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1杯目 カモミールティー
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〈カモミールティー〉
飲みやすく、気分を落ち着かせてくれるハーブ。
胃腸の調子を整える作用がある。
また、ストレスや不安、不眠にも有効。
林檎の様な香りで、甘く優しい味。
「ああ、疲れた。」
東雲一葉(しののめかずは)、25歳。
大手企業の社長の秘書をしている。
と、突然鳴り響く携帯の着信音。
「もしもし…。」
しばらく電話をし、電話を切るなり大きな溜息が出てしまう。
「はあ…嘘でしょ…。」
明日休みだったはずの一葉。
今の電話は会社の社長からで自分代わりに契約を取って来いとの事だった。
「うう、不安しかない。胃が痛い…。」
そう言いながら帰り道を歩いているとふと、良い匂いがした。
興味を惹かれ、匂いのする方へ足を向ける。
すると路地裏小さなカフェがあった。
“コンソラトゥール”
と、小さな看板に書かれていた。
この店の名前の様だ。
一葉は吸い込まれる様に店内へ入った。
ドアが閉まると、ドアに取り付けてあるベルが可愛らしい音で鳴る。
「いらっしゃいませ!コンソラトゥールへようこそ。」
店員は何故か白衣を来ていた。
「…此処ってカフェ、ですよね?」
思わずそう尋ねる一葉。
「ええ、そうですよ。ああ、初めてのお客様ですね。」
店員はそう言って、カウンターから紙とペンを取り出す。
「申し遅れました、私はオーナーの十七夜月 月羽(かのう つきは)と申します。此処は特殊なカフェでして、お客様の心身の疲れなどに応じてぴったりなハーブティーを提供させて頂いております。こちらの紙にある項目で当てはまる症状をチェックして頂き、あとはお客様の趣味を教えて頂いたら私がぴったりなハーブティーで幸せなひと時をご提供致します。」
そう言ってオーナーの月羽は用紙を手渡してきた。
一葉は半信半疑で用紙を記入する。
「…なるほど、契約の仕事がいきなり入り、ストレスと緊張で胃がキリキリしていると。あと可愛いものがお好き…。分かりました、ご用意致しますのでそちらのお部屋でお待ち下さい。」
そう言って月羽は一つの個室に一葉を案内する。
「このカフェは癒しと寛ぎの空間を重視しておりまして、全個室となっております。そちらのソファーに腰をかけお待ち下さい。」
言われるがまま、ソファーに腰を下ろすが、3人用のソファー1人には大き過ぎて落ち着かない。
しばらくしてコンコンっとドアのノック音がし、とても愛らしい女の子がお茶菓子とティーカップ乗ったおぼんを持って入ってきた。
「え?」
一葉は目を疑った。
その女の子は幼く、6、7歳くらいに見える。
「はじめまして、お姉さん。カモミールティーです。」
「え?ああ、どうも…。」
困惑しながらもティーカップを受け取るとフルーティーな香りが優しく香る。
「良い匂い。林檎みたいな…。」
「はい!私もお気に入りなんです。えーと…。」
女の子はポケットからメモ紙を取り出す。
「カモミールティーには胃のちょーしを整えるこーかと、ストレスや不安を和らげるこーかがあり、不眠にも効きます。りんごのよーな香りがとくちょーです。お仕事で疲れているあなたにピッタリでしょう。…お姉さん疲れてるの?」
心配そうに顔を除きこんでくる女の子。
「ん、ちょっとだけね。でも大丈夫よ、ありがとう。」
「そーだ、私が肩揉みしたげるね。」
そう言ってソファーの上に立ち上がる女の子。
「だ、大丈夫だよ。」
「嫌…?」
悲しそうに目を伏せる女の子に慌てて首を横に振る。
「全然嫌じゃないよ。…でもお嬢ちゃんに申し訳ないし…。」
「私のお仕事だから良いんだよ。カモミールティーとお菓子と私のセットなんだから。あ、私のことは“モモ“って呼んで欲しいな。」
そう言ってモモは無邪気に笑う。
「セットって…」
「あ、お姉さんは初めてだったね。えーと、ここのカフェはね、お客さん合ったハーブティーとハーブティーに合うお菓子、ハーブティーのイメージに合った女の子がセットなの。女の子は私が一番ちいさいけど、大人なお姉ちゃんもいるよ?マスターがそーいうの選ぶんだけど全部お客さんに合ってて喜んで貰えるの。」
「へえ?」
珍しいコンセプトだと一葉は興味が湧く。
「モモちゃん、聞いても良い?」
「はい、なんですか?」
「モモちゃんはどうしてここで働いてるの?」
「モモはこのお仕事大好き!!モモがお仕事すると皆笑顔でニコニコ。お客さん笑うと嬉しい。だって、モモが笑顔に…元気にしてあげられたってことでしょ?お客さんのニコニコがモモの幸せ。だから働く。」
「て…天使。」
一葉は思わず言葉に出してしまう。
「え?天使…?」
キョトンっと小首を傾げるモモ。
(か、可愛い!!!)
