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4杯目 マテ茶
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〈マテ茶〉
飲むサラダと呼ばれているほど栄養が豊富。
精神面ではストレスなどに対して有効に働きかけ、肉体面では、疲労回復効果が期待できる。
緑茶のような渋みのある風味。ローストすると香ばしく甘みと苦味のある味になる。
「…え?」
月羽は絶句した。
目の前の光景に…。
そこには人が倒れていた。
女子中学生の制服を着ている。
「えっと…い、生きてる?」
首元に触れると凄く冷たいが脈はあった。
雨が降っているのできっと雨に打たれて冷え切ってしまったのだろう。
「…と、兎に角、一旦お店で休ませよう。」
月羽は女の子を背負うとお店のドアを開けた。
「ん…。」
少女が目を開けると見知らぬ天井が目に映る。
「は…?ここ何処?」
「おや、目が覚めたかい?」
少女は声の主を振り返る。
和服姿の美しくも凛々しい姿の女性が椅子に座り、濡れたタオルを持っていた。
「オーナーに感謝するんだね。店の前で倒れてたあんたをここまで運んでくれてお茶までご馳走してくれるってんだからさ。」
「…頼んでない。」
「ハハ、可愛くないね。昔の私にそっくりさね。」
そう笑い飛ばして女性は女の子の頭をわしわしと撫でる。
「ちょ、何すんの。」
「…こんなに痩せて、身体には内出血。虐待されているんだね。」
「っ!?」
少女の顔色が変わる。
「嗚呼、安心しな。別に親を問いただす気も、マッポや児童相談所にも連絡する気はないよ。…あんたが望まない限りは、ね。」
「え?」
少女が不思議そうに首を傾げた時、ドアのノック音が鳴り月羽がおぼんを持って現れる。
「あ、起きましたか?良かった。大分衰弱されていたので心配しましたよ。さ、暖かい内に飲んで下さい。」
そう言って湯気の立つカップが2つ置かれる。
途端、ぐうっとお腹の音が鳴り、少女が慌て出す。
「はは、豪快に鳴ったね。」
「っ!!い、言わないでよ…。恥ずかしい。穴があったら入りたい。」
少女は顔を真っ赤にしている。
「お腹空いていると思って、おにぎりですが作ったので置いときます。…本来はお菓子を出すんですが…マテ茶にはおにぎりも合うと思いまして。」
「…マテ茶?」
「このお茶ですよ。詳しくは彼女が教えてくれますよ。では、私は事務作業に戻ります。ゆっくりしていって下さいね。」
そう笑って月羽は部屋を出て、和服の女性と少女の2人きりになった。
「さて、お互いの名前が分かんないのは不便だからね。私は龍咲夜千与(りゅうざきやちよ)。好きに呼びな。で、あんたは?」
「…霧崎魑嘉(きりさきちか)。」
「魑嘉、何で出された飲み物が“マテ茶”だと思う?緑茶や烏龍茶、麦茶みたいなオーソドックスな奴じゃなく何でこれか。」
「ここ、お店なんでしょ。こういう珍しいお茶出す系の。」
「ハハ、ザックリしてるねえ。ここは客に合ったハーブティーを出す店さ。オーナーが選んでハーブティー淹れて、それに合ったお菓子とイメージに合った店員を1セットで出すんだよ。つまり私はマテ茶のイメージらしい。」
「私にはマテ茶が合っているらしく、あんたがヤクザって事はわかったよ。」
「元だよ、元。組が潰れて流浪してた流れ者の私をオーナーは拾って働かせてくれてんのさ。それはさて置き、マテ茶はね、“飲むサラダ”って別名があるんだよ。」
「サラダ?野菜ジュースみたいなもん?」
「栄養が豊富なんだ。あとストレスや疲労回復効果もあるんだよ。まさに栄養足りてないアンタに御誂え向きって事さ。」
「ふーん。」
「つれない返事だねえ。あ、もしかして野菜嫌いだから飲むサラダとか聞いて警戒してる?大丈夫、味は普通のお茶みたいなもんさね。」
魑嘉は恐る恐る口をつける。
「……暖かい。」
「真心入れたお茶は身体の芯まで温まるだろ。味はどうだい?」
「…悪くないね。」
「捻くれた言い方だけど美味しいみたいだね。」
魑嘉は続けておにぎりにも手を伸ばす。
「…不思議な味。」
「そのおにぎりは梅昆布茶の粉末を混ぜあるのさ。梅の酸味が食欲を唆るだろ?」
「…こんな美味しいおにぎり初めて食べた。…あのさ、また…ここに来て良い?今度は客として…。」
「勿論さね。オーナーも喜ぶよ。」
ニカっと豪快に笑う夜千与。
「その…き、来た時はまたあんたで良いよ。」
「おや、嬉しいねえ。私を気に入ってくれたんだねえ。」
「はあっ!?ち、違うから!!おにぎりとお茶が美味しかったから…。」
