86 / 110
第九章 他国訪問〔グラシア王国〕
3
しおりを挟む
[アルテ視点]
「………天国か……」
【王国会議】はさっさと終わりーそもそも今回の議題は双子の訪問の日付と順番決めがメインだったらしいー、現在は王妃の生国ということで、一番手のグラシア王国に来ております。
そして、現在は歓迎の夜会の真っ最中。
テーブルに並べられていた料理を見たレオは、目を輝かせてます。ええ、料理見て。
「グラシア王国は独特の料理があると聞いていたが、レオはこういうのが好みなのか?」
レオの隣をちゃっかり押さえているガディル殿下が、不思議そうに料理を見ておられます。
一応、レオは女性ということで、本来ならばエスコート役がいない場合は、相手国の王族の方やそれに近い立場の方にエスコートされるのですが、
「俺の番を他の男に触られるのは好かん!」
と、【王国会議】で言い切った殿下は、しっかりと各国訪問に同伴されることが決まりました。
長命な魔族に逆らうのは悪手ですし、実際レオは殿下の番なので認められましたが、一部の王族の方は肩を落としていたそうです。
いや。もうレオは殿下のお手つきですから、殿下付いてなくてもチャンスはないですよ……。
最も、ガディル殿下の同伴を真っ先に賛成されたのはグラシア王国の国王様だったとかで、レオの中では好感度爆上がりの方です。
「前にいた世界の料理に近いから、懐かしい♪」
「「っ!?」」
取り皿にひょいひょいと取っていた料理を口にして、全開の笑顔です。隣で直撃食らった殿下は、耳まで真っ赤です。
対するオレは真っ青です。
おま……。真正面にいた第一王子にまで、被弾してるじゃねえかよっ!!
グラシア王国の第一王子には現在、婚約者が不在です。色々あって、婚約が取り消されたそうですが、本日のレオは『勇者』の装いでなくドレス姿です。
『お前、誰だよ!詐欺だろ、それっ!!』
と、同年代の騎士達に泣き叫ばれたレオのドレス姿。
その姿で全開の笑顔です。場所的に第一王子に微笑んだみたいにも見えた、あれ……。
第一王子は真っ赤になりつつも、視線がずっとレオにクギ付けです。
殿下とダンスを踊っている間も、他の令嬢には目もくれず、ひたすらにレオを目が追っています。
相手にされてない令嬢達の嫉妬の視線が、全部にレオに向いてんのがまた怖ぇぇ………。
対して令嬢方に囲まれてもおかしくないはずのエレは、何とご年配の方々に囲まれてます。
「肩の具合が宜しくないのではありませんか?」
「おや?見ただけで分かるのですか?ええ。最近、特に…」
いや、あれ絶対。スキル使ってるだろ。絶対、令嬢避けにするために、周り囲むように誘導してるだろ……。
フレイア嬢は今回、エレとの婚礼の準備のため同行できず、同行しているのは侍女長のダリヤ殿なので、夜会は参加出来ずに留守番です。なので、入場の際には、ガディル殿下とレオを真ん中にしての入場でした。
軽めの症状の方々を治癒し、症状の深刻な方々が完全に周りを囲んで話してます。深刻な方は当然老齢の方々が多く、たいていお持ちの権力も身分も上の方の方々。
そんな中に割って入るとしたら、王家の方々か、頭の悪い連中です。
「まあ。皆様がそのように囲んでしまわれては、華やかさが足りませんわ♪」
……いました。割って入るご令嬢が。
事前に王妃様からいただいた情報通りなら、あの方は第三王女のサラディナーサ様のはず。
このお名前。王妃様と間違えやすいので、変えるようにとグラシア国王に言われたそうですが、
『我が子に付けたい名前すら付けさせていただけないなら、神殿に入ります!!』
と、駄々をこねられて押し通したのだとか。
当時、皆から『サラ様』と呼ばれていた王妃様は、母親の公爵夫人が『ディール』と呼び始められたので、すぐに混乱することなく収まったのだとか。
そして、『サラ』と我が子を呼ばせて、今までの王妃様の噂をご自身の娘に繋げようとお考えだったのでしょう。
グラシア国王より、『ナーサ』と呼ばれた姫君。
そうなると、側仕え以外はみな、『ナーサ様』と呼び始めたので、またもや陛下達を相手に『サラ』呼びを強要しようとし、夜会の場で公爵夫人の返り討ちにあったとかなかったとか……。
そんな母親に育てられた姫君は、ことある事に王妃様に所謂イチャモンをつけていたそうです。
うちに嫁ぐ時も、本来なら自分が嫁ぐべきだとか騒いだそうですが、我らが陛下の
『我妻に求むはサラディール姫のみ。彼女以外が嫁いで来ると言うなら、今後のグラシア王国との関係は良くないものとなりましょう』
との言葉に、陛下が滞在している間は、お二人は部屋に監禁されていたそうです。
そして、未だに姫君のまま……。
…………ねぇわ。エレ狙ってんだろうけど、エレの一番嫌いなタイプだし、年の差考えてくれって話だろ……。
「………天国か……」
