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プロローグ
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「アビゲイル!この穀潰しめっ!貴様とは今日を限りに離縁だっ!!その身一つで、今すぐ我が家から出ていくがいいっ!」
とある伯爵家の夜会の最中。
主である伯爵が、妻である夫人へとグラスの赤ワインを浴びせかけるなり、そう言い放つ。
「………出ていかれるのは貴方様の方ですわ…」
周囲がシンと静まり返る中、ポタポタと絨毯に赤い雫を染み込ませながら、アビゲイルと呼ばれた夫人は俯いたままそう呟いた。
「何だとっ!?生意気なアバズレめがっ!」
空のグラスを夫人にぶつけようとしたその腕は、スルリと二人の間に入り込んだ人物の手にした羽扇によって叩き落とされた。
「うぅ…。誰だっ!?」
強く打ち据えられた左手首を押さえながら、伯爵は加害者の顔を見ようと目を向けた。
「失礼。あまりにも見苦しかったものですから、つい……」
そこにいたのは、絹糸のような長い黒髪の半分を緩く編み込み、残りの半分を金糸の刺繍の入った水色のサテンのリボンでまとめて、左肩から垂らしている美しく年若い令嬢の姿があった。
「だ…『断罪令嬢』…」
その人物が誰なのかに気づいた瞬間、伯爵の顔からは血の気が引いていった。
『断罪令嬢』アディエル・ノクタール。
国内貴族の頂点に立つ『ノクタール侯爵家の黒真珠』と呼ばれている令嬢である。
かの令嬢の現れる所、断罪有りき。
そう呼ばれている令嬢の姿に、伯爵は己こそがこれから断罪されるのだと気がついた。
何故なら、伯爵は愛人を妻とするために、今日の夜会で妻の散財や不貞を口にして、離縁しようと計画していたからだ。
しかし、『断罪令嬢』と呼ばれるアディエルの姿に、自身の計画が知られていたと気づく。
「ノ、ノクタール侯爵令嬢…。こ、これは…」
「さて。エンダー伯爵様。さきほど、夫人を穀潰しだの、アバズレだの仰られましたね?何故でございますか?」
閉じていた純白の羽扇を広げ、口元を隠すように微笑むアディエル。
「そ、それはですな…」
計画していた通りの口上を述べようとするも、伯爵の口からは思っていたように言葉が出ていかない。
「ふふふ。私、夫人にご相談されましたの。皆様のいらっしゃるこの場にて、夫人にお力添えして欲しいと…」
「なっ!?」
その言葉に伯爵は夫人を見た。
目の合った夫人は、感情のない目で彼を見ていた。
「…では。これより答え合わせと参りましょう♪」
とある伯爵家の夜会の最中。
主である伯爵が、妻である夫人へとグラスの赤ワインを浴びせかけるなり、そう言い放つ。
「………出ていかれるのは貴方様の方ですわ…」
周囲がシンと静まり返る中、ポタポタと絨毯に赤い雫を染み込ませながら、アビゲイルと呼ばれた夫人は俯いたままそう呟いた。
「何だとっ!?生意気なアバズレめがっ!」
空のグラスを夫人にぶつけようとしたその腕は、スルリと二人の間に入り込んだ人物の手にした羽扇によって叩き落とされた。
「うぅ…。誰だっ!?」
強く打ち据えられた左手首を押さえながら、伯爵は加害者の顔を見ようと目を向けた。
「失礼。あまりにも見苦しかったものですから、つい……」
そこにいたのは、絹糸のような長い黒髪の半分を緩く編み込み、残りの半分を金糸の刺繍の入った水色のサテンのリボンでまとめて、左肩から垂らしている美しく年若い令嬢の姿があった。
「だ…『断罪令嬢』…」
その人物が誰なのかに気づいた瞬間、伯爵の顔からは血の気が引いていった。
『断罪令嬢』アディエル・ノクタール。
国内貴族の頂点に立つ『ノクタール侯爵家の黒真珠』と呼ばれている令嬢である。
かの令嬢の現れる所、断罪有りき。
そう呼ばれている令嬢の姿に、伯爵は己こそがこれから断罪されるのだと気がついた。
何故なら、伯爵は愛人を妻とするために、今日の夜会で妻の散財や不貞を口にして、離縁しようと計画していたからだ。
しかし、『断罪令嬢』と呼ばれるアディエルの姿に、自身の計画が知られていたと気づく。
「ノ、ノクタール侯爵令嬢…。こ、これは…」
「さて。エンダー伯爵様。さきほど、夫人を穀潰しだの、アバズレだの仰られましたね?何故でございますか?」
閉じていた純白の羽扇を広げ、口元を隠すように微笑むアディエル。
「そ、それはですな…」
計画していた通りの口上を述べようとするも、伯爵の口からは思っていたように言葉が出ていかない。
「ふふふ。私、夫人にご相談されましたの。皆様のいらっしゃるこの場にて、夫人にお力添えして欲しいと…」
「なっ!?」
その言葉に伯爵は夫人を見た。
目の合った夫人は、感情のない目で彼を見ていた。
「…では。これより答え合わせと参りましょう♪」
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