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竜将軍大会第六回戦・決勝:不死身のクルシュ VS 無傷のアルハザット
・大本命クルシュのお祭り騒ぎの入場パレード
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夜が明け、決勝戦の日がやってきた。
今日の私のコンディションは絶好調。
肉体、精神とも申し分なく充実している。
今日はティティスの遅刻もなく、小心者のカロン先生もティティスが首に縄を付けて引っ張ってきてくれた。
これにより私は両手と背中に花。
さらに左後ろに阿修羅。右後ろに恵比寿様を連れて、イーラジュ邸を出立することになった。
ちなみに阿修羅はソウジン殿、恵比寿様は大商人にして貴族ホスロー殿である。
「お待ちしておりました。では、応援に参りましょうか、ナフィ様」
「昨晩はお騒がせしたな。お前の試合、今日はしかと見届けさせてもらう」
武家街の茶屋の前を通ると、ヒビキさんとナフィが合流した。
二人の合流にココロさんもティティスも嬉しそうだった。
「あの星が見えるか、あんちゃん? あれこそが巨人の星。俺たちベースボーラーの魂は、最期はあそこを目指して昇天すんだってよ……」
「昼間に星なんて見えるかよ……」
橋の前にやってくると、一回戦の対戦相手だったバース・マルティネスが人の迷惑も考えずに、橋の手すりの上で素振りをしていた。
バースは勝手に私たちの後をついてきた。
「あっ、きたよ、ナギ!」
「やっとご登場か。やあ、クルシュ! 君のおかげでボクらあれからラブラブだよっ! 今日の試合、ボクも応援させてもらうよ!」
華やかな宿屋町を横切ると、三回戦の相手だったナルギスとハディージャが私を待っていた。
「試合前にイチャイチャすんな、気が散るだろ……」
「だったら君も彼女を作ればいい! ああ、ハディージャ!」
「ナギ……ダメよ、人が見ているわ……っ」
「ふっ、恥ずかしいのかい……? 男どもに見せつけてやろう、君の美しさを!」
彼らは的確に私の戦意を削ぎつつ、断りもなく後ろを付いてきた。
大闘技場を目指してさらに北へ進むと、女性たちの集団が大通りの左右を埋め尽くしていた。
しかし私たちが通る隙間が中央に残されており、その中央には見知った男が立っていた。
「僕はキョウの太陽、君は星さ」
「いや、意味わかんねーよ……」
しれっと人を星にして、自分が太陽ぶるところがさすがのロシュ・ジャリマフである。
「僕と僕のファンたちが君を闘技場まで送ろう。いや、君のおかげで、最近絶好調でね。演技の輝きが増したと皆が言ってくれる」
「……ま、いいか。じゃあ頼んだ。いっそ派手に頼むぜ!」
「ああっ、お祭り騒ぎならこのロシュ・ジャリマフに任せてくれ!!」
ロシュは私の20メートルほど先を歩いた。
そしてその背後の行列の最前列にいる私に、自分に集まった人々の視線を誘導する。
さながら今日のロシュは、チョウチンアンコウの発光器官だった。
たかが闘技場への入場が、とんでもない大パレードに発展していった。
とてつもない熱狂が行く先々に沸き起こり、キョウの民はクルシュの優勝を願ってくれた。
いったいどれだけの金が私に賭けられているのやら、想像すると恐ろしくもあった。
「さすがに、恥ずかしいですね……」
「前代未聞だよ、こんなのーっ! 自分が倒してきた選手にさっ、入場をエスコートされるとかさっ、熱いよこれっ! クルシュやるじゃん!」
私たちは闘技場のレッドカーペットの前までやってくると、そこで行進を停止させた。
「星になれっ、星になってこい、あんちゃんっ!!」
「たとえ相手がどんな奥の手を隠していようと、君の勝利への渇望が栄光に導いてくれる。ハディージャと見守っているよ」
「いやぁ、楽しかった! これもまた一つの演劇の形の一つなのだろうな! 後は君が勝ってくれたら申し分ない。がんばってくれ」
「勝てば屋敷で酒宴だ、待っているぞ。まあ、負傷中のイーラジュ様に酒は飲ませられないが、その分は我々で飲むとしよう」
私はかつての対戦相手に激励され、両手と背中に花を抱えてレッドカーペットから堂々と入場した。
左右から届く熱い激励が私を奮い立たせてくれた。
受付の前にやってくると、イーラジュ様が腹に包帯を巻いて私を待っていた。
この男がわざわざこんなことをするなんて、いよいよ決勝戦である実感がわいてきた。
「今のオメェなら順当に勝てる相手だとは思うんだが、世の中何が起こるかわかんねぇ」
「おう、油断する気はねぇぜ」
「へっ、マシな顔するようになったじゃねぇか。……とにかく勝ち上がって、将となり、俺に楽させてくれよな」
「師匠までそんなことを……。将軍になんて興味ない」
「なぁに、尻に火が点きゃ気も変わる。とにかく勝って、地上最強の男となりな」
イーラジュ様は聖帝に作られた究極の生物兵器。
勝てなくて当たり前の存在だ。
「師匠がいる。師匠に勝たなきゃ最強にはなれん」
「俺の正体、知ってんだろ……? 俺は竜将大会の舞台に立つ資格なんてねぇのさ。だから、これに勝ったら、お前が最強になんだよ」
「だが、本当の最強は師匠だ。いつか追い越してやる」
「そうかい、そりゃ楽しみにしてんぜ!」
私は一歩進み、後ろのティティス、ココロさん、カロン先生に振り返った。
「行ってきます。どうか応援、よろしくお願いします」
この催しも今日で終わり。
そう考えると物寂しい。
「例の話は編集長様が聞いてるべ! 応援しとるべ!」
「忘れないでよ、あの話! もうその予定で計画組み直してるんだから!」
「クルシュ様ならば必ず勝てます。私、クルシュ様の努力を知っていますから……!」
闘志が増したところで私は感謝を伝えて、西・控え室に向かった。
戦意は十分。過去最高のコンディションだ。
どんな相手だろうと、もはや負ける気などしなかった。
今日の私のコンディションは絶好調。
肉体、精神とも申し分なく充実している。
今日はティティスの遅刻もなく、小心者のカロン先生もティティスが首に縄を付けて引っ張ってきてくれた。
これにより私は両手と背中に花。
さらに左後ろに阿修羅。右後ろに恵比寿様を連れて、イーラジュ邸を出立することになった。
ちなみに阿修羅はソウジン殿、恵比寿様は大商人にして貴族ホスロー殿である。
「お待ちしておりました。では、応援に参りましょうか、ナフィ様」
「昨晩はお騒がせしたな。お前の試合、今日はしかと見届けさせてもらう」
武家街の茶屋の前を通ると、ヒビキさんとナフィが合流した。
二人の合流にココロさんもティティスも嬉しそうだった。
「あの星が見えるか、あんちゃん? あれこそが巨人の星。俺たちベースボーラーの魂は、最期はあそこを目指して昇天すんだってよ……」
「昼間に星なんて見えるかよ……」
橋の前にやってくると、一回戦の対戦相手だったバース・マルティネスが人の迷惑も考えずに、橋の手すりの上で素振りをしていた。
バースは勝手に私たちの後をついてきた。
「あっ、きたよ、ナギ!」
「やっとご登場か。やあ、クルシュ! 君のおかげでボクらあれからラブラブだよっ! 今日の試合、ボクも応援させてもらうよ!」
華やかな宿屋町を横切ると、三回戦の相手だったナルギスとハディージャが私を待っていた。
「試合前にイチャイチャすんな、気が散るだろ……」
「だったら君も彼女を作ればいい! ああ、ハディージャ!」
「ナギ……ダメよ、人が見ているわ……っ」
「ふっ、恥ずかしいのかい……? 男どもに見せつけてやろう、君の美しさを!」
彼らは的確に私の戦意を削ぎつつ、断りもなく後ろを付いてきた。
