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第一章 侯爵家は混乱する
スクロールは生きている?
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アグローシアに於いて、スキルというものは様々である。
誰にでもあるスキルとして挙げるならば、《生活》スキルであろう。
このスキルもまた様々なスキルの複合からなる。
《調理》、《清掃》、《洗濯》。この三つのスキルを取得すると、《生活》スキルへと変化する。
ただし、このスキルのレベルを上げるにも様々で、《調理》スキルがあっても、《味音痴》や《不器用》というスキルを持っていると、とても食べれたもんじゃない物が出来上がる確率が高まる。
スキルは《生活》スキルのような〖一般スキル〗と呼ばれるものから、職業を決める目安となる〖職業スキル〗、生まれつき持っている〖加護スキル〗などと呼ばれる多様なスキルが存在している。
ここまでは数に差はあれど、誰もが持つスキルである。
但し、どのスキルも生まれた時からレベルがMAXなどということはなく、せいぜいレベル3(レベルは全て10段階)からだ。
そんな中、スキルの組合わせで発生する複合スキルは多種多様にあり、犯罪者に多いスキルは〖犯罪者スキル〗と呼ばれ、神殿預かりにされる場合も多い。
そして、〖ギフト〗と呼ばれるスキルがある。
これは『神からの祝福』とされているスキルである。
生まれながら与えられている者はほとんどなく、神がその者に与えた条件を満たした場合、神に認められて得ることの出来るスキルであると言われている。
ぶっちゃけて言えば、『神様のお気に入り』という所だろうか。
とにかく、スキルとは多種多様ではあるものの、持てる数はそう多くないのだ。
本来は………。
※※※※※※※※
いつまでも【鑑定の間】にいても仕方がないと、侯爵家一行と大神官は応接室へと移動した。
「お前達は下がって休みなさい。後はカストールに任せますから」
大神官の言葉に一人の神官を除いて、他の神官が部屋を後にする。
「カストール。外で見張りを」
「よろしいのですか?」
カストールと呼ばれた黒髪に碧眼の若い神官が尋ねる。
「かまいません。ラフィン達がいますからね」
言われた言葉に視線を向けると、『護衛メイド』達はしずしずと頭を下げた。
「それでは、お任せ致します」
頭を下げると、カストールは部屋を退出し、扉の前に控えた。
侯爵家絡みの事なので、情報漏洩防止である。
「……フェリテ」
「問題ございません、旦那様。声に届く範囲には誰もいませんし、盗聴防止の魔導具もきちんと作動しております」
スヴェンの言葉にフェリテが答えると、『護衛メイド』以外の全員の口から息が吐き出された。
「っはぁ~。もう、驚きすぎて誤魔化すの忘れたよね、ほんと……」
三人がけソファの真ん中に一人座っていた大神官カフィルは、ポスンと横に倒れ込んだ。
「いや、旦那様達いるんですから、せめてちゃんと座っといてもらえませんかね、カフィル様……」
呆れながら近寄ったラフィンが、カフィルの肩を掴んで引き起こす。
フェリテはマイペースに部屋に備え付けの茶器でお茶の用意を始めていた。
「…うちの子が冷たい…。エマリーちゃん、この子ホントにちゃんと仕事してる?」
ガクリと項垂れながら、ソファの背もたれに身を任せたカフィルは、涙目になって正面のエマリーを見た。
「うちはラフィンとフェリテのおかげで、助かることばかりですわ♪」
にこやかに微笑むエマリーの隣で、うんうんと首を振るスヴェン。
「ところで、エヴァンのスキルは如何なものでしょうか?」
スヴェンからの言葉に、ピキリと固まるカフィル。
「あー、うん。それなんだよねぇ、問題は……」
背後からの冷たい気配に、辛うじて言葉を発すると、懐からスクロールを取り出した。
「これ、ご子息のスキルを写したスクロールなんだけど……。分かるかな?」
テーブルの上に広げられたスクロールに、フェリテ以外で覗き込む。
「…まあ、生まれたばかりなのにこんなに?」
「これはまた、なんといえば…」
端から端までビッシリと並ぶスキルの数に、侯爵夫妻は言葉を失った。
「うん、まあそれもなんだけどさ。ラフィン、分かる?」
「…現在進行形で、〖複合スキル〗が発生してますね。スクロールの文字が変化してくなんて始めて見ました。これ、生きてましたっけ?」
