27 / 110
第三章 困惑、混乱、初めての恋?
6
しおりを挟む
「レオはさ。ガディル殿下のこと、どう思ってるの?」
依頼の打撃蝶の鱗粉五匹分を集め終わると、突然、エレにそう聞かれたレオは首を傾げた。
「どう思ってる?ん~。色んな意味で素直な人?」
ーーいや、聞きたいのはそういう意味じゃないだろ……。
死骸の処理をしていたクルトとアルテは、心のなかで突っ込んだ。
「……そうじゃなくって…。好きとか嫌いとか…」
騎士達との訓練に、ガディルがレオとよく参加していると耳にしたエレ。
「あれは女とは気づいてないけど、レオに惚れてますね…」
レオの性別を知っている騎士達全員、そう判断しているらしい。
さらには、彼の側近もレオを呼び止めては、ガディルの話を聞かせているらしい。
そう聞かされると、近づいてきているその日に、レオが誰かを選ぶのではないかと、弟としては気になってしまうのだ。
「好きか嫌いか?好きだけど?それがどうかした?」
キョトンとして返された言葉に、男達の心中は重なった。
ーーあ。ダメだ、これ。全然気づいてない……。
たまに見かけるクルトですら、ガディルがレオを好きだと分かるぐらいなのに、ずっと男のように振舞っていたせいか、はたまた元からの気質なのか、自分が男性からそういう対象とされているという意識がないのだ。
「~~っ、レン兄様と殿下なら、どっちが好き?」
「?レン兄様だけど?」
「私とレン兄様なら?」
「同じくらいだけど?」
「…じゃあ、クルト達や殿下は?」
「いや。なんでそこでオレ達を出す?」
「僕達まで巻き込まないでください!」
突然、名前を出されて、慌てるアルテとクルト。
「……。同じくらい?」
「「「…………」」」
男達は顔を両手で覆った。
ーーダメだ、これ。そっち方面がお子様すぎる……。
「????」
そんな三人の姿に、レオはひたすらクビを傾げるのだった。
※※※※※※※※
「お前ら、あの依頼受けてたのか……」
ギルドに戻るとゴルディーニに呼ばれた。
「どの依頼でしょう?」
クルトが首を傾げる。
〖レンドルの花冠〗は一度に幾つかの依頼を受けているので、どれか分からないのだ。
「あ~。あれだ、あれ。蝶の鱗粉集めのやつだ」
「全部?それともどの蝶のやつ?」
レオが首を傾げると、ゴルディーニの口の端がひくついた。
「その言い方…。もしかして、お前ら。全部受けてたのか?」
こくりと頷いた四人に、ゴルディーニはハアと大きく息を吐き出した。
「依頼は確か五匹分ずつだったろうが…。一体どんだけ捕まえたんだよ……」
「「「「五匹ずつ」」」」
「はあ?ありゃどう見てもその十倍くらいの量だったぞ?どうやって採った?!」
四人は顔をそれぞれ見回した。
「まず、蝶を見つけたら《時間停止》で足止めします」
エレが指を一本立てる。
「止まってる間に下に鱗粉集めるための布を置きます」
アルテが指を二本立てた。
「次にその周りを結界で囲みます…」
クルトの指は三本だ。
「そして、私が上から蝶を叩きまくって鱗粉を落としたら終了!!」
拳を頭上に突き上げたレオが締めくくる。
「…………」
ゴルディーニは頭を抱えた。
どう頑張っても、このパーティーでしか出来ない採取方法である。
乳幼児サイズの蝶からの鱗粉採取の依頼は、飛んでいる蝶の下に素早く回り込み、採取用の入れ物で羽に付いている鱗粉を擦り取るのが普通である。
決して、ホコリを払うように叩き落として集める方法ではない。
しかし、蝶の移動速度はかなり速いため、成功率は低く、故にマグレ狙いの依頼と化していた。
ーーこれからは、こいつらの受ける依頼も、毎回確認しておこう……。
ゴルディーニは心にそう誓ったのであるーーーー。
********
いつも読了ありがとうございます。
近況にも記しておりますが、四月十七日よりこちらは奇数日の昼前後の更新とさせてもらいます。
誠に申し訳ありませんが、ご理解のほどお願い致します。
依頼の打撃蝶の鱗粉五匹分を集め終わると、突然、エレにそう聞かれたレオは首を傾げた。
「どう思ってる?ん~。色んな意味で素直な人?」
ーーいや、聞きたいのはそういう意味じゃないだろ……。
死骸の処理をしていたクルトとアルテは、心のなかで突っ込んだ。
「……そうじゃなくって…。好きとか嫌いとか…」
騎士達との訓練に、ガディルがレオとよく参加していると耳にしたエレ。
「あれは女とは気づいてないけど、レオに惚れてますね…」
レオの性別を知っている騎士達全員、そう判断しているらしい。
さらには、彼の側近もレオを呼び止めては、ガディルの話を聞かせているらしい。
そう聞かされると、近づいてきているその日に、レオが誰かを選ぶのではないかと、弟としては気になってしまうのだ。
「好きか嫌いか?好きだけど?それがどうかした?」
キョトンとして返された言葉に、男達の心中は重なった。
ーーあ。ダメだ、これ。全然気づいてない……。
たまに見かけるクルトですら、ガディルがレオを好きだと分かるぐらいなのに、ずっと男のように振舞っていたせいか、はたまた元からの気質なのか、自分が男性からそういう対象とされているという意識がないのだ。
「~~っ、レン兄様と殿下なら、どっちが好き?」
「?レン兄様だけど?」
「私とレン兄様なら?」
「同じくらいだけど?」
「…じゃあ、クルト達や殿下は?」
「いや。なんでそこでオレ達を出す?」
「僕達まで巻き込まないでください!」
突然、名前を出されて、慌てるアルテとクルト。
「……。同じくらい?」
「「「…………」」」
男達は顔を両手で覆った。
ーーダメだ、これ。そっち方面がお子様すぎる……。
「????」
そんな三人の姿に、レオはひたすらクビを傾げるのだった。
※※※※※※※※
「お前ら、あの依頼受けてたのか……」
ギルドに戻るとゴルディーニに呼ばれた。
「どの依頼でしょう?」
クルトが首を傾げる。
〖レンドルの花冠〗は一度に幾つかの依頼を受けているので、どれか分からないのだ。
「あ~。あれだ、あれ。蝶の鱗粉集めのやつだ」
「全部?それともどの蝶のやつ?」
レオが首を傾げると、ゴルディーニの口の端がひくついた。
「その言い方…。もしかして、お前ら。全部受けてたのか?」
こくりと頷いた四人に、ゴルディーニはハアと大きく息を吐き出した。
「依頼は確か五匹分ずつだったろうが…。一体どんだけ捕まえたんだよ……」
「「「「五匹ずつ」」」」
「はあ?ありゃどう見てもその十倍くらいの量だったぞ?どうやって採った?!」
四人は顔をそれぞれ見回した。
「まず、蝶を見つけたら《時間停止》で足止めします」
エレが指を一本立てる。
「止まってる間に下に鱗粉集めるための布を置きます」
アルテが指を二本立てた。
「次にその周りを結界で囲みます…」
クルトの指は三本だ。
「そして、私が上から蝶を叩きまくって鱗粉を落としたら終了!!」
拳を頭上に突き上げたレオが締めくくる。
「…………」
ゴルディーニは頭を抱えた。
どう頑張っても、このパーティーでしか出来ない採取方法である。
乳幼児サイズの蝶からの鱗粉採取の依頼は、飛んでいる蝶の下に素早く回り込み、採取用の入れ物で羽に付いている鱗粉を擦り取るのが普通である。
決して、ホコリを払うように叩き落として集める方法ではない。
しかし、蝶の移動速度はかなり速いため、成功率は低く、故にマグレ狙いの依頼と化していた。
ーーこれからは、こいつらの受ける依頼も、毎回確認しておこう……。
ゴルディーニは心にそう誓ったのであるーーーー。
********
いつも読了ありがとうございます。
近況にも記しておりますが、四月十七日よりこちらは奇数日の昼前後の更新とさせてもらいます。
誠に申し訳ありませんが、ご理解のほどお願い致します。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄される未来を変える為に海に飛び込んでみようと思います〜大逆転は一週間で!?溺愛はすぐ側に〜
●やきいもほくほく●
恋愛
マデリーンはこの国の第一王子であるパトリックの婚約者だった。
血の滲むような努力も、我慢も全ては幼い頃に交わした約束を守る為だった。
しかしシーア侯爵家の養女であるローズマリーが現れたことで状況は変わっていく。
花のように愛らしいローズマリーは婚約者であるパトリックの心も簡単に奪い取っていった。
「パトリック殿下は、何故あの令嬢に夢中なのかしらッ!それにあの態度、本当に許せないわッ」
学園の卒業パーティーを一週間と迫ったある日のことだった。
パトリックは婚約者の自分ではなく、ローズマリーとパーティーに参加するようだ。それにドレスも贈られる事もなかった……。
マデリーンが不思議な日記を見つけたのは、その日の夜だった。
ーータスケテ、オネガイ
日記からそんな声が聞こえた気がした。
どうしても気になったマデリーンは、震える手で日記を開いたのだった。
転生令嬢は庶民の味に飢えている
柚木原みやこ(みやこ)
ファンタジー
ある日、自分が異世界に転生した元日本人だと気付いた公爵令嬢のクリステア・エリスフィード。転生…?公爵令嬢…?魔法のある世界…?ラノベか!?!?混乱しつつも現実を受け入れた私。けれど…これには不満です!どこか物足りないゴッテゴテのフルコース!甘いだけのスイーツ!!
