25 / 82
【番外編】伯爵令嬢は今日もがっつりと堪能する
6.
しおりを挟む
「…………」
目の前で頭を抱えてしゃがみ込んだリネット・カラディル伯爵令嬢。
彼女の言葉に僕は茫然としていた。
第二王子の僕の身分とかではなく、兄上の婚約者となるアディエル・ノクタール侯爵令嬢の側にいるための手段として選んだと言われたのだ。
それなりに外見も整っているし、身分も王位継承権第三位。王太子となるカイエン兄上には劣るが、次点として狙われてるのも理解していた。
だからこそ、自分の婚約者がなかなか選べなくて困っていたというのに、目の前のご令嬢ときたら、アディエル嬢の側にいたいから選んで欲しいと言ってきた。
……あれ?これ、僕がアディエル嬢に負けてない?
確かにアディエル嬢は兄上の隣に並ぶに相応しい令嬢だと認める。いや、あの兄上の隣に平気で並べれるのは彼女だけだと断言できる!
そんな彼女の側にいたいと、正直に言ってきた彼女には感心する。
僕の目の前で、本気で落ち込んでいる彼女に興味が湧いた。
「ん~、そうだな。君がどんなにアディエル嬢の事を思って、僕に婚約を申し込んだのかを聞かせてもらおうかな?」
「っ!?」
そう言って手を差し伸べた僕の顔を、彼女は信じられないという顔で見上げてきた。
「…僕を説得するチャンスを上げるよ♪」
そんなことを言ったけど、婚約者は彼女にしようと決めてしまった。
ちなみにこの後、パーティーの終わる時間が来るまで、ずーーーーーーーーーっと、アディエル嬢の事に始まり、彼女のためにとしてきた事を聞かされて、アディエル嬢に勝てる日は来ないだろうということだけは確信できた。
パーティーの後、兄上達にリネットを婚約者に選んだと報告すると、何故か母上に思いっきり抱きしめられて死にかけた……。
「うんうん。さすがはリネット嬢。仕事が早いな♪」
「…兄上。先に教えてくれてても良かったんじゃない?」
ニコニコ笑う兄上に、思わず言ってしまった僕は悪くないと思う。
「それじゃあ、エイデンはリネット嬢の事を知らないまま受け入れるだろ?」
「う……」
確かに僕は兄上に言われれば、その相手に何も思わずに婚約していた可能性が高い。
「私は自分がアディを選んだように、お前にもリネット嬢を選んで欲しかったんだ♪」
「…それは…まあ…」
「それに彼女。素直で頑張り屋だからな。まんま、お前の好みだろ?」
「母上っ!!」
兄上との会話に、楽しげに母上が加わり、僕の好みがバラされた。
「大丈夫よぉ。みぃんな、知ってることだからぁ♪」
「…え?」
二妃様の言葉に周りを見回せば、父上も王妃様も揃って、全員がウンウンと頷いていた。
「あ~~~~っ!!」
真っ赤になった顔を両手で押さえて座り込んだ僕に、
「さて。カラディル伯爵家に婚約者決定を告げねばな♪」
と、楽しげに言う父上の言葉だけが耳に届いた。
目の前で頭を抱えてしゃがみ込んだリネット・カラディル伯爵令嬢。
彼女の言葉に僕は茫然としていた。
第二王子の僕の身分とかではなく、兄上の婚約者となるアディエル・ノクタール侯爵令嬢の側にいるための手段として選んだと言われたのだ。
それなりに外見も整っているし、身分も王位継承権第三位。王太子となるカイエン兄上には劣るが、次点として狙われてるのも理解していた。
だからこそ、自分の婚約者がなかなか選べなくて困っていたというのに、目の前のご令嬢ときたら、アディエル嬢の側にいたいから選んで欲しいと言ってきた。
……あれ?これ、僕がアディエル嬢に負けてない?
確かにアディエル嬢は兄上の隣に並ぶに相応しい令嬢だと認める。いや、あの兄上の隣に平気で並べれるのは彼女だけだと断言できる!
そんな彼女の側にいたいと、正直に言ってきた彼女には感心する。
僕の目の前で、本気で落ち込んでいる彼女に興味が湧いた。
「ん~、そうだな。君がどんなにアディエル嬢の事を思って、僕に婚約を申し込んだのかを聞かせてもらおうかな?」
「っ!?」
そう言って手を差し伸べた僕の顔を、彼女は信じられないという顔で見上げてきた。
「…僕を説得するチャンスを上げるよ♪」
そんなことを言ったけど、婚約者は彼女にしようと決めてしまった。
ちなみにこの後、パーティーの終わる時間が来るまで、ずーーーーーーーーーっと、アディエル嬢の事に始まり、彼女のためにとしてきた事を聞かされて、アディエル嬢に勝てる日は来ないだろうということだけは確信できた。
パーティーの後、兄上達にリネットを婚約者に選んだと報告すると、何故か母上に思いっきり抱きしめられて死にかけた……。
「うんうん。さすがはリネット嬢。仕事が早いな♪」
「…兄上。先に教えてくれてても良かったんじゃない?」
ニコニコ笑う兄上に、思わず言ってしまった僕は悪くないと思う。
「それじゃあ、エイデンはリネット嬢の事を知らないまま受け入れるだろ?」
「う……」
確かに僕は兄上に言われれば、その相手に何も思わずに婚約していた可能性が高い。
「私は自分がアディを選んだように、お前にもリネット嬢を選んで欲しかったんだ♪」
「…それは…まあ…」
「それに彼女。素直で頑張り屋だからな。まんま、お前の好みだろ?」
「母上っ!!」
兄上との会話に、楽しげに母上が加わり、僕の好みがバラされた。
「大丈夫よぉ。みぃんな、知ってることだからぁ♪」
「…え?」
二妃様の言葉に周りを見回せば、父上も王妃様も揃って、全員がウンウンと頷いていた。
「あ~~~~っ!!」
真っ赤になった顔を両手で押さえて座り込んだ僕に、
「さて。カラディル伯爵家に婚約者決定を告げねばな♪」
と、楽しげに言う父上の言葉だけが耳に届いた。
4
お気に入りに追加
520
あなたにおすすめの小説
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
異世界八険伝
AW
ファンタジー
これは単なる異世界転移小説ではない!感涙を求める人へ贈るファンタジーだ!
突然、異世界召喚された僕は、12歳銀髪碧眼の美少女勇者に。13歳のお姫様、14歳の美少女メイド、11歳のエルフっ娘……可愛い仲間たち【挿絵あり】と一緒に世界を救う旅に出る!笑いあり、感動ありの王道冒険物語をどうぞお楽しみあれ!
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか聖女になってしまいました
As-me.com
恋愛
完結しました。
とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。
なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる