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【二部】侯爵令嬢は今日もあざやかに断罪する

9.

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近衛騎士であるマキシオ・マイデールはマイデール伯爵家の三男である。
三男故に爵位も譲られることはなく、次男のように、嫡男である長男を支えるだけの能力もない。
幸いにして外見だけは、兄弟の中で一番彼が整っていた。そして、まあそれなりに剣の腕もあったため、騎士学校に入り、数年を経て近衛騎士になることが出来た。

騎士学校で同室だったランディとも、ずっと同じ道を歩んでいた。

「マキシオがいてくれたから、今の自分がいるんだ…」

二人の関係を問われる度に、ランディはそう言ってマキシオに感謝していると答えていた。
二人は共に支え合った。それが周囲の評価だ。

……実際は違う。

マキシオはランディを嫌っていた。
ランディは生まれながらにして、彼の欲しかった物をすべて持っていたからだ。

伯爵家の嫡男として生まれた彼は、結婚と同時に爵位を相続するのが決まっていた。
マキシオが、人目見て心奪われた令嬢は、産まれる前から決まっていたランディの婚約者だったし、近衛騎士になったものの、第四王子の専属護衛騎士に選ばれたのはランディの方だ。

地位も名誉も愛する者も、全てをランディが当たり前のように手にしている事実に、マキシオは心の奥に鬱蒼とした想いを溜め込んでいた。

だから、彼はランディから悩みを打ち明けられた時、悪戯心で助言したのだ。

すると、それが良かったのか、どうやら婚姻後の二人の仲が上手くいってないようだという話が耳に入った。

仕事はすれども、日に日に落ち込んでいくランディの姿に気分が良くなっていく。
そんな彼の様子への気分の良さも手伝って、彼は酒場で自分が相談を受けたかのように、実は自分と夫人は想いあっていたというような噂を流した。

平民の貴族に対する噂は広まりやすい。

あっという間に、社交もせずに姿を見せない伯爵夫人は、想い人を忘れられずに伏せっているなどという噂が広まり、ランディがさらに追い詰められていくのを、表向きは心配しつつも、心の中で喝采していた。

そんな折、自分の行動を後押しするような人物に出会った。

提案された条件。
その報酬は、自分が愛する女性となれば、マキシオのやる気はどんどん溢れ出た。
ほんの少しだけ残っていた罪悪感すら消えていき、彼は言われるままに行動した。

持たざる者の復讐劇だと言わんばかりに、自分の描いた物語は終盤を迎えているのだ!

彼はそう信じきっていた。
自国に存在しているのことをすっかり忘れたままーーーー。
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