そう言い返す魑嘉に夜千与は笑いながらクシャっと頭を撫でる。
「またおいで、待ってるよ。」
飲むサラダと呼ばれているほど栄養が豊富。
精神面ではストレスなどに対して有効に働きかけ、肉体面では、疲労回復効果が期待できる。
緑茶のような渋みのある風味。ローストすると香ばしく甘みと苦味のある味になる。
「…え?」
月羽は絶句した。
目の前の光景に…。
そこには人が倒れていた。
女子中学生の制服を着ている。
「えっと…い、生きてる?」
首元に触れると凄く冷たいが脈はあった。
雨が降っているのできっと雨に打たれて冷え切ってしまったのだろう。
「…と、兎に角、一旦お店で休ませよう。」
月羽は女の子を背負うとお店のドアを開けた。
「ん…。」
少女が目を開けると見知らぬ天井が目に映る。
「は…?ここ何処?」
「おや、目が覚めたかい?」
少女は声の主を振り返る。
和服姿の美しくも凛々しい姿の女性が椅子に座り、濡れたタオルを持っていた。
「オーナーに感謝するんだね。店の前で倒れてたあんたをここまで運んでくれてお茶までご馳走してくれるってんだからさ。」
「…頼んでない。」
「ハハ、可愛くないね。昔の私にそっくりさね。」
そう笑い飛ばして女性は女の子の頭をわしわしと撫でる。
「ちょ、何すんの。」
「…こんなに痩せて、身体には内出血。虐待されているんだね。」
「っ!?」
少女の顔色が変わる。
「嗚呼、安心しな。別に親を問いただす気も、マッポや児童相談所にも連絡する気はないよ。…あんたが望まない限りは、ね。」
「え?」
少女が不思議そうに首を傾げた時、ドアのノック音が鳴り月羽がおぼんを持って現れる。
「あ、起きましたか?良かった。大分衰弱されていたので心配しましたよ。さ、暖かい内に飲んで下さい。」
そう言って湯気の立つカップが2つ置かれる。
途端、ぐうっとお腹の音が鳴り、少女が慌て出す。
「はは、豪快に鳴ったね。」
「っ!!い、言わないでよ…。恥ずかしい。穴があったら入りたい。」
少女は顔を真っ赤にしている。
「お腹空いていると思って、おにぎりですが作ったので置いときます。…本来はお菓子を出すんですが…マテ茶にはおにぎりも合うと思いまして。」
「…マテ茶?」
「このお茶ですよ。詳しくは彼女が教えてくれますよ。では、私は事務作業に戻ります。ゆっくりしていって下さいね。」
そう笑って月羽は部屋を出て、和服の女性と少女の2人きりになった。
「さて、お互いの名前が分かんないのは不便だからね。私は龍咲夜千与(りゅうざきやちよ)。好きに呼びな。で、あんたは?」
「…霧崎魑嘉(きりさきちか)。」
「魑嘉、何で出された飲み物が“マテ茶”だと思う?緑茶や烏龍茶、麦茶みたいなオーソドックスな奴じゃなく何でこれか。」
「ここ、お店なんでしょ。こういう珍しいお茶出す系の。」
「ハハ、ザックリしてるねえ。ここは客に合ったハーブティーを出す店さ。オーナーが選んでハーブティー淹れて、それに合ったお菓子とイメージに合った店員を1セットで出すんだよ。つまり私はマテ茶のイメージらしい。」
「私にはマテ茶が合っているらしく、あんたがヤクザって事はわかったよ。」
「元だよ、元。組が潰れて流浪してた流れ者の私をオーナーは拾って働かせてくれてんのさ。それはさて置き、マテ茶はね、“飲むサラダ”って別名があるんだよ。」
「サラダ?野菜ジュースみたいなもん?」
「栄養が豊富なんだ。あとストレスや疲労回復効果もあるんだよ。まさに栄養足りてないアンタに御誂え向きって事さ。」
「ふーん。」
「つれない返事だねえ。あ、もしかして野菜嫌いだから飲むサラダとか聞いて警戒してる?大丈夫、味は普通のお茶みたいなもんさね。」
魑嘉は恐る恐る口をつける。
「……暖かい。」
「真心入れたお茶は身体の芯まで温まるだろ。味はどうだい?」
「…悪くないね。」
「捻くれた言い方だけど美味しいみたいだね。」
魑嘉は続けておにぎりにも手を伸ばす。
「…不思議な味。」
「そのおにぎりは梅昆布茶の粉末を混ぜあるのさ。梅の酸味が食欲を唆るだろ?」
「…こんな美味しいおにぎり初めて食べた。…あのさ、また…ここに来て良い?今度は客として…。」
「勿論さね。オーナーも喜ぶよ。」
ニカっと豪快に笑う夜千与。
「その…き、来た時はまたあんたで良いよ。」
「おや、嬉しいねえ。私を気に入ってくれたんだねえ。」
「はあっ!?ち、違うから!!おにぎりとお茶が美味しかったから…。」
そう言い返す魑嘉に夜千与は笑いながらクシャっと頭を撫でる。
「またおいで、待ってるよ。」
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