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第八章 波乱ばかりの婚姻式
兄妹団欒
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「……くっ。気に入らないけど、認めざるを得ない…」
ラスティンは拳を握りしめ、打ちひしがれていた。
「…これは、うん。文句の付けようがない見事さだね。アリスの良さが引き立つというか…。アリスを知り尽くした上でのデザインだね…」
カインベルは苦笑しながら、首を巡らせた。
室内には8着のドレスが並べられていた。
「…この一部屋に国家予算数年分のドレス………」
それらを身に纏わねばならぬアリスティリアと言えば、虚ろな目でブツブツ呟いている。
「…お嬢様、戻ってきてください。怖くないですよぉ…」
アリスティリア付きの侍女であるステリナは、隣で何とか正気に戻そうと声をかけている。
「お嬢様達へのドレスのお披露目は済みましたから。こちらのお品はブランディアと侯爵家にそれぞれ運ばれますからねー」
「それって、2着はブランディアに運ぶけど、残り6着は侯爵家ってことよね?」
涙目でステリナを見るアリスティリアに、彼女はにっこりと笑った。
「そうですよぉ。別邸に運び込まれますから、盗難の心配はないですよ。あちらの別邸、大神殿よりも侵入者対策されてますから♪」
「詳しいんだな、ステリナ」
ラスティンの言葉にステリナが頭を下げる。
「侯爵家は、両親が勤めておりますので♪」
「「「は?」」」
三人の視線がステリナに集まる。
「侯爵家の若様とは、幼馴染になります。兄は若様の側におりますわ」
「待て待て待て……。それって、カルステッド?カルステッドじゃないよね?」
ラスティンの言葉にステリナは、静かに微笑んだ。
「うわぁ…、カルステッドの妹なんだ…」
カインベルの視線が遠くを見る。
「?カルステッド様の妹だと、何かありますの?」
首を傾げるアリスティリアに、兄達の視線が向いた。
「アリス。『護衛メイド』に二つ名持ちっているよね?」
ラスティンの言葉にアリスティリアが頷く。
「カルステッドの妹は、二つ名持ちの『護衛メイド』って、聞いたことがあるんだよ…」
カインベルの言葉に、アリスティリアは目を瞬かせた。
「……ちなみに二つ名は?」
「「……《鮮血》……」」
苦虫を噛み潰したような顔で告げる兄達からステリナに顔を向ける。
「私の二つ名なんて、大したことないんですよ?母なんて《閃光》ですし、相方は《赤爪》です。『護衛メイド』の上位でない私なんてまだまだ…」
謙遜するステリナに、アリスティリアの顔色は悪い。
「「アリス?」」
「こ、侯爵家の『護衛メイド』って、ラフィンさんと、フェリテさんじゃないですかーっ!!わたし、そんな伝説級の先輩方にあんな……」
疲労困憊の乱れた姿で湯浴みから、着替えからと手伝ってもらったことを思い出す。
「……部屋で休みます……」
「畏まりました。ドレスは運ぶように手配いたしますね♪」
フラフラと部屋を出ていくアリスティリアに、明るく声をかけるステリナ。その姿を兄達はひたすら無言で見守っていた。
そして、数日後。
婚姻式の為に、ブランディアへ向かおうとしていた伯爵家に、とんでもない報せが届いたのであったーーーー。
ラスティンは拳を握りしめ、打ちひしがれていた。
「…これは、うん。文句の付けようがない見事さだね。アリスの良さが引き立つというか…。アリスを知り尽くした上でのデザインだね…」
カインベルは苦笑しながら、首を巡らせた。
室内には8着のドレスが並べられていた。
「…この一部屋に国家予算数年分のドレス………」
それらを身に纏わねばならぬアリスティリアと言えば、虚ろな目でブツブツ呟いている。
「…お嬢様、戻ってきてください。怖くないですよぉ…」
アリスティリア付きの侍女であるステリナは、隣で何とか正気に戻そうと声をかけている。
「お嬢様達へのドレスのお披露目は済みましたから。こちらのお品はブランディアと侯爵家にそれぞれ運ばれますからねー」
「それって、2着はブランディアに運ぶけど、残り6着は侯爵家ってことよね?」
涙目でステリナを見るアリスティリアに、彼女はにっこりと笑った。
「そうですよぉ。別邸に運び込まれますから、盗難の心配はないですよ。あちらの別邸、大神殿よりも侵入者対策されてますから♪」
「詳しいんだな、ステリナ」
ラスティンの言葉にステリナが頭を下げる。
「侯爵家は、両親が勤めておりますので♪」
「「「は?」」」
三人の視線がステリナに集まる。
「侯爵家の若様とは、幼馴染になります。兄は若様の側におりますわ」
「待て待て待て……。それって、カルステッド?カルステッドじゃないよね?」
ラスティンの言葉にステリナは、静かに微笑んだ。
「うわぁ…、カルステッドの妹なんだ…」
カインベルの視線が遠くを見る。
「?カルステッド様の妹だと、何かありますの?」
首を傾げるアリスティリアに、兄達の視線が向いた。
「アリス。『護衛メイド』に二つ名持ちっているよね?」
ラスティンの言葉にアリスティリアが頷く。
「カルステッドの妹は、二つ名持ちの『護衛メイド』って、聞いたことがあるんだよ…」
カインベルの言葉に、アリスティリアは目を瞬かせた。
「……ちなみに二つ名は?」
「「……《鮮血》……」」
苦虫を噛み潰したような顔で告げる兄達からステリナに顔を向ける。
「私の二つ名なんて、大したことないんですよ?母なんて《閃光》ですし、相方は《赤爪》です。『護衛メイド』の上位でない私なんてまだまだ…」
謙遜するステリナに、アリスティリアの顔色は悪い。
「「アリス?」」
「こ、侯爵家の『護衛メイド』って、ラフィンさんと、フェリテさんじゃないですかーっ!!わたし、そんな伝説級の先輩方にあんな……」
疲労困憊の乱れた姿で湯浴みから、着替えからと手伝ってもらったことを思い出す。
「……部屋で休みます……」
「畏まりました。ドレスは運ぶように手配いたしますね♪」
フラフラと部屋を出ていくアリスティリアに、明るく声をかけるステリナ。その姿を兄達はひたすら無言で見守っていた。
そして、数日後。
婚姻式の為に、ブランディアへ向かおうとしていた伯爵家に、とんでもない報せが届いたのであったーーーー。
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