上 下
71 / 110
第七章 神獣様と一緒!

10

しおりを挟む
[ラムダス視点]

「……いったーいっ!」

   頭を押えてレオ様が座りこまれました。先程までの殺気も、身にまとわれていた雷もきれいさっぱり消えております。

「悪いのは王子クパッ!関係ない皆を巻き込むのはダメクパッ!!」

「ふぇ……。ごめんなさぁいぃ……」

    涙目で謝られているレオ様の背後では、殿下がオロオロされてました。が、説明せずに契約していたなどと、それは怒られても仕方ありません。しかも、下手をすれば城が崩壊するところです。招待客や使用人も無事では済まなかったでしょう。きんちゃん様がいなければ大惨事です。

「王子はさらにダメダメクパッ!!」

「っ!」

    気がつけば殿下はレオ様の隣に座らされ、きんちゃん様にこんこんと説教をされております。オリクス殿やアルテ殿は、その間に倒れている者達の介抱をして下さっていました。

「…決めたクパッ!ミカナ様に頼んで、時々レオに会いに来るクパッ!!」

「「っ!!」」

    これにはレオ様はとても喜ばれ、殿下はものすごーく複雑そうな顔をなされました。

「ふむ。ならば城内にミカナ様を祀る場所でも作るかな?」

   陛下の言葉に周囲が賛成します。

   そりゃそうです。レオ様の寿命が殿下と同じになったということは、先程のレオ様のお怒りを止めれるエレ様がいなくなられた後が困ります。
    きんちゃん様はミカナ様の神獣との事ですから、こちらに来られやすいのではないかと言うことで、翌日からすぐに城内の庭に祈祷所の建造が始められることになりました。

「とりあえずガディルは、この人に謝って!!」

「はあっ!?」

    ひとまず一件落着かと思いましたが、それはまだのようです。座り込んで泣いていたアラベル嬢の側に立ったレオ様が、殿下に向かってそう仰ったのです。これには再び周りが黙り込みました。

「ふぇ…、ひっく?」

    泣いたせいで化粧が落ち、ものすごい顔になっていたアラベル嬢ですが、レオ様が《洗浄クリーン》で綺麗にしてしまい、現在すっぴんでキョトンとされてます。いつもは化粧の濃いアラベル嬢ですが、すっぴんは意外と愛らしい顔立ちをされておりました。

「なぜ俺が謝らねばならん!」

「い・い・か・ら・あ・や・ま・れ!ここに来てた全候補の女性に謝れ……」

「はあっ!?」

「王子の相手になれると来てたクパ。選ばないのなら謝るのは当たり前クパ…」

    きんちゃん様の続く言葉に、殿下は黙りました。正論です。ぐうの音も出ないですよね。

「……選ばずにすまぬ……_」

「………やり直し……」
「やり直しクパ」

   渋々謝る殿下にお二人からのダメ出しです。

「~~っ!!せっかく集まってもらったが、俺は金輪際レオしか選ばぬっ!お前達には無駄に期待をさせて済まなかった!」

    殿下はそう叫ぶと、深々と頭を下げられました。

「し、仕方ありませんわよね…。つがいがおられるのですもの…」
「そ、そうですわよね。つがい様が見つかりましたものねぇ…」

    周りの令嬢達はそう言って、壁際へと離れていきます。

「……貴女は…」

   アラベル嬢がレオ様を見上げられました。

「貴女は殿下でよろしいのですか?」

「………」

    アラベル嬢の言葉にレオ様はしばらく黙りこまれた後、ご令嬢の隣に膝をつかれました。

「…正直に言えば、説明も相談もなく勝手に契約された事には、ものすごーーーーーーく、腹が立ってる……。立ってるんだけど……、まあガディルの気持ちも分からない訳じゃないし…かと言って、簡単に許す気もないんだけど……」

「ぐ……」

    レオ様の言葉に、殿下は胸元を押さえてます。グサグサ刺してきてますもんね。自業自得ですよ。

「…他の人に譲る気もないんだよねぇ……。ごめんね?」

「……ふ、ふふふっ。そうなんですのね……」

「うん、そうなの。ごめんね」

    困り顔で笑うレオ様に、思わずという感じで笑いだしたアラベル嬢。目尻に浮かぶ涙を拭われました。

「…アタクシにもつがいが見つかりますでしょうか?」

「それは分かんないけど、ちゃんとした格好にすれば、今よりモテると思うよ?」

「…ちゃんとした?」

    確かに今のアラベル嬢のすっぴんと、着ているドレスは合っていません。

「清楚系が似合うんだクパッ!選んであげるクパッ!!」

    きんちゃん様はそのままアラベル嬢の所へ泊まりに行かれてしまいました。
    残された我々は、そのまま続ける気力もなく、パーティーは解散となったのです。
    ちなみに殿下は右耳をレオ様に引っ張られ、

「レオ、痛いっ!痛いぞ、レオッ!!」

    そのまま部屋へと連れていかれてました。
    
    一件落着………ですかね?


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星河由乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

処理中です...