世間一般ではこういうのをあざといというのだろうか?
そんな事を考えていると、膝に軽い重みと暖かさを感じる。
「ちょっ…な…」
膝の上にちょこんと可愛らしくモモが座っている。
(ご褒美!!)
歳上にコキ使われてゴマすってな毎日を過ごす一葉にとってモモは最高の癒しになった。
「えへへ、お姉さんのお膝に座りたくなっちゃった。」
(え?何、この可愛い生物。)
「お姉さん、30秒ハグって知ってる?」
「え?何それ?」
「30秒以上ぎゅーってしたら幸せ気持ちになるんだって。モモ、お姉さんとしたいな。…駄目?」
上目遣いに潤んだ瞳で幼い子に言われたら断れる訳がない。
「よ、喜んで…。」
「わーい、お姉さん、だーいすき!ぎゅー♪」
モモが膝に乗ったまま、ハグをしてくる。
(こ、これは…っ!?)
林檎の様な甘い香りの漂う部屋、可愛い女の子、プニプニの肌…。
(幸せだ。)
「はい、おしまい。」
そう離れてしまう事に寂しさを覚える。
「えへへ、30秒って言ったのに3分もハグしちゃった♪」
そうイタズラに笑うモモ。
(あ、もうこんな時間…。)
時計の針を見てかなりの時間が経っていた事に気づく。
「あの…また、会える?」
「え?」
「ここに来たらモモちゃんにまた会える?」
そう質問した瞬間、モモの瞳が今までで一番、ぱあっと輝く。
「また来てくれるの?モモに逢いに?」
「うん…。私、モモちゃんのファンになっちゃった。」
「わーい、嬉しいな。マスターには私から言っとくね。あ、お姉さんのお名前は?」
「一葉、東雲一葉よ。」
「一葉お姉ちゃんだね!!モモのこと、気に入ってくれてありがとう♪…これ、サービスね。」
モモはそう言うと一葉の頬へ小さな唇を近づけてキスをする。
「っ!?」
驚いてモモを見るとイタズラが成功した様な笑顔モモがいた。
「マスターには内緒だよ。」
飲みやすく、気分を落ち着かせてくれるハーブ。
胃腸の調子を整える作用がある。
また、ストレスや不安、不眠にも有効。
林檎の様な香りで、甘く優しい味。
「ああ、疲れた。」
東雲一葉(しののめかずは)、25歳。
大手企業の社長の秘書をしている。
と、突然鳴り響く携帯の着信音。
「もしもし…。」
しばらく電話をし、電話を切るなり大きな溜息が出てしまう。
「はあ…嘘でしょ…。」
明日休みだったはずの一葉。
今の電話は会社の社長からで自分代わりに契約を取って来いとの事だった。
「うう、不安しかない。胃が痛い…。」
そう言いながら帰り道を歩いているとふと、良い匂いがした。
興味を惹かれ、匂いのする方へ足を向ける。
すると路地裏小さなカフェがあった。
“コンソラトゥール”
と、小さな看板に書かれていた。
この店の名前の様だ。
一葉は吸い込まれる様に店内へ入った。
ドアが閉まると、ドアに取り付けてあるベルが可愛らしい音で鳴る。
「いらっしゃいませ!コンソラトゥールへようこそ。」
店員は何故か白衣を来ていた。
「…此処ってカフェ、ですよね?」
思わずそう尋ねる一葉。
「ええ、そうですよ。ああ、初めてのお客様ですね。」
店員はそう言って、カウンターから紙とペンを取り出す。
「申し遅れました、私はオーナーの十七夜月 月羽(かのう つきは)と申します。此処は特殊なカフェでして、お客様の心身の疲れなどに応じてぴったりなハーブティーを提供させて頂いております。こちらの紙にある項目で当てはまる症状をチェックして頂き、あとはお客様の趣味を教えて頂いたら私がぴったりなハーブティーで幸せなひと時をご提供致します。」
そう言ってオーナーの月羽は用紙を手渡してきた。
一葉は半信半疑で用紙を記入する。
「…なるほど、契約の仕事がいきなり入り、ストレスと緊張で胃がキリキリしていると。あと可愛いものがお好き…。分かりました、ご用意致しますのでそちらのお部屋でお待ち下さい。」
そう言って月羽は一つの個室に一葉を案内する。
「このカフェは癒しと寛ぎの空間を重視しておりまして、全個室となっております。そちらのソファーに腰をかけお待ち下さい。」
言われるがまま、ソファーに腰を下ろすが、3人用のソファー1人には大き過ぎて落ち着かない。