もう飽き飽きですわ!!庶民の味、プリーズ!
ファンタジーな異世界に転生した、前世は元OLの公爵令嬢が、周りを巻き込んで庶民の味を楽しむお話。
まったりのんびり、行き当たりばったり更新の予定です。ゆるりとお付き合いいただければ幸いです。
公爵家の半端者~悪役令嬢なんてやるよりも、隣国で冒険する方がいい~
石動なつめ
ファンタジー
半端者の公爵令嬢ベリル・ミスリルハンドは、王立学院の休日を利用して隣国のダンジョンに潜ったりと冒険者生活を満喫していた。
しかしある日、王様から『悪役令嬢役』を押し付けられる。何でも王妃様が最近悪役令嬢を主人公とした小説にはまっているのだとか。
冗談ではないと断りたいが権力には逆らえず、残念な演技力と棒読みで悪役令嬢役をこなしていく。
自分からは率先して何もする気はないベリルだったが、その『役』のせいでだんだんとおかしな状況になっていき……。
※小説家になろうにも掲載しています。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
転生幼児は夢いっぱい
meimei
ファンタジー
日本に生まれてかれこれ27年大学も出て希望の職業にもつき順風満帆なはずだった男は、
ある日親友だと思っていた男に手柄を横取りされ左遷されてしまう。左遷された所はとても忙しい部署で。ほぼ不眠不休…の生活の末、気がつくとどうやら亡くなったらしい??
らしいというのも……前世を思い出したのは
転生して5年経ってから。そう…5歳の誕生日の日にだった。
これは秘匿された出自を知らないまま、
チートしつつ異世界を楽しむ男の話である!
☆これは作者の妄想によるフィクションであり、登場するもの全てが架空の産物です。
誤字脱字には優しく軽く流していただけると嬉しいです。
☆ファンタジーカップありがとうございました!!(*^^*)
今後ともよろしくお願い致します🍀
今日からはじめる錬金生活〜家から追い出されたので王都の片隅で錬金術店はじめました〜
束原ミヤコ
恋愛
マユラは優秀な魔導師を輩出するレイクフィア家に生まれたが、魔導の才能に恵まれなかった。
そのため幼い頃から小間使いのように扱われ、十六になるとアルティナ公爵家に爵位と金を引き換えに嫁ぐことになった。
だが夫であるオルソンは、初夜の晩に現れない。
マユラはオルソンが義理の妹リンカと愛し合っているところを目撃する。
全てを諦めたマユラは、領地の立て直しにひたすら尽力し続けていた。
それから四年。リンカとの間に子ができたという理由で、マユラは離縁を言い渡される。
マユラは喜び勇んで家を出た。今日からはもう誰かのために働かなくていい。
自由だ。
魔法は苦手だが、物作りは好きだ。商才も少しはある。
マユラは王都の片隅で、錬金術店を営むことにした。
これは、マユラが偉大な錬金術師になるまでの、初めの一歩の話──。
修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜
長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。
コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。
ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。
実際の所、そこは異世界だった。
勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。
奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。
特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。
実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。
主人公 高校2年 高遠 奏 呼び名 カナデっち。奏。
クラスメイトのギャル 水木 紗耶香 呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。
主人公の幼馴染 片桐 浩太 呼び名 コウタ コータ君
(なろうでも別名義で公開)
タイトル微妙に変更しました。
冷酷な少年に成り代わってしまった俺の話
岩永みやび
BL
気が付いたら異世界にいた主人公。それもユリスという大公家の三男に成り代わっていた。しかもユリスは「ヴィアンの氷の花」と呼ばれるほど冷酷な美少年らしい。本来のユリスがあれこれやらかしていたせいで周囲とはなんだかギクシャク。なんで俺が尻拭いをしないといけないんだ!
知識・記憶一切なしの成り代わり主人公が手探り異世界生活を送ることに。
突然性格が豹変したユリスに戸惑う周囲を翻弄しつつ異世界ライフを楽しむお話です。
※基本ほのぼの路線です。不定期更新。冒頭から少しですが流血表現あります。苦手な方はご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる