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第六章 五十歩百歩

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[エレオノール視点]

「……俺はレオと婚約したと思うのだが、違うのだろうか?」

    魔族領での討伐依頼を受け、今日の分の討伐を終えて、与えられた客室で休もうとしてたら、義兄予定のガディル殿下が部屋にやって来るなりそう言った。

「……何かありました?」

   とりあえず部屋の中へ通し、ソファに座ってもらう。我が姉は今度は何をやらかしたのだろうか……。

    婚約してすぐに、ガディル殿下は贈り物をしてきた。たくさんだと迷惑だろうと、毎日一輪の花と一言のメッセージカードを添えて……。

    これにはサラ姉様やエマだけでなく、フレイア達侍女にも好印象を与えていた。
    毎日花束を貰っても、嬉しいのは最初だけ。その内、置き場所に困ってくるのだから。
    それを思うと毎日一輪ずつというのは、溜まる頃には、入れ替わりでなくなる物が出てくるため、ほどほどの量をずっと保てるのである。
    メッセージカードも一言だけだが、ちゃんと本人の直筆。長ったらしい美辞麗句が並んでるわけでもなく、簡素で素直な内容に、女性陣からは高評価だ。

    但し、受け取るのはレオであるーーーー。

    ほとんど男扱いされてたレオは、花を貰う側・・・ではなく、贈る側・・・だったのだ。
   そして、贈られる物の大半は食べ物。日持ちする物なら、さらに大喜びである。
    ※但し、不純物入は異なる。

「…花を送る時にカードを添えているが、何の反応もないようで、迷惑だったのかと……」

    ズーンと落ち込む殿下に、ん?となったのは仕方ないだろう。
   
    何も返してなかったの、レオーーーーッ!!

    それはダメだ。大問題だ。姉の女子力が完全に枯渇しているかもしれない。

    とりあえず殿下には、

「レオは花より食べ物が好きですよ…」

   と、伝えて帰らせ、急いでみんなに集まってもらう。

「あー。どっちかっつーと、花はエレのが貰ってたもんなぁ……」

    私からの緊急相談の内容に、全員がガディル殿下に同情した。
    両想いのはずの恋人に、贈り物もメッセージカードもスルーされるのは、かなりキツい。しかも、相手がモテるとなると、心配も尽きないだろう。私だって、フレイアに贈り物をして反応なかったら、凹む…………。

「あれ?でも、冒険者やってる時は何もなかったのか?」

    問われた言葉に、アルテを見る。たいてい、冒険者の時は、アルテがレオについていたからだ。

「……あー。色々貰ってはいたぞ……」

    気まずそうに口にするアルテに、みんなの視線が集まる。

「屋台のおっちゃんやおばちゃんから、食い物貰うだろ。通りすがりの子供にも果物貰ってたな…。酒場だと串肉、盛り皿ごと貰ってた……」

「……食べ物ばっかじゃん……」

    これでは、姉は単なる食いしん坊である。いや、確かに女性にしてはよく食べるのだが、それだって使う魔力や体力を考えると当然なのかもしれない。

「いや、そもそも。レオは殿下のその行動にどう思ってんのかが重要じゃないのか?」

「確かに……。惚れた男から、花貰って……」

   今、みんなの頭の中には、花束を殿下から受け取るレオの姿が浮かんだだろう。

『………………』
   
   一斉に溜息を吐き出し、揃って首を振る。

「……受け取る姿が想像できない……」

   誰かの言葉に、数人が頷く。

「……おれ、受け取ったのをそのままフレイア殿に回すとこ浮かんだ……」

   そういったのはアルテだ。私も同じ考えである。

「………これは戻ったら、レン兄様達に相談案件だろうなぁ……」

    結局、解決策は浮かばず、そのまま解散になったーーーー。




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