上 下
47 / 82
【二部】侯爵令嬢は今日もあざやかに断罪する

8.

しおりを挟む
「ランディ。済まないけど、君だけ付いてきてくれるかな?」

ある日の午後。兄達と出かけるという第四王子の護衛を、ランディ・グリオールだけが指名された。

「自分だけ、ですか?」

「うん。護衛には王太子であるカイエン兄上の騎士もたくさんいるし、エイデン兄上の騎士もいるから、大所帯になるからね…」

確かに三人の王子が移動するからと、護衛騎士全員が付いていけば、とんでもない集団になると、ランディは納得して頷いた。

「そういうわけだから、君達はボクが戻るまで、ゆっくりしているといいよ」

にっこり笑う王子に、残された者は頭を下げて、自分達に与えられている詰所へと戻って行った。



「…………あの殿下…」

ランディは言葉を失って、現在目の前にある建物と、護るべき王子に目を向けた。
兄王子達と合流するなり、服を着替えされられ、馬車に乗せられて着いたのは貴族も利用しているというの前だった。

呆気に取られているランディの目の前では、王子二人が慣れた様子で中に入っていく。

慌てて追いかけるユエインの後を、ランディも護衛として追いかける。

「…殿下。こちらがどういう場所かご存知で?」

コソッと耳打ちをすると、呆れた顔で見上げられた。

「…それくらいは知ってるよ…」

では、何故ここに着たのか?そもそも王太子は妻を婚約者の令嬢のみとするという法まで作られたというのに、何故娼館に来ているのか?
ランディは頭の中を混乱させつつも、護衛としてユエインに付き添った。

通された部屋で、兄王子の護衛二人と並んでドアの側に立とうとすると、王太子から共に座るようにと言われた。
ユエインからも従うように言われ、止むを得ず指示に従い、恐れ多くも言われた場所ーー王太子の向かい側に腰を下ろした。

「さて。グリオール伯爵。夫人の体調はどうだい?」

唐突にカイエンに問いかけられた内容に、ランディは固まった。
何故、娼館ここの応接間らしき場所で、自分の妻の話題が出たのか分からない。そして、どう答えたものか分からなかった。

妻であるロゼッタは、夜の営みを拒みはしないが、結婚してからは屋敷から出ることを拒んでいる。社交もしないまま、ほとんど部屋に籠っている状況に、巷で流れている噂が事実ではないかと不安になっているのだ。
その噂の事を確認しようと、ロゼッタに尋ねたところ、ハラハラと無言で泣かれてしまい、結局は分からずじまいで終わってしまった。

「聞いた話では、夜の方は全く…という訳では無いそうだね♪」

「っ!?」

何故、自分達の閨事の情報を知られているのかと驚きつつも、王太子の婚約者が誰であるかを思い出し、心の中で納得した。

「…自分は何故そのような事を聞かれているのでしょうか……」

ランディに対し、ロゼッタの親友であるシルフィア王女が、最近はかなりご立腹だと聞いていたので、それかと当たりをつけてはいた。

「んー。ちょっと色々困ったことが分かってね…。君達夫婦に協力を頼みたい。その代わりに、正しい知識を与えようって事になったんだ…」

エイデンの言葉に首を傾げ、その後は教えられた内容に顔を青くし、与えられた知識に真っ赤になるランディを、扉の側にいた同僚二人は、気の毒に思いつつも見なかったことにするのであったーーーー。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ざまぁ対象の悪役令嬢は穏やかな日常を所望します

たぬきち25番
ファンタジー
*『第16回ファンタジー小説大賞【大賞】・【読者賞】W受賞』 *書籍化2024年9月下旬発売 ※書籍化の関係で1章が近日中にレンタルに切り替わりますことをご報告いたします。 彼氏にフラれた直後に異世界転生。気が付くと、ラノベの中の悪役令嬢クローディアになっていた。すでに周りからの評判は最悪なのに、王太子の婚約者。しかも政略結婚なので婚約解消不可?! 王太子は主人公と熱愛中。私は結婚前からお飾りの王太子妃決定。さらに、私は王太子妃として鬼の公爵子息がお目付け役に……。 しかも、私……ざまぁ対象!! ざまぁ回避のために、なんやかんや大忙しです!! ※【感想欄について】感想ありがとうございます。皆様にお知らせとお願いです。 感想欄は多くの方が読まれますので、過激または攻撃的な発言、乱暴な言葉遣い、ポジティブ・ネガティブに関わらず他の方のお名前を出した感想、またこの作品は成人指定ではありませんので卑猥だと思われる発言など、読んだ方がお心を痛めたり、不快だと感じるような内容は承認を控えさせて頂きたいと思います。トラブルに発展してしまうと、感想欄を閉じることも検討しなければならなくなりますので、どうかご理解いただければと思います。

転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉ 攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。 私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。 美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~! 【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避 【2章】王国発展・vs.ヒロイン 【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。 ※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。 ※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差) ブログ https://tenseioujo.blogspot.com/ Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/ ※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。

偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。 隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。

令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜

三月べに
ファンタジー
 令嬢に転生してよかった〜!!!  素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。  少女漫画や小説大好き人間だった前世。  転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。  そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが? 【連載再開しました! 二章 冒険編。】

異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ
ファンタジー
【異世界に召喚されましたが、間違いだったようです】 ノベルアッププラス小説大賞一次選考通過作品です ※自筆挿絵要注意⭐ 表紙はhake様に頂いたファンアートです (Twitter)https://mobile.twitter.com/hake_choco 異世界召喚などというファンタジーな経験しました。 でも、間違いだったようです。 それならさっさと帰してくれればいいのに、聖女じゃないから神殿に置いておけないって放り出されました。 誘拐同然に呼びつけておいてなんて言いぐさなの!? あまりのひどい仕打ち! 私はどうしたらいいの……!?

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

追放幼女の領地開拓記~シナリオ開始前に追放された悪役令嬢が民のためにやりたい放題した結果がこちらです~

一色孝太郎
ファンタジー
【小説家になろう日間1位!】 悪役令嬢オリヴィア。それはスマホ向け乙女ゲーム「魔法学園のイケメン王子様」のラスボスにして冥界の神をその身に降臨させ、アンデッドを操って世界を滅ぼそうとした屍(かばね)の女王。そんなオリヴィアに転生したのは生まれついての重い病気でずっと入院生活を送り、必死に生きたものの天国へと旅立った高校生の少女だった。念願の「健康で丈夫な体」に生まれ変わった彼女だったが、黒目黒髪という自分自身ではどうしようもないことで父親に疎まれ、八歳のときに魔の森の中にある見放された開拓村へと追放されてしまう。だが彼女はへこたれず、領民たちのために闇の神聖魔法を駆使してスケルトンを作り、領地を発展させていく。そんな彼女のスケルトンは産業革命とも称されるようになり、その評判は内外に轟いていく。だが、一方で彼女を追放した実家は徐々にその評判を落とし……? 小説家になろう様にて日間ハイファンタジーランキング1位! 更新予定:毎日二回(12:00、18:00) ※本作品は他サイトでも連載中です。

婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。 そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。 そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。 彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。 それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。

処理中です...