74 / 154
第九章 《祝福》されし者
攻防戦
しおりを挟む
[アリスティリア視点]
「リア!どうして、そんな所にいるのですか?今すぐ…」
「若様、落ち着け!とりあえず、落ち着こう!!」
「そうですよ、若様!無理強いはいけません!新婚早々、離縁されたいんですか!?」
バルカス領で過ごして早三日。
現在、わたしは庭の木の上に逃げてますーーーー。
木の根元では、登ろうとするエヴァン様を、カルステッドと、ステリナが必死で引き止めてくれてます。
何故、わたしが木の上にいるかと言うと、ぶっちゃけ逃亡です。
バルカス領で七日過ごした後、四候訪問に出かけなければなりません。
当然、専用のあのとんでもなく豪華なドレスを着なければなりません。
体型維持必須なのです!
だと言うのに、エヴァン様は屋敷に付くなり、わたしを連れて寝室に籠ろうとします。
隠れても隠れても、《ストーカー》を所持しているエヴァン様にはすぐ見つかってしまいます。
変装しても匂いでバレました……。香水使ったのに、何故バレた!?
獣人のフェリテさんでも分からないくらいだったのに……。
それなのに、どうして現在ここにいれるのかと聞かれれば、それはもう時の運としか言えません。
王都の騎士団から、急ぎの書類が来たとかで、確認してる最中にベランダから屋根に登り、手近な木にひょいと飛び移ったところ、ちょうど真下にいたステリナに見つかりました。
ですが、さすがに状況把握してくれたみたいで、見なかったことにしてくれました。感謝です。
木の枝に腰掛け、のんびり寛いでいるところ、屋敷内でわたしの名を叫ぶエヴァン様の声が聞こえました。
……はい。見事に木の真下に現れ、そこにいたステリナにわたしの居場所を確認しました。
シラを切っていたステリナに、エヴァン様はわたしの名を呼びながら、天を仰ぎました。
そう、上を向いちゃったんです。
そうして、冒頭に戻ります。
「リア!降りて…、いえ、動かないで!誰か梯子を!!」
「だーかーらー!若様は落ち着いて!!」
騒ぎを聞きつけて、使用人の皆さんも集まって来てます。
非常に気まずいです、はい……。
「……若奥様、どうされます?」
ふと気配を感じると、隣にフエリテさんがいらっしゃいました。
さすが猫の獣人です。音もせずに現れました。
「とりあえず、寝室は別にしたいです……」
「ですよねぇ…。あ、ラフィンが来ましたね…」
二人で下を見下ろすと、ラフィンさんがエヴァン様達を叱っているようです。
※※※※※※※※
[ラフィン視点]
真っ青になって慌てた使用人数人に呼ばれ、庭に出てみれば木の上に若奥様とフェリテ。
木の根元ではうちの子供達と若様が言い争ってました。
……あー、はい。若奥様が逃亡されたんですね、分かります。
『待て』がなかなか出来ない若様に、若奥様が強硬手段に出られたのでしょう。
使用人達には問題ないと通常業務に戻らせます。
そして、三人をジロリと見やると静かになりました。
「ステリナ。若奥様の部屋で待機。カルステッド、貴方は若様の執務室の書類の整理を。若様。若様は少し若奥様と距離をおいてください。お子が流れても知りませんよ!」
「うっ……」
さすがに我が子は大事なようで、何よりです。
「せっかく作ったドレスも、無駄にしたくはないですよね?」
「……ラフィン。添い寝だけ「出来てないから、こうなってますよね?」」
添い寝だけと言いつつ、毎度毎度押し倒しては乗っかっているのは、毎朝の若奥様の状態で分かります。
「わーかーさーまー?」
「…………はい……」
まったく、どうしてこうなったのだかーーーー。
「リア!どうして、そんな所にいるのですか?今すぐ…」
「若様、落ち着け!とりあえず、落ち着こう!!」
「そうですよ、若様!無理強いはいけません!新婚早々、離縁されたいんですか!?」
バルカス領で過ごして早三日。
現在、わたしは庭の木の上に逃げてますーーーー。
木の根元では、登ろうとするエヴァン様を、カルステッドと、ステリナが必死で引き止めてくれてます。
何故、わたしが木の上にいるかと言うと、ぶっちゃけ逃亡です。
バルカス領で七日過ごした後、四候訪問に出かけなければなりません。
当然、専用のあのとんでもなく豪華なドレスを着なければなりません。
体型維持必須なのです!
だと言うのに、エヴァン様は屋敷に付くなり、わたしを連れて寝室に籠ろうとします。
隠れても隠れても、《ストーカー》を所持しているエヴァン様にはすぐ見つかってしまいます。
変装しても匂いでバレました……。香水使ったのに、何故バレた!?
獣人のフェリテさんでも分からないくらいだったのに……。
それなのに、どうして現在ここにいれるのかと聞かれれば、それはもう時の運としか言えません。
王都の騎士団から、急ぎの書類が来たとかで、確認してる最中にベランダから屋根に登り、手近な木にひょいと飛び移ったところ、ちょうど真下にいたステリナに見つかりました。
ですが、さすがに状況把握してくれたみたいで、見なかったことにしてくれました。感謝です。
木の枝に腰掛け、のんびり寛いでいるところ、屋敷内でわたしの名を叫ぶエヴァン様の声が聞こえました。
……はい。見事に木の真下に現れ、そこにいたステリナにわたしの居場所を確認しました。
シラを切っていたステリナに、エヴァン様はわたしの名を呼びながら、天を仰ぎました。
そう、上を向いちゃったんです。
そうして、冒頭に戻ります。
「リア!降りて…、いえ、動かないで!誰か梯子を!!」
「だーかーらー!若様は落ち着いて!!」
騒ぎを聞きつけて、使用人の皆さんも集まって来てます。
非常に気まずいです、はい……。
「……若奥様、どうされます?」
ふと気配を感じると、隣にフエリテさんがいらっしゃいました。
さすが猫の獣人です。音もせずに現れました。
「とりあえず、寝室は別にしたいです……」
「ですよねぇ…。あ、ラフィンが来ましたね…」
二人で下を見下ろすと、ラフィンさんがエヴァン様達を叱っているようです。
※※※※※※※※
[ラフィン視点]
真っ青になって慌てた使用人数人に呼ばれ、庭に出てみれば木の上に若奥様とフェリテ。
木の根元ではうちの子供達と若様が言い争ってました。
……あー、はい。若奥様が逃亡されたんですね、分かります。
『待て』がなかなか出来ない若様に、若奥様が強硬手段に出られたのでしょう。
使用人達には問題ないと通常業務に戻らせます。
そして、三人をジロリと見やると静かになりました。
「ステリナ。若奥様の部屋で待機。カルステッド、貴方は若様の執務室の書類の整理を。若様。若様は少し若奥様と距離をおいてください。お子が流れても知りませんよ!」
「うっ……」
さすがに我が子は大事なようで、何よりです。
「せっかく作ったドレスも、無駄にしたくはないですよね?」
「……ラフィン。添い寝だけ「出来てないから、こうなってますよね?」」
添い寝だけと言いつつ、毎度毎度押し倒しては乗っかっているのは、毎朝の若奥様の状態で分かります。
「わーかーさーまー?」
「…………はい……」
まったく、どうしてこうなったのだかーーーー。
0
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる