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閑話 8
エベリウム伯爵は沈黙する
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聖王国グランラディアには、王族を筆頭に五大侯爵家が連なり、国の中枢を回している。
だが、ここにエベリウム伯爵家も加わっているのは、一部の貴族のみ本当の意味で理解している。
【王家の影】と呼ばれる諜報機関を代々担っている。それがエベリウム伯爵家。
それは一般的な見解である。
情報収集だけでなく、情報操作。そして、時には影としての護衛、暗殺などと、多岐に渡る役目を持つのが本来の姿である。
現在のエベリウム伯爵家当主はアベル・クラン・エベリウム。
穏やかな性格の彼は、愛娘の誘拐で暴走した家族の後始末に頭を抱えていた。
「……はは。マリアの経済制裁の一声で、これだけの打撃与えてるの、恐怖でしかないんだけど……」
「そっすねぇ…。さらに、若様方も加わったから、エスタルディアからの正式な謝罪が発表されるまでは、解除されないでしょうしねぇ…」
愛娘を誘拐したのがエスタルディアの人間と分かるや否や、マリアステラは実家のエイデル商会に連絡した。
『エイデルの幸運の女神』の誘拐は、紹介で働く者達にとっても許せる事態ではなかった。
特に率先して動いたのは各国に『護衛メイド』として派遣されていた女達である。
可愛い妹分として、皆から愛されていたアリスティリアである。
派遣先の主達に、それぞれがアリスティリアの捜索に行かせて欲しいと相談したのだ。
これに慌てたのは、雇用主達だ。
自分達の『護衛メイド』に対して、エスタルディアへの抗議を約束し、使える伝手を全て使っての情報を集めだした。
これに乗っかったのは、エベリウム兄弟である。
【王家の影】を使い、情報を各国に素早く拡散、何が起こったのか包み隠さず広めたのである。
これにより、エイデル商会とグランラディア側の怒りが伝わり、エスタルディアから他国の人間は速やかに帰国。
外交も貿易も一切が行われなくなったのは、アリスティリアが拐われた翌日の昼だった。
他国に出向いていたエスタルディアの国民まで、エスタルディアに強制送還されたのだ。
その後、カフィルとエヴァンにより、アリスティリアが保護されても、状況が変わることはなく、エスタルディア側からエベリウム伯爵家に密使が送られてきたのである。
『どうか奥方とご子息達のお怒りを鎮めていただきたい!』
見事な土下座をしながら、自国が現在どれだけの打撃を受けているかと、書類まで運んできた密使は本気で泣いていた。
「何処ぞの大バカ野郎のせいで、国が滅びかけるって……。お気の毒っすねぇ…」
クロードは密使に同情すれど、それだけである。
彼とてアリスティリアを可愛がっていた一人なのだ。
「そもそも皆勘違いしてるよね。私にあの三人を止められるわけないのに……。止めれるのアリスだけだよ?頼む相手間違えてるよねぇ……」
そう言いながらも、アベルは色々と書類を作成していく。
「いや、旦那様。止める気ないですよね?旦那様もお怒りだって、自分分かってますからね!」
「当たり前じゃないか。可愛い大事な一人娘を無理矢理拐ったんだよ?それも初めてじゃないんだから、国挙げて本気で反省してもらわなきゃだよ。陛下もそう言ってたしね♪」
結局、エベリウム伯爵は沈黙を答えとした。
その後、王太子妃レティーシアが、母国からの手紙に渋々ながらアリスティリアに取り次ぐ羽目になったのであったーーーー。
だが、ここにエベリウム伯爵家も加わっているのは、一部の貴族のみ本当の意味で理解している。
【王家の影】と呼ばれる諜報機関を代々担っている。それがエベリウム伯爵家。
それは一般的な見解である。
情報収集だけでなく、情報操作。そして、時には影としての護衛、暗殺などと、多岐に渡る役目を持つのが本来の姿である。
現在のエベリウム伯爵家当主はアベル・クラン・エベリウム。
穏やかな性格の彼は、愛娘の誘拐で暴走した家族の後始末に頭を抱えていた。
「……はは。マリアの経済制裁の一声で、これだけの打撃与えてるの、恐怖でしかないんだけど……」
「そっすねぇ…。さらに、若様方も加わったから、エスタルディアからの正式な謝罪が発表されるまでは、解除されないでしょうしねぇ…」
愛娘を誘拐したのがエスタルディアの人間と分かるや否や、マリアステラは実家のエイデル商会に連絡した。
『エイデルの幸運の女神』の誘拐は、紹介で働く者達にとっても許せる事態ではなかった。
特に率先して動いたのは各国に『護衛メイド』として派遣されていた女達である。
可愛い妹分として、皆から愛されていたアリスティリアである。
派遣先の主達に、それぞれがアリスティリアの捜索に行かせて欲しいと相談したのだ。
これに慌てたのは、雇用主達だ。
自分達の『護衛メイド』に対して、エスタルディアへの抗議を約束し、使える伝手を全て使っての情報を集めだした。
これに乗っかったのは、エベリウム兄弟である。
【王家の影】を使い、情報を各国に素早く拡散、何が起こったのか包み隠さず広めたのである。
これにより、エイデル商会とグランラディア側の怒りが伝わり、エスタルディアから他国の人間は速やかに帰国。
外交も貿易も一切が行われなくなったのは、アリスティリアが拐われた翌日の昼だった。
他国に出向いていたエスタルディアの国民まで、エスタルディアに強制送還されたのだ。
その後、カフィルとエヴァンにより、アリスティリアが保護されても、状況が変わることはなく、エスタルディア側からエベリウム伯爵家に密使が送られてきたのである。
『どうか奥方とご子息達のお怒りを鎮めていただきたい!』
見事な土下座をしながら、自国が現在どれだけの打撃を受けているかと、書類まで運んできた密使は本気で泣いていた。
「何処ぞの大バカ野郎のせいで、国が滅びかけるって……。お気の毒っすねぇ…」
クロードは密使に同情すれど、それだけである。
彼とてアリスティリアを可愛がっていた一人なのだ。
「そもそも皆勘違いしてるよね。私にあの三人を止められるわけないのに……。止めれるのアリスだけだよ?頼む相手間違えてるよねぇ……」
そう言いながらも、アベルは色々と書類を作成していく。
「いや、旦那様。止める気ないですよね?旦那様もお怒りだって、自分分かってますからね!」
「当たり前じゃないか。可愛い大事な一人娘を無理矢理拐ったんだよ?それも初めてじゃないんだから、国挙げて本気で反省してもらわなきゃだよ。陛下もそう言ってたしね♪」
結局、エベリウム伯爵は沈黙を答えとした。
その後、王太子妃レティーシアが、母国からの手紙に渋々ながらアリスティリアに取り次ぐ羽目になったのであったーーーー。
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