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竜将軍大会第六回戦・決勝:不死身のクルシュ VS 無傷のアルハザット
・決勝戦:VS正体不明のアルハザット - クレイモアの嵐 -
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「準備はいいわねっっ、始めるわよっっ!! 竜将大会決勝戦!! これより試合、開始よっっ!!!」
銅鑼の鐘が鳴り響くと、彫像のように動かなかった敵が大地を蹴った。
鈍重だ。だがその一歩一歩が大地を揺らし、トラックのようにこちらへと突っ込んでくる。
2メートル半はあろう巨大なクレイモアが、薙ぎ払いで繰り出されて、私は飛び退き、鎧の隙間に反撃の突きを入れた。
「ま、そう簡単にはいかねぇか」
私の突きはやつの籠手に受け流された。
反撃を受ける前に私は正面突破で距離を取った。
私の背中の後ろを、長く荒々しいクレイモアが通り過ぎた。
一撃一撃が当たれば即死の超破壊力。
だいぶスリルのある相手だった。
「おおっとアルハザット選手速いっ!!! こんな力を隠していたなんて、本命狙いの皆さまは冷や汗ものねーっっ!!!」
アルハザットは鉄壁の守りを逆手に取って武器にして、私に猛攻を仕掛けてくる。
あのクレイモアを刀で受け止めようとすれば、あまりよくない未来が待っていることだろう。
まともに受け止めてはならないそれらを私は受け流し、隙を突いては鎧の隙間を狙った。
決勝戦までやってきた猛者だけあって、アルハザットは私の望むようにはさせてくれなかった。
「ちったぁなんか喋れよっ、辛気くせぇ!!」
「そーよそーよっ、盛り上げなさいよ、アルハザット選手!! 決勝戦なのよーっ、これーっ?!!!」
想像力豊かな私は疑った。
この男はロボットか何かなのではないか、と。
それほどにアルハザットの剣術は豪快ながら洗練されており、異常な反応速度と緻密さで私の攻撃を装甲で防ぐ。
そして何よりも、これほどの重装備だというのに、アルハザットは息一つ乱していなかった。
「なんなんだ、コイツ、あり得ん……」
アルハザットが再び動いた。
クレイモアの乱舞が私を闘技場の壁に追い込もうとした。
しかし私はイーラジュ様を相手にしてきた男だ。
剛剣の相手には慣れていた。
私は無理なモーションで甘くなった薙ぎ払いを頭の上で受け流し、滑り込むようにやつの懐に入った。
「刀が効かねぇならっ、これでどうだよっっ!!」
私はムエタイ選手のように跳ね上がり、右膝蹴りをアルハザットの顎に叩き込んだ。
するとグラリとの巨体が揺れる。
その絶好の機会を利用して股の下をくぐり抜けると、鎧とプレートグリーブの隙間に刀を突き立てた。
「な……っ、なんだ、コイツ……?!」
あのクレイモアを叩き込まれる前に距離を取った。
アルハザットはあの全身鎧の下に、石のように硬い何かをまとっている。
刀の切っ先を確かめると、そこには黒い煤のような物が付いていた。
「オ、オオ……ウ、オオオオ……」
「な、なんだよっ?!」
アルハザットの全身が小刻みに震えている。
その肉声はまるで亡霊のうめきのようで、とにかくもう気味が悪い。
酷く苦しそうにヤツは頭を抱え、苦悶に身をよじらせた。
「タ、タスケ……テ……」
え……?
なんか……怖い……。
助けてと言われてもすまないがご遠慮しまい。何せ不気味すぎる。
「コ……ロ……コロ……シ……テ…………ゴロ、ヂデ、グレェェ……」
「」
ス、スーパーヒーローは幽霊なんて怖くない!!
まるで悪霊に憑り付かれているような奇怪な動きだが、足は生えている!
足が生えてりゃ幽霊でも斬れる! きっと!
と、思ったところでアルハザットの震えが止まった。
しかし同時に、私はもっと奇怪な物を見てしまった。
「お、おい……それ、血……なのか……?」
私が貫いた脚部から、ろくにメンテナンスされてこなかった車のエンジンオイルみたいな真っ黒な液体が闘技場に床に水たまりを作っていた。
しかもその水たまりは沸騰しており、蒸発したものが黒い煤となって辺りに広がっている。
「……この姿では、勝てぬか」
その鋼鉄の騎士は突然正気に戻ってそう言うと、私に背中を向けた。
ヤツは試合中に、あろうことか対戦相手に無防備をさらした上に、天を見上げた。
天には我らの聖帝、ジントが座す貴賓席があった。
「不公平だ……」
「おい、何を言ってやがるっ、こっち向きやがれっ!!」
「我らを育みし偉大なる神々よ……。なぜ、地上の民ばかりを貴方方は愛する……。なぜ、この我々を愛して下さらない……」
神? 地上の民?
こいつ、まさか……。
「食べたい……食べたくて、たまらない……。ああ、聖帝ジント……偉大なる神様の中の神様……食べたい……」
どうやって地上に出てきたかはわからない。
だがその言質から推理できる正体はたった一つ。
「イーラジュッッ!!!」
私は天に召します最強の守護者に叫んだ。
守護者は私の叫びに呼応し居合いの構えとなった。
アルハザットの狙いは聖帝だ。
遙か天上の貴賓席をめがけて、ネズミ返しになっている壁を怖ろしい勢いで這い上がった。
「墜ちろっっ!!」
イーラジュ様がそれを叩き落とした。
アルハザットは大地に墜落し、イーラジュ様の乱舞をその身に受けた。
信じられない……。
イーラジュ様の乱舞は鋼鉄の鎧をバラバラにしてしまった。
そしてその鎧の中にいた生物もまた、とても信じられない姿をしていた。
これがもう一つの新人類、その成れの果て。
聖帝が地底に封じ込め続けてきたその新人類は、全身に鱗と、頭に大きな一つ目を持っていた。
到底、もはやこんなものは人とは言えない。
銅鑼の鐘が鳴り響くと、彫像のように動かなかった敵が大地を蹴った。
鈍重だ。だがその一歩一歩が大地を揺らし、トラックのようにこちらへと突っ込んでくる。
2メートル半はあろう巨大なクレイモアが、薙ぎ払いで繰り出されて、私は飛び退き、鎧の隙間に反撃の突きを入れた。
「ま、そう簡単にはいかねぇか」
私の突きはやつの籠手に受け流された。
反撃を受ける前に私は正面突破で距離を取った。
私の背中の後ろを、長く荒々しいクレイモアが通り過ぎた。
一撃一撃が当たれば即死の超破壊力。
だいぶスリルのある相手だった。
「おおっとアルハザット選手速いっ!!! こんな力を隠していたなんて、本命狙いの皆さまは冷や汗ものねーっっ!!!」
アルハザットは鉄壁の守りを逆手に取って武器にして、私に猛攻を仕掛けてくる。
あのクレイモアを刀で受け止めようとすれば、あまりよくない未来が待っていることだろう。
まともに受け止めてはならないそれらを私は受け流し、隙を突いては鎧の隙間を狙った。
決勝戦までやってきた猛者だけあって、アルハザットは私の望むようにはさせてくれなかった。
「ちったぁなんか喋れよっ、辛気くせぇ!!」
「そーよそーよっ、盛り上げなさいよ、アルハザット選手!! 決勝戦なのよーっ、これーっ?!!!」
想像力豊かな私は疑った。
この男はロボットか何かなのではないか、と。
それほどにアルハザットの剣術は豪快ながら洗練されており、異常な反応速度と緻密さで私の攻撃を装甲で防ぐ。
そして何よりも、これほどの重装備だというのに、アルハザットは息一つ乱していなかった。
「なんなんだ、コイツ、あり得ん……」
