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第十三章 生えたのなら刈り取りましょう!

深夜に大騒ぎ

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「リアがいなくなりました!!」

子供部屋で不寝番の担当をしていたステリナは、突然飛び込んでくるなりそう言われて、目が点になった。

「……若様。また怒らせたんですか?」

妊婦相手だと言うのに、甘え倒して乗っかろうとしては、涙目のアリスティリアに叱られて。
口では反省しつつも行動が反省してないと、アリスティリアが怒って寝室を分けるまでがセットであった。
今回もそれかと思っていたのだが、それにしては余りにも顔色が悪い。

「……え?本気でいないんですか?」

「気配も追えないのです……」

いや、追うって何それ、怖い…と思いつつ、そう言えば《気配探知》も持ってたっけなぁ…と気づく。

「そもそも私と居るのに、許可なく邸から出れるはずがありません!」

当初は夫婦の部屋から出れない設定であったが、双方の女親と四大侯家の令嬢達からの猛抗議により《改変》されたが、エヴァンの在宅中は許可なく邸から出れなくされた。
因みに留守中は、侯爵家敷地内のみ移動が自由。外出時には事前にエヴァンの許可が必要となっている。

「言われてみればそうですね…。ところで若様。ここで騒がれると御二方が起きてしまいますので、部屋を移りましょう…」

交替要員である研修生に後を任せ、消えたとされる夫婦の寝室へと入る。

「………アリス様が寝間着のみで移動されるとは思えませんね…」

そうなると誘拐の可能性を疑われるものだが、エヴァンのアリスティリアに対する執着を前に、そんな真似が出来る者など限られている。

ーーまして若様がガッチリ抱いて寝てるのに、抜け出すことも出来ないはずだよねぇ……。

「……喚ばれたんですかね?」

何気なくポツリと呟くと、ガシッと肩を掴まれた。

「ステリナ!ラフィンを呼んでください!!」

目の据わった主からの要請。
ステリナに断るという選択肢は与えられなかった。


********

別邸横にあるカフィルの作業小屋兼我が家に、足を踏み入れたステリナは回れ右をした。

「……逃がさねえよ……」

ハシッと腕を捕まれ、チッと舌打ちをする。
振り返った先には、やつれ切った兄の姿と、オロオロしている父親の姿があった。

ーーあ、これ。完全に喚ばれたっぽい……。

ステリナは、面倒なことになったと思った。
侯爵家の嫁溺愛夫二人が、嫁の不在に落ち着いていられるはずがないのだ。

「…兄さん。アリス様、行方不明…」

その言葉を聞くなり、カルステッドは崩れ落ちた。

「若様。暴走する…。絶対、面倒なことになるのに、止められる母さん不在とか、何それ無理……」

「最悪、フェリテさんいるから……」

兄の側に跪き、肩を叩いて声をかける。

「二人とも、何落ち着いてるんだ!お腹に赤ちゃんいるんだよ!」

「父さん……。アリス様もいなくなってるの。神界あちらに喚ばれたんだと思う……」

「………え?何で、またラフも喚ばれたの?」

愛娘の言葉に落ち着きを取り戻し、子供達が敢えて口にしなかった事を口にした。

「……あ。俺、ヤバいことに気がついた…」

「「……?」」

カルステッドに視線が集まると、彼は側でスヤスヤと眠っている弟を見た。

「妊娠中に神界あっちに身体ごと喚ばれたら、《祝福》貰った上に、もう一つ【ギフト】持って生まれるんじゃなかったっけ?」

「「っ!!」」

痺れを切らしたエヴァンが呼びに来るまで、マティラス一家は固まったのであったーーーー。










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