメル商会の面々に、シュラウプナーで知り合ったときのいきさつを暴露する。
「シモンさんったら王都で何も調べずに、春祭りが終わるなり王都を飛び出しちゃったんですよ」
「だって、あのときは焦ってたから。だけどそのお陰でアンジーと知り合えたわけでしょう? 結果よければすべてよし、ですよ」
「いや、まだ結果出てませんから」
アンジーの容赦ない指摘に、食事の場は笑いにつつまれた。
「今回の立役者はシモンさんですよ」
「いやいや。一番肝心な場面でアンジーがうまく加勢してくれたからこそだよ」
ヒンメル商会側とすると、シモンとアンジーの二人に助けられたことに変わりはない。誰もが口々に感謝の言葉を並べる。中でも副会長とその夫人は、涙ぐまんばかりだった。
溢れんばかりの謝意に圧倒されたアンジーは、話題を変えるべくシモンに水を向けた。
「ねえ、シモンさん。聞きたいことがあったんじゃない?」
「ああ、そうでした」
シモンは副会長に、王都の春祭りで見かけたヒルデという女性を探していることを話した。
「王都の春祭りの運営に関わったヒンメル商会の関係者の中に、ヒルデという女性はいませんか?」
「おりませんなあ」
ヒンメル商会は、規模がほかの商会に比べて小さいこともあり、運営に携わった人員もほかの商会に比べたらだいぶ少ない。
今年の運営には、ヒンメル商会からは副会長が代表として参加しており、自商会内から動員した人員の名前はだいたいわかっているが、その中にヒルデという名の若い女性はいないと言う。
「やはりそうですか」
「やはり?」
思わしい回答ではなかったのに、さして落胆した様子のないシモンに、アンジーは首をかしげた。あまり落ち込まれても困るけれども、淡白すぎるのも、それはそれで気になる。
「うん。昨日のうちに、たぶんそうだろうなと思えるだけの返事はいただきましたからね」
「なるほど」
副会長は申し訳なさそうな顔をしつつも、ひとつ提案した。
「一応、念のために王都の支部に手紙を出して照会しておきましょうか」
商会長は、地元から連れて行った人員については完璧に把握してはいるが、王都の支部から運営に関わった者については完璧とまでは言えない。臨時雇いの者がいたかもしれないからだ。
だから念のため、王都の支部に問い合わせて確認してみようか、という申し出だった。
シモンはもちろん、ありがたくそれを受け入れた。
「結果はどちらにお知らせしましょうか?」
「旅を終えたらいったん王都の屋敷に戻るつもりなので、そちらにお願いできますか」
「かしこまりました」
そのやりとりを聞いてアンジーは、からかうような笑みを浮かべた。
「これで、ヒルデ嬢が実は王都にいるとわかったら、もう笑うしかありませんよね」
「それは言わないでください……」
アンジーはヒンメル商会の面々に、シュラウプナーで知り合ったときのいきさつを暴露する。
「シモンさんったら王都で何も調べずに、春祭りが終わるなり王都を飛び出しちゃったんですよ」
「だって、あのときは焦ってたから。だけどそのお陰でアンジーと知り合えたわけでしょう? 結果よければすべてよし、ですよ」
「いや、まだ結果出てませんから」
アンジーの容赦ない指摘に、食事の場は笑いにつつまれた。
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