「「は?」」
ラフィンの言葉に、侯爵夫妻は身を乗り出してスクロールを見るのだったーー。
誰にでもあるスキルとして挙げるならば、《生活》スキルであろう。
このスキルもまた様々なスキルの複合からなる。
《調理》、《清掃》、《洗濯》。この三つのスキルを取得すると、《生活》スキルへと変化する。
ただし、このスキルのレベルを上げるにも様々で、《調理》スキルがあっても、《味音痴》や《不器用》というスキルを持っていると、とても食べれたもんじゃない物が出来上がる確率が高まる。
スキルは《生活》スキルのような〖一般スキル〗と呼ばれるものから、職業を決める目安となる〖職業スキル〗、生まれつき持っている〖加護スキル〗などと呼ばれる多様なスキルが存在している。
ここまでは数に差はあれど、誰もが持つスキルである。
但し、どのスキルも生まれた時からレベルがMAXなどということはなく、せいぜいレベル3(レベルは全て10段階)からだ。
そんな中、スキルの組合わせで発生する複合スキルは多種多様にあり、犯罪者に多いスキルは〖犯罪者スキル〗と呼ばれ、神殿預かりにされる場合も多い。
そして、〖ギフト〗と呼ばれるスキルがある。
これは『神からの祝福』とされているスキルである。
生まれながら与えられている者はほとんどなく、神がその者に与えた条件を満たした場合、神に認められて得ることの出来るスキルであると言われている。
ぶっちゃけて言えば、『神様のお気に入り』という所だろうか。
とにかく、スキルとは多種多様ではあるものの、持てる数はそう多くないのだ。
本来は………。
※※※※※※※※
いつまでも【鑑定の間】にいても仕方がないと、侯爵家一行と大神官は応接室へと移動した。
「お前達は下がって休みなさい。後はカストールに任せますから」
大神官の言葉に一人の神官を除いて、他の神官が部屋を後にする。
「カストール。外で見張りを」
「よろしいのですか?」
カストールと呼ばれた黒髪に碧眼の若い神官が尋ねる。
「かまいません。ラフィン達がいますからね」
言われた言葉に視線を向けると、『護衛メイド』達はしずしずと頭を下げた。
「それでは、お任せ致します」
頭を下げると、カストールは部屋を退出し、扉の前に控えた。
侯爵家絡みの事なので、情報漏洩防止である。
「……フェリテ」
「問題ございません、旦那様。声に届く範囲には誰もいませんし、盗聴防止の魔導具もきちんと作動しております」
スヴェンの言葉にフェリテが答えると、『護衛メイド』以外の全員の口から息が吐き出された。
「っはぁ~。もう、驚きすぎて誤魔化すの忘れたよね、ほんと……」
三人がけソファの真ん中に一人座っていた大神官カフィルは、ポスンと横に倒れ込んだ。
「いや、旦那様達いるんですから、せめてちゃんと座っといてもらえませんかね、カフィル様……」
呆れながら近寄ったラフィンが、カフィルの肩を掴んで引き起こす。
フェリテはマイペースに部屋に備え付けの茶器でお茶の用意を始めていた。
「…うちの子が冷たい…。エマリーちゃん、この子ホントにちゃんと仕事してる?」
ガクリと項垂れながら、ソファの背もたれに身を任せたカフィルは、涙目になって正面のエマリーを見た。
「うちはラフィンとフェリテのおかげで、助かることばかりですわ♪」
にこやかに微笑むエマリーの隣で、うんうんと首を振るスヴェン。
「ところで、エヴァンのスキルは如何なものでしょうか?」
スヴェンからの言葉に、ピキリと固まるカフィル。
「あー、うん。それなんだよねぇ、問題は……」
背後からの冷たい気配に、辛うじて言葉を発すると、懐からスクロールを取り出した。
「これ、ご子息のスキルを写したスクロールなんだけど……。分かるかな?」
テーブルの上に広げられたスクロールに、フェリテ以外で覗き込む。
「…まあ、生まれたばかりなのにこんなに?」
「これはまた、なんといえば…」
端から端までビッシリと並ぶスキルの数に、侯爵夫妻は言葉を失った。
「うん、まあそれもなんだけどさ。ラフィン、分かる?」
「…現在進行形で、〖複合スキル〗が発生してますね。スクロールの文字が変化してくなんて始めて見ました。これ、生きてましたっけ?」
「「は?」」
ラフィンの言葉に、侯爵夫妻は身を乗り出してスクロールを見るのだったーー。
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