12 / 18
突然の訪問者
しおりを挟む駆け込んだ自室のドアをバタンッと勢いよく閉め、乱れた呼吸を整える。連れ込まれていた体育館の物置は寮とそこそこ離れており、おまけに出るとき時間を確認すると授業が終わる少し前で、急いで帰ってきたため結構疲れた。
幸い身に着けていた時計とポケットに入れていたスマホやマイカなどは取られていなかったから良かったが、生徒会の仕事用のパソコンを入れた鞄は連れ込まれる際落としてしまったようだ。物置を出る前に一応部屋の中を探したが無かったから、おそらく置きっぱなしになっているのだろう。後で取りに行かなきゃな…。
まあ、もし誰かが持って行ったところでセキュリティは厳重にしてあるから、ファイルを開くどころかアカウントにログインすることすらできないだろう。それにGPS機能のおかげで場所はすぐに分かるし、壊されてもデータは復元できる。スマホにも入ってるしね。
なにかあっても特に問題ないだろうと思い、取りあえず先に手首の縄を取ることにした。取る前に先ずはナイフを発掘しなきゃいけないんだけど。普段使わないから何処にあるか分かんないし。なんならそれに1時間は使うかもだな。
コンコンコンッ
ナイフを探していると、ドアをノックする音が聞こえてきた。……のだが、今日誰かが訪ねてくる予定はなかったはずだ。というより毎日ない。そもそも、棚いっぱいにbl本やblゲームやらを置いているような腐男子の巣に人を招けるわけがないのだ。こんな部屋見られたら確実に引かれる自信あるし。
俺が腐男子だと知っているのは家族と幼馴染だけであって、学園の生徒は生徒会役員含め誰も知らない。ああ、勿論教師もね。
話が逸れたが、じゃあ訪ねて来たのは誰なのかという話なわけで。このフロアは生徒会役員専用だから、このフロアに入れてる時点で生徒会役員もしくは学園内でそれなりの立場にいる教師なのは間違いない。どちらにしても訪ねてくる理由に心当たりは全く無いが。
手首の縄はまだ取れてない。
このまま出るのはかなり気まずいし、居留守を使っちゃだめだろうか…。
コンコンコンコンッ
出るか……これ部屋にいるのバレてるかもだし。
「どちら様で……副会長?」
ドアを開けた先にいたのは副会長だった。少し前に別れたばかりなんだけどな。何かあったのだろうか。
「すみません、伝え忘れていたことがありまして。それと、貴方の鞄が落ちていたので届けに」
そう言って渡されたのは、後で取りに行こうと思っていたパソコン入りの鞄だった。
「あ、これ!ありがとうございます!!」
わざわざ持ってきてくれたのか。ここまでそこそこ距離あるから大変だっただろうに。最悪の場合、盗られたり壊されたりすることを考えていたので、かなりありがたい。副会長様々だ。
「ところで…」
何かを言いかける副会長になんだろうと目を向けると、俺の手元ををジッと見ていることに気がついた。
ああ、なるほど。
多分、言おうとしているのは縄のことだろう。
まあ普通、訪ねた相手が手首を縄で縛った状態で出てきたら驚くし、何してるのか聞きたくなるだろう。俺だってそうだし。だからそれは理解できるんだけど…やっぱ気まずい。
「あーえっと、これはちょっとハプニングがあっただけで、その、そういう趣味があるわけじゃないので!!」
「ええ、それは知ってます」
テンパって余計なことまで言ってしまったなと思っていたら、まさかの知ってると即答された。
「野放しにされた害獣に襲われかけたんですよね?偶然見かけまして。ああ、害獣はちゃんと風紀に引き渡してきたので安心して下さって大丈夫ですよ。」
「あ、ありがとうございます」
害獣って、この人なにげに毒舌だよね。まあ実際その通りなんだけどさ。
「いえいえ。それより…」
そう言って黒い笑みを浮かべる。なんだろう。嫌な予感しかしない。
「貴方、冥府のメンバーですよね?」
その瞬間、周りの温度が一気に下がった気がした。
∼*。✧*·°。✯✯✯。°·*✧。*∼
この作品を読んでくださり、ありがとうございます!
更新遅くなってすみませんm(_ _;)m
遅くなることもありますが、完結まで更新を続ける予定なので今後もよろしくお願いします。
11話の最後辺りを少し編集しています。この後の展開には編集した部分が少し関係してくるので少し違和感はあるかもしれませんが、読まなくても大丈夫です。
すみません_(_^_)_
157
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です
俺が総受けって何かの間違いですよね?
彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。
17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。
ここで俺は青春と愛情を感じてみたい!
ひっそりと平和な日常を送ります。
待って!俺ってモブだよね…??
女神様が言ってた話では…
このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!?
俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!!
平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣)
女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね?
モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。
生徒会長親衛隊長を辞めたい!
佳奈
BL
私立黎明学園という全寮制男子校に通っている鮎川頼は幼なじみの生徒会長の親衛隊長をしている。
その役職により頼は全校生徒から嫌われていたがなんだかんだ平和に過ごしていた。
しかし季節外れの転校生の出現により大混乱発生
面倒事には関わりたくないけどいろんなことに巻き込まれてしまう嫌われ親衛隊長の総愛され物語!
嫌われ要素は少なめです。タイトル回収まで気持ち長いかもしれません。
一旦考えているところまで不定期更新です。ちょくちょく手直ししながら更新したいと思います。
*王道学園の設定を使用してるため設定や名称などが被りますが他作品などとは関係ありません。全てフィクションです。
素人の文のため暖かい目で見ていただけると幸いです。よろしくお願いします。
不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う
らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。
唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。
そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。
いったいどうなる!?
[強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。
※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。
※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。
王道学園なのに、王道じゃない!!
主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。
レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…
顔だけが取り柄の俺、それさえもひたすら隠し通してみせる!!
彩ノ華
BL
顔だけが取り柄の俺だけど…
…平凡に暮らしたいので隠し通してみせる!!
登場人物×恋には無自覚な主人公
※溺愛
❀気ままに投稿
❀ゆるゆる更新
❀文字数が多い時もあれば少ない時もある、それが人生や。知らんけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる