20 / 28
ドロシーには指一本触れさせない
しおりを挟む
「では、ここが君の仕事場ですから。しっかりと仕事はしてくださいね」
「……わかってる」
俺はディランの話を受けることに決めて、帝国のとある場所にある工房でブライアー家に武器を作ることになった。やっぱりドロシーに何かされる恐れがある以上、俺がこの要求を呑む以外の選択肢は考えられなかったから。
もちろん、このまま黙っていうことを聞き続けるつもりは毛頭ないが。
「ちゃんと仕事をした分の成果はしっかりお支払いしますから。もちろん、あなたが粗末な武器を作れば……どうなるかはわかっていますよね?」
「……ああ。てめぇらには絶対ドロシーに指一本触れさせないからな」
「随分と強い口調で言ってくれますね。まぁ、せいぜい良い武器を作り続けてください。そしたらお互いにとっても良いですからね。では、私はこれで」
嫌味ったらしく下手なことをしたらドロシーに危害を加えるぞと脅して、ディランはその場から去っていった。
「……作るか」
とにかく、今はさっさと武器を作って仕事を終わらすことが優先だ。普段とは違ってドロシーと離れたところで武器を作らないといけないから、正直早くドロシーに会いたい気持ちが強い。
ドロシーが本当に大丈夫なのかっていう心配はもちろんあるけど、それ以上に……俺はドロシーと一緒にいたい。ドロシーと一緒にいると俺の心も落ち着くし、何より一緒にいて楽しいから。
そんな幸せをぶち壊されないためにも、この難局は絶対に乗り切らないと。
「それにしても、素材が一級品しかないな。金がありあまってんのか?」
武器を作っている最中に、ふとそんなことを思った。なにせここにあるのは手に入れるのが難しいものばかりで、なかなか手に入れることができないものだからだ。貴族だから金があるのはわかるんだけど、それにしたって揃いすぎている気がする。帝国と繋がっているからか? それとも、何か薄汚い金で買ったものなのか?
まぁ、少なくとも正当な方法で手に入れたものではなさそうだ。そこを辿ればディランの弱みを握れるのかもしれないが……下手に動き回ってドロシーに危害が及ぶことになるのは困る。とにかく今は辛抱の時、あいつがボロを出すまで耐え抜くしかない。
「ほら、できたぞ」
そしてようやく依頼されていた分の武器を作り終えて、それを監視しているやつに渡す。もしかしたらもっと作れとか脅されるのかと思っていたが、そう言ったこともなく素直に帰してもらえた。とにかく良い武器を作ればそれで良いのかもしれない。
「……ドロシー」
帰りの馬車の中で、俺はずっとドロシーのことを考え続けていた。やっぱり心配なんだよ、ドロシーが無事かどうかが。今の俺にとって、ドロシーは心の支えと言っても過言ではないし。どうか何事もなく、ドロシーにおかえりと言ってもらいたい。ただ、それだけを願い続けていた。
「……ドロシー!」
「エリック! おかえり……!」
家に着くと、ドロシーは外で俺のことを待ってくれていたようで、俺たちはぎゅっとお互いに抱きしめあいながらお互いの温もりを感じあう。良かった、本当に良かった……。
「エリックが無事で良かった……。お兄様に、酷いことされているんじゃないかって心配で……」
「それは俺もだよ、ドロシー。……ご飯食べようか。二人で美味しいもの、たくさん作ろう」
「うん! あ、でも……」
「ど、どうした? な、何かあったのか?」
「こ、コレットさんもいるから、三人だなぁって」
「あ」
「そうだよ、私いるから」
そうだった、コレットがドロシーのこと見守ってくれてたんだ。あまりにドロシーのことが心配で、つい忘れてしまってた……。
「す、すまんコレット。それじゃあ、三人で一緒に食べよう」
そんなわけで俺たちは三人で夕飯を作って、至福の日常を過ごした。
「……わかってる」
俺はディランの話を受けることに決めて、帝国のとある場所にある工房でブライアー家に武器を作ることになった。やっぱりドロシーに何かされる恐れがある以上、俺がこの要求を呑む以外の選択肢は考えられなかったから。
もちろん、このまま黙っていうことを聞き続けるつもりは毛頭ないが。
「ちゃんと仕事をした分の成果はしっかりお支払いしますから。もちろん、あなたが粗末な武器を作れば……どうなるかはわかっていますよね?」
「……ああ。てめぇらには絶対ドロシーに指一本触れさせないからな」
「随分と強い口調で言ってくれますね。まぁ、せいぜい良い武器を作り続けてください。そしたらお互いにとっても良いですからね。では、私はこれで」
嫌味ったらしく下手なことをしたらドロシーに危害を加えるぞと脅して、ディランはその場から去っていった。
「……作るか」
とにかく、今はさっさと武器を作って仕事を終わらすことが優先だ。普段とは違ってドロシーと離れたところで武器を作らないといけないから、正直早くドロシーに会いたい気持ちが強い。
ドロシーが本当に大丈夫なのかっていう心配はもちろんあるけど、それ以上に……俺はドロシーと一緒にいたい。ドロシーと一緒にいると俺の心も落ち着くし、何より一緒にいて楽しいから。
そんな幸せをぶち壊されないためにも、この難局は絶対に乗り切らないと。
「それにしても、素材が一級品しかないな。金がありあまってんのか?」
武器を作っている最中に、ふとそんなことを思った。なにせここにあるのは手に入れるのが難しいものばかりで、なかなか手に入れることができないものだからだ。貴族だから金があるのはわかるんだけど、それにしたって揃いすぎている気がする。帝国と繋がっているからか? それとも、何か薄汚い金で買ったものなのか?
まぁ、少なくとも正当な方法で手に入れたものではなさそうだ。そこを辿ればディランの弱みを握れるのかもしれないが……下手に動き回ってドロシーに危害が及ぶことになるのは困る。とにかく今は辛抱の時、あいつがボロを出すまで耐え抜くしかない。
「ほら、できたぞ」
そしてようやく依頼されていた分の武器を作り終えて、それを監視しているやつに渡す。もしかしたらもっと作れとか脅されるのかと思っていたが、そう言ったこともなく素直に帰してもらえた。とにかく良い武器を作ればそれで良いのかもしれない。
「……ドロシー」
帰りの馬車の中で、俺はずっとドロシーのことを考え続けていた。やっぱり心配なんだよ、ドロシーが無事かどうかが。今の俺にとって、ドロシーは心の支えと言っても過言ではないし。どうか何事もなく、ドロシーにおかえりと言ってもらいたい。ただ、それだけを願い続けていた。
「……ドロシー!」
「エリック! おかえり……!」
家に着くと、ドロシーは外で俺のことを待ってくれていたようで、俺たちはぎゅっとお互いに抱きしめあいながらお互いの温もりを感じあう。良かった、本当に良かった……。
「エリックが無事で良かった……。お兄様に、酷いことされているんじゃないかって心配で……」
「それは俺もだよ、ドロシー。……ご飯食べようか。二人で美味しいもの、たくさん作ろう」
「うん! あ、でも……」
「ど、どうした? な、何かあったのか?」
「こ、コレットさんもいるから、三人だなぁって」
「あ」
「そうだよ、私いるから」
そうだった、コレットがドロシーのこと見守ってくれてたんだ。あまりにドロシーのことが心配で、つい忘れてしまってた……。
「す、すまんコレット。それじゃあ、三人で一緒に食べよう」
そんなわけで俺たちは三人で夕飯を作って、至福の日常を過ごした。
0
お気に入りに追加
279
あなたにおすすめの小説
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる