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第十一章 なりきり、やりきり、これっきり

やりきりました…

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[アリスティリア視点]

痛い、痛い、痛ーーーいっ!!

内臓が引っ張られてるみたいな痛みと、腰を蹴られ続けるような痛みが交互にきます。

「まだ、我慢ですよ!力まないでー」

そんな事言われても、自分でどうにか出来ないです!
《痛覚耐性》が仕事してないです!!

お腹の大きいラフィンさんが、額の汗を拭いてくれてたのしか、覚えてません!!

自分でも何か叫んでる、わたしーーーっ!!

って、状態です。

これ、いつまで続きますかー!?

「頭が見えてきましたよー」

股が物凄く痛いです!
初めての時より痛いぞ!!

「はい、いきんで!」

もう自分の体が自分で制御出来てません…。
何してるか、全然分かりません。

「アリス様、頑張って!」

ステリナの声が聞こえます。

頑張ってますよ!これ以上、どう頑張ったらいいんですか!?

「っ!」

フッと股の間から、何かが抜ける感覚がしました。

「ホ…、ホギャア!ホギャア!」

「若奥様!お世継ぎですよ!元気なお世継ぎが産まれましたよ!!」

フェリテさんの声に、涙が出ました。
無事に産まれたことを喜ぼうとした瞬間でした。

「いっ…!」

また痛みがきました。
そうです!わたし、双子を妊娠してました。
つまり、もう一回あるのです。
泣きたい……。泣いてるけど……。

何とか二人目も出てくれました。

「美人なお嬢様が産まれましたよ!」

ステリナの声に、安堵しました。

「…終わったぁ…」

「まだですよ!後産がありますからね、頑張って!!」

「ーっ!?」

騙されたと思った瞬間でしたーーーー。


※※※※※※※※

[ステリナ視点]

産まれたお子様方を湯で清め、おくるみに包んでフェリテさんと部屋の外へ出ました。

「若様!無事に産まれました…よ……」

扉の外では、床に蹲った若様と伯爵家のご兄弟。
それを気の毒そうに見ている旦那様方と王太子殿下。
そしてーー。

「んまあっ!何て愛らしいの!!」

「何て元気そうな子達なの!」

食らいつくかのような素早さで駆け寄ってきた奥様方。

抱いていたお嬢様は、既に奥様方に取り上げられて、お世継ぎ様を抱いているフェリテさんは、困り顔でいらっしゃいます。
一応、若様に最初に抱いていただこうという気遣いなのですが、若様達はフラフラと立ち上がりました。

「う、産まれましたか……」

ふらつきながらもフェリテさんから、お子様を受け取られています。

「…フェリテ。リアは大丈夫ですか?あんな恐ろしい痛みを味わいながら、子を産むなど…」

若様の言葉に首を傾げていると、兄に手招きされて、何があったかを聞きました。

ドン引きです……。

ですが、納得しました。
そうとう辛そうだったのでしょう。見ていただけのはずの旦那様方と我が愚兄。そして、王太子殿下の顔色は、お子様が産まれたというのに悪いです。

伯爵家のご兄弟は、お嬢様をご覧になりながら、

「あの痛みと引き換えに、これほど愛らしい存在を産み出すのですね…」

「正に命懸け…」

ブツブツと呟いていらっしゃいましたが、かなりおやつれになってます。

そうこうしてる内に、処置は全て終わったらしく、アリス様への面会が許されました。

「リア……」

「エヴァン様……」

ベッドの上でぐったりしてるアリス様の髪を撫でながら、若様は甲斐甲斐しく動き始めました。
水差しから水を飲ませたり、乱れた髪を手で直したり。

「痛みの中、無事に元気な子を産んでくれて、ありがとうございます、リア……」

仮面越しで分かりにくいですが、あれは絶対泣いてますね。

「…やりきりました……」

アリス様は苦笑しながらそう言われました。

半日がかりの出産となりましたが、皆様が無事で何よりです。
今はゆっくりとお休みいただきたいものですーーーー。





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