しばらくしてコンコンっとドアのノック音がし、とても愛らしい女の子がお茶菓子とティーカップ乗ったおぼんを持って入ってきた。
「え?」
一葉は目を疑った。
その女の子は幼く、6、7歳くらいに見える。
「はじめまして、お姉さん。カモミールティーです。」
「え?ああ、どうも…。」
困惑しながらもティーカップを受け取るとフルーティーな香りが優しく香る。
「良い匂い。林檎みたいな…。」
「はい!私もお気に入りなんです。えーと…。」
女の子はポケットからメモ紙を取り出す。
「カモミールティーには胃のちょーしを整えるこーかと、ストレスや不安を和らげるこーかがあり、不眠にも効きます。りんごのよーな香りがとくちょーです。お仕事で疲れているあなたにピッタリでしょう。…お姉さん疲れてるの?」
心配そうに顔を除きこんでくる女の子。
「ん、ちょっとだけね。でも大丈夫よ、ありがとう。」
「そーだ、私が肩揉みしたげるね。」
そう言ってソファーの上に立ち上がる女の子。
「だ、大丈夫だよ。」
「嫌…?」
悲しそうに目を伏せる女の子に慌てて首を横に振る。
「全然嫌じゃないよ。…でもお嬢ちゃんに申し訳ないし…。」
「私のお仕事だから良いんだよ。カモミールティーとお菓子と私のセットなんだから。あ、私のことは“モモ“って呼んで欲しいな。」
そう言ってモモは無邪気に笑う。
「セットって…」
「あ、お姉さんは初めてだったね。えーと、ここのカフェはね、お客さん合ったハーブティーとハーブティーに合うお菓子、ハーブティーのイメージに合った女の子がセットなの。女の子は私が一番ちいさいけど、大人なお姉ちゃんもいるよ?マスターがそーいうの選ぶんだけど全部お客さんに合ってて喜んで貰えるの。」
「へえ?」
珍しいコンセプトだと一葉は興味が湧く。
「モモちゃん、聞いても良い?」
「はい、なんですか?」
「モモちゃんはどうしてここで働いてるの?」
「モモはこのお仕事大好き!!モモがお仕事すると皆笑顔でニコニコ。お客さん笑うと嬉しい。だって、モモが笑顔に…元気にしてあげられたってことでしょ?お客さんのニコニコがモモの幸せ。だから働く。」
「て…天使。」
一葉は思わず言葉に出してしまう。
「え?天使…?」
キョトンっと小首を傾げるモモ。
(か、可愛い!!!)
世間一般ではこういうのをあざといというのだろうか?
そんな事を考えていると、膝に軽い重みと暖かさを感じる。
「ちょっ…な…」
膝の上にちょこんと可愛らしくモモが座っている。
(ご褒美!!)
歳上にコキ使われてゴマすってな毎日を過ごす一葉にとってモモは最高の癒しになった。
「えへへ、お姉さんのお膝に座りたくなっちゃった。」
(え?何、この可愛い生物。)
「お姉さん、30秒ハグって知ってる?」
「え?何それ?」
「30秒以上ぎゅーってしたら幸せ気持ちになるんだって。モモ、お姉さんとしたいな。…駄目?」
上目遣いに潤んだ瞳で幼い子に言われたら断れる訳がない。
「よ、喜んで…。」
「わーい、お姉さん、だーいすき!ぎゅー♪」
モモが膝に乗ったまま、ハグをしてくる。
(こ、これは…っ!?)
林檎の様な甘い香りの漂う部屋、可愛い女の子、プニプニの肌…。
(幸せだ。)
「はい、おしまい。」
そう離れてしまう事に寂しさを覚える。
「えへへ、30秒って言ったのに3分もハグしちゃった♪」
そうイタズラに笑うモモ。
(あ、もうこんな時間…。)
時計の針を見てかなりの時間が経っていた事に気づく。
「あの…また、会える?」
「え?」
「ここに来たらモモちゃんにまた会える?」
そう質問した瞬間、モモの瞳が今までで一番、ぱあっと輝く。
「また来てくれるの?モモに逢いに?」
「うん…。私、モモちゃんのファンになっちゃった。」
「わーい、嬉しいな。マスターには私から言っとくね。あ、お姉さんのお名前は?」
「一葉、東雲一葉よ。」
「一葉お姉ちゃんだね!!モモのこと、気に入ってくれてありがとう♪…これ、サービスね。」
モモはそう言うと一葉の頬へ小さな唇を近づけてキスをする。
「っ!?」
驚いてモモを見るとイタズラが成功した様な笑顔モモがいた。
「マスターには内緒だよ。」
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