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第三章 困惑、混乱、初めての恋?

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「………無理。分からなくなってきた……」

「同じく……」

    ダンスの練習をしているが、途中からどちらのパートを踊っているのか分からなくなり、互いの足を踏みまくっては転んでいる。

「…少し休憩いたしましょう……」

    フレイアが苦笑しながら、近くに用意されたテーブルにお茶を用意していく。

「ありがとう、フレイア♪」

「喉乾いてたもんね…」

    礼を述べて席に着く双子。

「……見ていて思ったのですが……」

    フレイアが口を開く。

「お二人共、他の方と踊るときは踊れてますけど、お二人で踊ると間違われてるような気がします…」

「「っ!?」」

「ああ、言われてみればそうですね。我々と踊る時は、二人とも女性側のステップは出来てましたね…」

    グランの言葉に、エレがフレイアを見た。

「何か?」

    エレの視線に首を傾げるフレイア。

「…フレイア。踊れますよね?」

「それはまあ…。一応、男爵家の娘ですので、最低限ですが…」

「それでは、相手を頼みます!」

「……え?」

    ヒョイと手を取られ、部屋の中央に連れていかれると、エレに手を差し出された。

「ほ、本当にワタシと踊られるんですか?」

「ええ。お願いします」

    にっこり笑うエレに負け、フレイアはその手を取った。


※※※※※※※※

「…………もう、お許しくださいませ…」

    エレを相手に四回。レオを相手に五回も立て続けに相手をさせられ、フレイアは限界を迎えた。

「うわ、ごめんね。私達の体力と一緒に考えてたよ…。エレッ!」

「ごめん、フレイア。《回復ヒール》…」

    床にへたりこんでしまっていたフレイアに、エレが回復魔法をかけた。

「ですが、フレイア殿とのダンスは間違えずに踊れていましたよ」

    グランの言葉に、双子は互いを見た。

「もしかしたら、自分達で踊ってると、どっちも踊れるから分からなくなってるのかも知れない……」

「うん。他の皆は性別分かってるから、その逆って思えるけど、自分達はどっちも踊らなきゃだから、混乱するよね……」

    ウンウンと頷き合う双子。

「ですが、ちゃんと踊れることは確認出来ましたね。これでやっと陛下達にも報告出来ます」

    グランの嬉しそうな顔に、余程心配されてたのだと双子は理解した。

「後は本番に向けて、衣装を着てちゃんと踊れるかの確認ですね♪」

    フレイアは己の力作を、二人に着せるのを楽しみにしていた。

「………それがあった……」

    レオが途端に嫌そうな顔になる。
    サイズ確認のためにと、コルセットを付けられたので、その時の苦しさを思い出したのだ。

「レオ様はそんなに体型の崩れもないので、前より緩めのコルセットにしましたよ」

    クスクス笑うフレイアに、レオは眉を下げた。

「あんなキツいの付けて、よく平気で働いてるよね、フレイア達…」

「レオ様。何事も慣れですよ♪ですので、これからはダンスの時間は、コルセット着用でお願いします」

「……言うんじゃなかったぁ……」

    頭を抱えるレオに、周りは苦笑した。

「レオが女性側の時はグラン達に頼んで、私が男性側の時は、フレイアに頼むのでいいかな?」

「我々は構いませんよ♪」

    にこやかにグレンが答える。

「……ワタシで宜しければ…」

    こうして、冒険者としてストレスを発散し、ダンスの練習の繰り返しの日々が続いたーーーー。

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