【王国会議】はさっさと終わりーそもそも今回の議題は双子の訪問の日付と順番決めがメインだったらしいー、現在は王妃の生国ということで、一番手のグラシア王国に来ております。
そして、現在は歓迎の夜会の真っ最中。
テーブルに並べられていた料理を見たレオは、目を輝かせてます。ええ、料理見て。
「グラシア王国は独特の料理があると聞いていたが、レオはこういうのが好みなのか?」
レオの隣をちゃっかり押さえているガディル殿下が、不思議そうに料理を見ておられます。
一応、レオは女性ということで、本来ならばエスコート役がいない場合は、相手国の王族の方やそれに近い立場の方にエスコートされるのですが、
「俺の番を他の男に触られるのは好かん!」
と、【王国会議】で言い切った殿下は、しっかりと各国訪問に同伴されることが決まりました。
長命な魔族に逆らうのは悪手ですし、実際レオは殿下の番なので認められましたが、一部の王族の方は肩を落としていたそうです。
いや。もうレオは殿下のお手つきですから、殿下付いてなくてもチャンスはないですよ……。
最も、ガディル殿下の同伴を真っ先に賛成されたのはグラシア王国の国王様だったとかで、レオの中では好感度爆上がりの方です。
「前にいた世界の料理に近いから、懐かしい♪」
「「っ!?」」
取り皿にひょいひょいと取っていた料理を口にして、全開の笑顔です。隣で直撃食らった殿下は、耳まで真っ赤です。
対するオレは真っ青です。
おま……。真正面にいた第一王子にまで、被弾してるじゃねえかよっ!!
グラシア王国の第一王子には現在、婚約者が不在です。色々あって、婚約が取り消されたそうですが、本日のレオは『勇者』の装いでなくドレス姿です。
『お前、誰だよ!詐欺だろ、それっ!!』
と、同年代の騎士達に泣き叫ばれたレオのドレス姿。
その姿で全開の笑顔です。場所的に第一王子に微笑んだみたいにも見えた、あれ……。
第一王子は真っ赤になりつつも、視線がずっとレオにクギ付けです。
殿下とダンスを踊っている間も、他の令嬢には目もくれず、ひたすらにレオを目が追っています。
相手にされてない令嬢達の嫉妬の視線が、全部にレオに向いてんのがまた怖ぇぇ………。
対して令嬢方に囲まれてもおかしくないはずのエレは、何とご年配の方々に囲まれてます。
「肩の具合が宜しくないのではありませんか?」
「おや?見ただけで分かるのですか?ええ。最近、特に…」
いや、あれ絶対。スキル使ってるだろ。絶対、令嬢避けにするために、周り囲むように誘導してるだろ……。
フレイア嬢は今回、エレとの婚礼の準備のため同行できず、同行しているのは侍女長のダリヤ殿なので、夜会は参加出来ずに留守番です。なので、入場の際には、ガディル殿下とレオを真ん中にしての入場でした。
軽めの症状の方々を治癒し、症状の深刻な方々が完全に周りを囲んで話してます。深刻な方は当然老齢の方々が多く、たいていお持ちの権力も身分も上の方の方々。
そんな中に割って入るとしたら、王家の方々か、頭の悪い連中です。
「まあ。皆様がそのように囲んでしまわれては、華やかさが足りませんわ♪」
……いました。割って入るご令嬢が。
事前に王妃様からいただいた情報通りなら、あの方は第三王女のサラディナーサ様のはず。
このお名前。王妃様と間違えやすいので、変えるようにとグラシア国王に言われたそうですが、
『我が子に付けたい名前すら付けさせていただけないなら、神殿に入ります!!』
と、駄々をこねられて押し通したのだとか。
当時、皆から『サラ様』と呼ばれていた王妃様は、母親の公爵夫人が『ディール』と呼び始められたので、すぐに混乱することなく収まったのだとか。
そして、『サラ』と我が子を呼ばせて、今までの王妃様の噂をご自身の娘に繋げようとお考えだったのでしょう。
グラシア国王より、『ナーサ』と呼ばれた姫君。
そうなると、側仕え以外はみな、『ナーサ様』と呼び始めたので、またもや陛下達を相手に『サラ』呼びを強要しようとし、夜会の場で公爵夫人の返り討ちにあったとかなかったとか……。
そんな母親に育てられた姫君は、ことある事に王妃様に所謂イチャモンをつけていたそうです。
うちに嫁ぐ時も、本来なら自分が嫁ぐべきだとか騒いだそうですが、我らが陛下の
『我妻に求むはサラディール姫のみ。彼女以外が嫁いで来ると言うなら、今後のグラシア王国との関係は良くないものとなりましょう』
との言葉に、陛下が滞在している間は、お二人は部屋に監禁されていたそうです。
そして、未だに姫君のまま……。
…………ねぇわ。エレ狙ってんだろうけど、エレの一番嫌いなタイプだし、年の差考えてくれって話だろ……。
10
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星河由乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる