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第二章 アーディル十歳

方向性を間違えている

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[アルヴィン視点]

「フィルと釣り合うにはどうすれば良いでしょうか?」

   ある日、真剣な顔でアーディル様にそう聞かれた。

    ハッキリ言って、意味が分からない。釣り合うも何も婚約してるし、両想いみたいだし、そもそも何の釣り合いなんだか、見当もつかない。

「いや、僕に聞かれても困るんですが…」

    相談されても最終的に惚気になるので、正直聞きたくない。まして、相手は前世も今世も自分の妹。二度目の生を自由に謳歌しているのだ。お互い、過干渉にはなりたくない。

「……アルはフィルと双子の兄妹ではないですか!」

「いや。双子だからって、何でも分かりあってるわけないですからね?」

    僕の返答に、アーディル様は口を尖らせる。

    いやいや、そんな顔されたって、アーディル様の言いたいこと分からないんだから、仕方ないと思うんだけど…。

「そもそも。釣り合うにはって、何の釣り合いですか?身分なら問題ないし、年だって問題ないですよね?」

    これで身長なんて答えが返されたら、しばらく来ないことにしようと思いながら聞いてみた。

「何を言ってるんですか、アル!問題だらけですよ!!」

    バンとテーブルを両手で叩きながら、立ち上がったアーディル様は、僕の隣までやって来た。

「いいですか。まず一つ。フィルはとんでもなく可愛いのです!」

「………」

   口から魂が抜けていきそうな予感がした。

「その可愛さを周りに伝えつつ、私以外がフィルと並ぶのは相応しくないと思わせなければなりません…」

    いや、両想いなんだから、気にしなくてもいいのでは?

    そう思ったけれど、口にしたら長引くだろうと、グッと堪えた。

「さらにもう一つはフィルの聡明さです!あの知的な瞳と、他者への落ち着いた対応。完璧では無いですか!?」

    知的な瞳?僕には小馬鹿にしているようにしか見えてませんよ?

「そして、最後は気配りです!貴族はもちろん、使用人一人一人の顔と名前まで覚えて、思いやりのある対処の数々。誰もがフィルを欲しがるに決まっているのです!!」

   拳を握りしめて熱く語る殿下にドン引きです。

   そもそもこの婚約は、フィルのみに婚約破棄の権利があるのです。そのフィルが殿下に好意を持っているのだから、周りに気にせずフィルを構えばいいだけのはずです。

「……はぁ。それでアーディル様はどうしたいんですか?」

「そうですね。聡明さは勉強を頑張るとして…。気配り…。そうです、気配りです!!」

   勢いよく立ち上がったアーディル様ですが、何となくイヤな予感がします。

「気配りの練習をします!」

「………」

    気配りの練習って何ですか? 絶対、方向性を間違えている気がしますよ。


    翌日から、アーディル様はメイドや侍女達に声をかけまくり、褒めたり労ったり、むりやり・・・・手伝ったりしました。その結果……。

「ワタクシ、アーディ様に嫌われたようですわ…」

    と、フィルに誤解されてしまい、すれ違いが始まってしまいました。 
    当然です。フィルへの気配りがされてないのですから。

    こうなると思ったよーーーー。







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