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第五章 誘拐からの救出監禁

トドメを刺すのはこのわたし!!

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「…最っ低なんですけど…」

ネイゼルが姿を消したため、【封印布】の無効化を試したアリスティリアだったが、予想外の事態にかなり怒っていた。

「誰よ、この【封印布】使って枷なんか作ったヤツ!!無効化したら、ランダムでスキルを一つ封印て何っ!しかも《空間収納》封じられたーっ!!」

身体ひとつで脱出し、逃亡するしかなくなったアリスティリアは、一頻り叫んで落ち着くと、冷静に現状把握に努めた。

「今いるのは…とりあえず外の風景から、エランディアかブランディアだと思うんだけど…」

窓に嵌った鉄格子で、外を見渡せないのだ。

「……割っちゃう?割れるかな?《強化》使ったらいけるかな?」

右手に《強化》スキルを使用し、窓ガラスを殴りつけた瞬間だった。

「ふわっ!?」

パシンと音がし、窓ガラスが消えると同時に、アリスティリアの着ていた服まで消えたのだ。

「????」

下着姿にされたアリスティリアは驚きのあまり、その場に座り込んだ。

「……ここ。もしかして、前に拐われたことあるとこじゃ…」

10歳の頃に拐われ、監禁された場所と同じ状況だと思い出す。
当時は椅子で窓を叩き割ろうとしたら、着ていた服は下履以外の全てが消えた。

「……ってことは、エランディアよね。とりあえず服の代わりはこのカーテン巻くとして…」

窓にかかるカーテンを引き剥がし、体に巻きつける。

「あとは…早く寄ってくることを祈って…」

部屋に飾られた花瓶を割り、その破片を左手で握りしめる。

「っ!」

傷ついて血の滴り始めた掌を窓の外に出した。

「…おいで……。いい子だから、おいでぇ…」

しばらくすると、鮮やかな色彩を纏った鳥が現れた。

「わたしはエベリウムのアリスティリア。エイデル商会にこの場所を伝えて欲しいの」

その場に留まっていた鳥は、アリスティリアの掌に乗り、嘴で軽く血を啜ると、キューと鳴いて飛び立った。

「…吸血鳥ブラディバードがいる森で良かったぁ…」

少量の血でこちらの伝言や頼みを二つ叶えてくれるエランディアにしか存在しない謎な鳥である。

「後は何ができるかなぁ…」

掌の止血をしながら、アリスティリアは対策を考える。
幼かった頃の自分は今とは違う。
だから、打てる手段は全て使うと決めていた。

「……出入口は一箇所だけ。室内には…さっきの窓以外は何も無し…」

ざっと室内を《看破》スキルで見回し、アリスティリアは息を吐き出し、ソファに腰を下ろす。

「エイデル商会に連絡がつけば、そのまま獣王様にも連絡がつく…」

現在の獣王は、ブランディアの聖王の血筋だったかなぁ…なんて思い出しながら、これからの動きを考えていると、床に魔法陣が現れた。

「え?これ、転移陣……」

バッと光を放ち、消えた先には二人の男達が立っていた。

「……エヴァン…様……?」

「リアッ!!」

アリスティリアの姿を見つけるなり、エヴァンは走りよって強く抱き寄せた。

「リア…、リア、無事でしたか?何もされてませんか?」

ーー嘘……。エヴァン様、今、リアって呼んだ……。

エヴァンの腕の中で、アリスティリアは真っ赤になって硬直していた。

「若様、先に怪我の手当と、服をどうにかしてあげないと…」

「っ!?リア、この姿はどうしたんですっ!!《空間収納》に着替えは入れてなかったのですか?」

エヴァンは自分のマントを外すと、それで優しくアリスティリアを包んだ。

「…えっと実は【封印布】を無効化したら、《空間収納》を封じられまして…。で、次は窓ガラスを割ったら、服が消えてしまいまして…」

「……誰だい、そんな魔導具作ったのは…」

「…捕らえたらすぐに然るべき罰を与えましょう…」

二人に状況説明をしている時だった。

「何者だっ!?」

部屋にネイゼルが飛び込んできた。

「…エヴァン騎士団長殿、貴殿がどうやってここに…」

エヴァンは自分の背後にアリスティリアを庇い、剣を抜いた。

「どうやってって。そりゃ、若様には僕が付いてるからね。転移陣の痕跡さえ見れれば、同じ転移陣は描けるともさ♪」

「……カフィル大神官…?」

「元大神官だよ。今の僕は若様付きの魔道師さ」

クスクス笑いながら、カフィルがアリスティリアの隣に立つ。

「…貴殿のアリスへの所業。許せるものでは無い!」

「はっ。〖風の大精霊〗の血筋の私に、人間ごときの剣が届くもの、ぐはあっ!」

「「………」」

斬りかかろうとしたエヴァンと、魔術を展開しようとしていたカフィルの目の前で、ネイゼルが見事に後ろのドアへと吹っ飛んでいった。
背後から突っ込んで行ったアリスティリアが、ネイゼルを殴り飛ばしたのだ。

「ふぅ……」

パンパンと手を叩き、全身に《強化》スキルを使っていたアリスティリアが、ネイゼルのいた場所に立っている。

「ダメですよ、エヴァン様!被害者はわたしです!」

「そう、ですね……」

茫然となりながらもそう答えるエヴァン。

「だから、加害者にトドメを刺すのはこのわたし!!わたしに一番権利があるんです!!」

「「…はい、そうですね…」」

助けに来たはずの二人は、ただそう口にするしかなくなっていたーーーー。

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