大闘技場を目指してさらに北へ進むと、女性たちの集団が大通りの左右を埋め尽くしていた。
しかし私たちが通る隙間が中央に残されており、その中央には見知った男が立っていた。
「僕はキョウの太陽、君は星さ」
「いや、意味わかんねーよ……」
しれっと人を星にして、自分が太陽ぶるところがさすがのロシュ・ジャリマフである。
「僕と僕のファンたちが君を闘技場まで送ろう。いや、君のおかげで、最近絶好調でね。演技の輝きが増したと皆が言ってくれる」
「……ま、いいか。じゃあ頼んだ。いっそ派手に頼むぜ!」
「ああっ、お祭り騒ぎならこのロシュ・ジャリマフに任せてくれ!!」
ロシュは私の20メートルほど先を歩いた。
そしてその背後の行列の最前列にいる私に、自分に集まった人々の視線を誘導する。
さながら今日のロシュは、チョウチンアンコウの発光器官だった。
たかが闘技場への入場が、とんでもない大パレードに発展していった。
とてつもない熱狂が行く先々に沸き起こり、キョウの民はクルシュの優勝を願ってくれた。
いったいどれだけの金が私に賭けられているのやら、想像すると恐ろしくもあった。
「さすがに、恥ずかしいですね……」
「前代未聞だよ、こんなのーっ! 自分が倒してきた選手にさっ、入場をエスコートされるとかさっ、熱いよこれっ! クルシュやるじゃん!」
私たちは闘技場のレッドカーペットの前までやってくると、そこで行進を停止させた。
「星になれっ、星になってこい、あんちゃんっ!!」
「たとえ相手がどんな奥の手を隠していようと、君の勝利への渇望が栄光に導いてくれる。ハディージャと見守っているよ」
「いやぁ、楽しかった! これもまた一つの演劇の形の一つなのだろうな! 後は君が勝ってくれたら申し分ない。がんばってくれ」
「勝てば屋敷で酒宴だ、待っているぞ。まあ、負傷中のイーラジュ様に酒は飲ませられないが、その分は我々で飲むとしよう」
私はかつての対戦相手に激励され、両手と背中に花を抱えてレッドカーペットから堂々と入場した。
左右から届く熱い激励が私を奮い立たせてくれた。
受付の前にやってくると、イーラジュ様が腹に包帯を巻いて私を待っていた。
この男がわざわざこんなことをするなんて、いよいよ決勝戦である実感がわいてきた。
「今のオメェなら順当に勝てる相手だとは思うんだが、世の中何が起こるかわかんねぇ」
「おう、油断する気はねぇぜ」
「へっ、マシな顔するようになったじゃねぇか。……とにかく勝ち上がって、将となり、俺に楽させてくれよな」
「師匠までそんなことを……。将軍になんて興味ない」
「なぁに、尻に火が点きゃ気も変わる。とにかく勝って、地上最強の男となりな」
イーラジュ様は聖帝に作られた究極の生物兵器。
勝てなくて当たり前の存在だ。
「師匠がいる。師匠に勝たなきゃ最強にはなれん」
「俺の正体、知ってんだろ……? 俺は竜将大会の舞台に立つ資格なんてねぇのさ。だから、これに勝ったら、お前が最強になんだよ」
「だが、本当の最強は師匠だ。いつか追い越してやる」
「そうかい、そりゃ楽しみにしてんぜ!」
私は一歩進み、後ろのティティス、ココロさん、カロン先生に振り返った。
「行ってきます。どうか応援、よろしくお願いします」
この催しも今日で終わり。
そう考えると物寂しい。
「例の話は編集長様が聞いてるべ! 応援しとるべ!」
「忘れないでよ、あの話! もうその予定で計画組み直してるんだから!」
「クルシュ様ならば必ず勝てます。私、クルシュ様の努力を知っていますから……!」
闘志が増したところで私は感謝を伝えて、西・控え室に向かった。
戦意は十分。過去最高のコンディションだ。
どんな相手だろうと、もはや負ける気などしなかった。
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