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其の55 メンテナンス②三好2/2*メンテナンス②恵比寿2/2

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「あ。お茶のおかわりはー」

 とらは返事はせずに頷いた。
 濱路は苦笑する。
「待っててよー」
 
 とらは見慣れた研究室の中を見渡した。

(ここで、大樹は何をされたのかなー)

 モヤモヤ。

 とらは胸の辺りを抑えた。
「っつ! ぃ、たたた??」
 顔を横にして、不思議そうな顔色を浮かべた。
「何ー今のー?」
 優しく胸を摩る。

 かちゃ、かちゃ!

「はいはい! 話しも長くなるからー」
「……えー~~」
「たっくさん! 持って来ちゃったよー~~」
「短くしてよー博士ー」

 かちゃ、かちゃ!

「はい。無理! 何かリクエストはないかなー」

 かちゃ、かちゃ!

 とらは諦め。
「じゃあ、ウーロン茶を」
「ハーブ茶にしようよーw 冷たいの♡」

 こぽこぽ、こぽぽ。

「はい!」

 とらは眉間にしわを寄せ。
 カップに口をつけ、乾いた口腔に流し込んでいく。
(聞かなきゃいいのにー)
 カップの中で息を吐き。

 ブクブク。

「行儀悪いぞーとらー」
 濱路が注意する。
 バツの悪そうな顔でとらも止めた。
「さて、と」

 宙に手を置きスライドさせた。

「次は。正統に引き継いだ《魔法少女ドレッド》」
 三好の顔画像が。
 恵比寿のものに映り変わった。
「宝はー間違いなく素材も、素質もあるよー」
「それはどうかな? とらー」

 ちゃん!

「僕の目に間違いはなんだよ?! 疑うの??」
 とらが言い返す。
 血相を変えて。
「お前の目は節穴か」
 濱路はため息交じりに言い返す。
「どういう意味だよー!」
 胸元を掴みそうになる衝動を、抑えるのが精一杯だった。
「素質は間違いないし。素材は、別にしても」
 濱路がお茶を飲んでいく。

「抑制されてちゃ、てんで話しにもならないじゃんか」

 コクコクー……。

 その言葉に。
 とらも耳を疑う。
「どう、ぃうこと、ですか??」
 言っている意味が。

 本当に分からなかったからだ。

「僕の能力も、何もかも……」
 とらも据えていた椅子から。
 腰を浮かばせた。
「分散しちゃったの??」

 恵比寿の画像と、濱路とを交互に見入った。
 濱路はとらを見ない。
「そぅゆんじゃなくて、さ」

 濱路は動画を再生させた。

 ◆◇

『おおおお、俺は男の子だよ?! 止めてよぉう!』

 そう泣き叫ぶ恵比寿の声が。
 研究室から鳴り響いた。

『そこは! 出すとこだよ?? ったい!』

 最初の怪人との行為のときのものだった。

 ◇◆

「博士? この動画は……いつのー??」
 とらには身に覚えのない動画だった。
 そのとき。
 気絶していたからだ。
「一番最初の怪人との対面のときのものだよー」

 カチ!

「さて。このあと」
 濱路がカルテを分散させていく。
 その一枚に。
「茶々が入って怪人との行為はなかった、が!」

 恵比寿の体内におけるデーターもあった。

「そのときに、その怪人が宝君の体内に《種》を」

 すとん。
 とらは椅子の上に腰を下ろした。
「種?? 何、それー??」
 唖然と、とらは濱路に尋ねた。
「発情が抑制されるんだ」

 《魔法少女》は本来、怪人のデーター回収するもの。
 そう濱路が開発、研究を行っていた。
 とらも、そう内の一体だ。

 怪人を発情させ。
 欲情を受け入れ、殲滅させる。
 のが本来のやり方だ。

 ならば。

 欲情させられない《魔法少女》はどうなるか。
「廃棄、しないよね?? 宝は、宝は!」
 とらが声を震えさせた。
 顔も青ざめていた。
「彼は、地球人だ!」

 ベコ!

「!? 何をするのー~~博士ェ~~??」
「聞きなさいってば」
 
 叩いた手を撫ぜる。
 とらの頭は石頭だからだ。

「どう言う、経緯いきさつがあるかは知らないけどー」
 宙をスライドさせ。
 全てを閉じた。
「種の開花はぁー」
「?? 開花ってー」

 とらが尋ねた。
 濱路はここでようやく、椅子に腰を下ろす。
「植えた種は必ず成長するんだよ。だから、宝君も同じさ」
 くるんくるん。
「三年後かな?? 大樹君以上に妖艶になるよ♡」
 満面な笑顔の濱路に。

「メンテナンスは終了ー??」

 とらが立ち上がった。
 そんなとらに。

「はい」
「? これは何ー??」
「メンテナンスの度に持ってきてよー」

 二枚のカード。
 記録した情報が入っている。

「二人には渡さないでよー??」

 とらも頷く。

「はーい」
「お前も見るなよー」

「……はぁ~~い」

 とらは指先でカードを弄んだ。
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