王道学園の会計補佐

からくり箱

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突然の訪問者

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駆け込んだ自室のドアをバタンッと勢いよく閉め、乱れた呼吸を整える。連れ込まれていた体育館の物置は寮とそこそこ離れており、おまけに出るとき時間を確認すると授業が終わる少し前で、急いで帰ってきたため結構疲れた。

幸い身に着けていた時計とポケットに入れていたスマホやマイカなどは取られていなかったから良かったが、生徒会の仕事用のパソコンを入れた鞄は連れ込まれる際落としてしまったようだ。物置を出る前に一応部屋の中を探したが無かったから、おそらく置きっぱなしになっているのだろう。後で取りに行かなきゃな…。

まあ、もし誰かが持って行ったところでセキュリティは厳重にしてあるから、ファイルを開くどころかアカウントにログインすることすらできないだろう。それにGPS機能のおかげで場所はすぐに分かるし、壊されてもデータは復元できる。スマホにも入ってるしね。
なにかあっても特に問題ないだろうと思い、取りあえず先に手首の縄を取ることにした。取る前に先ずはナイフを発掘しなきゃいけないんだけど。普段使わないから何処にあるか分かんないし。なんならそれに1時間は使うかもだな。








コンコンコンッ


ナイフを探していると、ドアをノックする音が聞こえてきた。……のだが、今日誰かが訪ねてくる予定はなかったはずだ。というより毎日ない。そもそも、棚いっぱいにbl本やblゲームやらを置いているような腐男子の巣に人を招けるわけがないのだ。こんな部屋見られたら確実に引かれる自信あるし。
俺が腐男子だと知っているのは家族と幼馴染だけであって、学園の生徒は生徒会役員含め誰も知らない。ああ、勿論教師もね。

話が逸れたが、じゃあ訪ねて来たのは誰なのかという話なわけで。このフロアは生徒会役員専用だから、このフロアに入れてる時点で生徒会役員もしくは学園内でそれなりの立場にいる教師なのは間違いない。どちらにしても訪ねてくる理由に心当たりは全く無いが。

手首の縄はまだ取れてない。
このまま出るのはかなり気まずいし、居留守を使っちゃだめだろうか…。


コンコンコンコンッ


出るか……これ部屋にいるのバレてるかもだし。










「どちら様で……副会長?」

ドアを開けた先にいたのは副会長だった。少し前に別れたばかりなんだけどな。何かあったのだろうか。



「すみません、伝え忘れていたことがありまして。それと、貴方の鞄が落ちていたので届けに」

そう言って渡されたのは、後で取りに行こうと思っていたパソコン入りの鞄だった。


「あ、これ!ありがとうございます!!」

わざわざ持ってきてくれたのか。ここまでそこそこ距離あるから大変だっただろうに。最悪の場合、盗られたり壊されたりすることを考えていたので、かなりありがたい。副会長様々だ。




「ところで…」

何かを言いかける副会長になんだろうと目を向けると、俺の手元ををジッと見ていることに気がついた。
ああ、なるほど。
多分、言おうとしているのは縄のことだろう。
まあ普通、訪ねた相手が手首を縄で縛った状態で出てきたら驚くし、何してるのか聞きたくなるだろう。俺だってそうだし。だからそれは理解できるんだけど…やっぱ気まずい。


「あーえっと、これはちょっとハプニングがあっただけで、その、そういう趣味があるわけじゃないので!!」

「ええ、それは知ってます」


テンパって余計なことまで言ってしまったなと思っていたら、まさかの知ってると即答された。


「野放しにされた害獣に襲われかけたんですよね?偶然見かけまして。ああ、害獣はちゃんと風紀に引き渡してきたので安心して下さって大丈夫ですよ。」

「あ、ありがとうございます」

害獣って、この人なにげに毒舌だよね。まあ実際その通りなんだけどさ。


「いえいえ。それより…」

そう言って黒い笑みを浮かべる。なんだろう。嫌な予感しかしない。





「貴方、冥府のメンバーですよね?」








その瞬間、周りの温度が一気に下がった気がした。







∼*。✧*·°。✯✯✯。°·*✧。*∼

この作品を読んでくださり、ありがとうございます!
更新遅くなってすみませんm(_ _;)m
遅くなることもありますが、完結まで更新を続ける予定なので今後もよろしくお願いします。

11話の最後辺りを少し編集しています。この後の展開には編集した部分が少し関係してくるので少し違和感はあるかもしれませんが、読まなくても大丈夫です。
すみません_(_^_)_






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