アルハザットが再び動いた。
クレイモアの乱舞が私を闘技場の壁に追い込もうとした。
しかし私はイーラジュ様を相手にしてきた男だ。
剛剣の相手には慣れていた。
私は無理なモーションで甘くなった薙ぎ払いを頭の上で受け流し、滑り込むようにやつの懐に入った。
「刀が効かねぇならっ、これでどうだよっっ!!」
私はムエタイ選手のように跳ね上がり、右膝蹴りをアルハザットの顎に叩き込んだ。
するとグラリとの巨体が揺れる。
その絶好の機会を利用して股の下をくぐり抜けると、鎧とプレートグリーブの隙間に刀を突き立てた。
「な……っ、なんだ、コイツ……?!」
あのクレイモアを叩き込まれる前に距離を取った。
アルハザットはあの全身鎧の下に、石のように硬い何かをまとっている。
刀の切っ先を確かめると、そこには黒い煤のような物が付いていた。
「オ、オオ……ウ、オオオオ……」
「な、なんだよっ?!」
アルハザットの全身が小刻みに震えている。
その肉声はまるで亡霊のうめきのようで、とにかくもう気味が悪い。
酷く苦しそうにヤツは頭を抱え、苦悶に身をよじらせた。
「タ、タスケ……テ……」
え……?
なんか……怖い……。
助けてと言われてもすまないがご遠慮しまい。何せ不気味すぎる。
「コ……ロ……コロ……シ……テ…………ゴロ、ヂデ、グレェェ……」
「」
ス、スーパーヒーローは幽霊なんて怖くない!!
まるで悪霊に憑り付かれているような奇怪な動きだが、足は生えている!
足が生えてりゃ幽霊でも斬れる! きっと!
と、思ったところでアルハザットの震えが止まった。
しかし同時に、私はもっと奇怪な物を見てしまった。
「お、おい……それ、血……なのか……?」
私が貫いた脚部から、ろくにメンテナンスされてこなかった車のエンジンオイルみたいな真っ黒な液体が闘技場に床に水たまりを作っていた。
しかもその水たまりは沸騰しており、蒸発したものが黒い煤となって辺りに広がっている。
「……この姿では、勝てぬか」
その鋼鉄の騎士は突然正気に戻ってそう言うと、私に背中を向けた。
ヤツは試合中に、あろうことか対戦相手に無防備をさらした上に、天を見上げた。
天には我らの聖帝、ジントが座す貴賓席があった。
「不公平だ……」
「おい、何を言ってやがるっ、こっち向きやがれっ!!」
「我らを育みし偉大なる神々よ……。なぜ、地上の民ばかりを貴方方は愛する……。なぜ、この我々を愛して下さらない……」
神? 地上の民?
こいつ、まさか……。
「食べたい……食べたくて、たまらない……。ああ、聖帝ジント……偉大なる神様の中の神様……食べたい……」
どうやって地上に出てきたかはわからない。
だがその言質から推理できる正体はたった一つ。
「イーラジュッッ!!!」
私は天に召します最強の守護者に叫んだ。
守護者は私の叫びに呼応し居合いの構えとなった。
アルハザットの狙いは聖帝だ。
遙か天上の貴賓席をめがけて、ネズミ返しになっている壁を怖ろしい勢いで這い上がった。
「墜ちろっっ!!」
イーラジュ様がそれを叩き落とした。
アルハザットは大地に墜落し、イーラジュ様の乱舞をその身に受けた。
信じられない……。
イーラジュ様の乱舞は鋼鉄の鎧をバラバラにしてしまった。
そしてその鎧の中にいた生物もまた、とても信じられない姿をしていた。
これがもう一つの新人類、その成れの果て。
聖帝が地底に封じ込め続けてきたその新人類は、全身に鱗と、頭に大きな一つ目を持っていた。
到底、もはやこんなものは人とは言えない。
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