81 / 91
第81話 必読な説明書
しおりを挟む
(私は、この魔法少女なんちゃらてアニメを知らない)
希美は手の中にある魔法の杖を見た。
おもちゃだと分かる。
プラスチック素材で、出来たシンプルなデザインのそれ。
(でも。だからこそ、私なりに使いこなしてみせる!)
ガチャガチャのカプセルから取り出した《宝石》をポケットから取り出した。
色とりどりに、宝石の形に製造されたそれを。
ジャラ!
ジャラジャラ‼
(……色、まぁ。それで判断するほかないわよね。でもーー)
水=青。
(安易、じゃないわよね?)
しかし。
水は水でも、水嵩を増やすための魔法石が必要だ。
ひょっとしたら、とも思う。
(定番、だと)
ごくーー……。
「まどか!」
「!? 何かな?? のなかちゃん!?」
船から身体を乗り出して、希美は桜木に声をかけた。
桜木も、すぐさま返事をする。
「む? のなかちゃん! 準備は整ったのだ??」
次いで、日向も聞いた。
「違うわ。魔法石のことで聞きたいのよ!」
「分かったよ! お兄さん、ちょっと行ってくるよ!」
「うむ。分かったのだ!」
ったったった!
「のなかちゃん!」
「まどか!」
希美は桜木の顔に手を伸ばした。
「?! のなかちゃん、どうしたの?」
「いいえ。ここでかくれんぼしてただけなのに、こんなに」
「ううん。ぼろぼろ、だね。私も、のなかちゃん、も」
「ええ。本当にーー篠崎のおかげで、ね」
ふ。
「! ……ううん、篠崎君。探してたんだよね、私たち」
桜木は、伸ばされた希美の手を取り、頬ずりした。
その手も擦り傷だらけで。
切れた箇所から流れた血も、固まっていた。
「でも。居ないんだよ、もう」
桜木は、自身が最後に見た、篠崎を思い出した。
鮮血の中央に居る彼を。
つい、笑ってしまう。
「?」
桜木は目を閉じ、言い聞かせるかのように言い続けた。
「――……きっと。一人だけで、何も言わないで帰ちゃったんだよ。篠崎君は」
「いいえ。それはないわ」
きっぱりと強い口調で、
「彼は、あんなでも。誰かを傷つける真似を、……することはないわ」
希美が桜木に言いきった。
「それは。まどか、あなただって分かっていたはずよ」
「のなか、ちゃん……」
「なのに。どうして『居ない』だなんて言うの? まどか」
「……だって。こんなに騒がしいのに、……出て来ない、なら。それしかないよ?」
引きつった表情の桜木。
それになんとも言えない気持ちに希美はなったが。
いまは、それどころじゃない。
「まどか。教えて欲しいの。魔法少女なんちゃってアニメのーー」
くしゃ。
「はい。カプセルに一緒に入ってた《宝石》、魔法石の説明書だよ。のなかちゃん」
ぴら!
「多分。水系なのはーーううん。この紫と白のやつだよ」
「ありがとう。まどか」
「ううん! じゃあ、私お兄さんのところに応戦に戻るね!」
「ええ。彼をお願い」
「――……彼??」
「?」
「ううん! 任せて、のなかちゃん!」
そして。
桜木は金属バットを振り回し、戻って行った。
「説明書とは、盲点だったわ。私としたことが」
希美は手の中にある魔法の杖を見た。
おもちゃだと分かる。
プラスチック素材で、出来たシンプルなデザインのそれ。
(でも。だからこそ、私なりに使いこなしてみせる!)
ガチャガチャのカプセルから取り出した《宝石》をポケットから取り出した。
色とりどりに、宝石の形に製造されたそれを。
ジャラ!
ジャラジャラ‼
(……色、まぁ。それで判断するほかないわよね。でもーー)
水=青。
(安易、じゃないわよね?)
しかし。
水は水でも、水嵩を増やすための魔法石が必要だ。
ひょっとしたら、とも思う。
(定番、だと)
ごくーー……。
「まどか!」
「!? 何かな?? のなかちゃん!?」
船から身体を乗り出して、希美は桜木に声をかけた。
桜木も、すぐさま返事をする。
「む? のなかちゃん! 準備は整ったのだ??」
次いで、日向も聞いた。
「違うわ。魔法石のことで聞きたいのよ!」
「分かったよ! お兄さん、ちょっと行ってくるよ!」
「うむ。分かったのだ!」
ったったった!
「のなかちゃん!」
「まどか!」
希美は桜木の顔に手を伸ばした。
「?! のなかちゃん、どうしたの?」
「いいえ。ここでかくれんぼしてただけなのに、こんなに」
「ううん。ぼろぼろ、だね。私も、のなかちゃん、も」
「ええ。本当にーー篠崎のおかげで、ね」
ふ。
「! ……ううん、篠崎君。探してたんだよね、私たち」
桜木は、伸ばされた希美の手を取り、頬ずりした。
その手も擦り傷だらけで。
切れた箇所から流れた血も、固まっていた。
「でも。居ないんだよ、もう」
桜木は、自身が最後に見た、篠崎を思い出した。
鮮血の中央に居る彼を。
つい、笑ってしまう。
「?」
桜木は目を閉じ、言い聞かせるかのように言い続けた。
「――……きっと。一人だけで、何も言わないで帰ちゃったんだよ。篠崎君は」
「いいえ。それはないわ」
きっぱりと強い口調で、
「彼は、あんなでも。誰かを傷つける真似を、……することはないわ」
希美が桜木に言いきった。
「それは。まどか、あなただって分かっていたはずよ」
「のなか、ちゃん……」
「なのに。どうして『居ない』だなんて言うの? まどか」
「……だって。こんなに騒がしいのに、……出て来ない、なら。それしかないよ?」
引きつった表情の桜木。
それになんとも言えない気持ちに希美はなったが。
いまは、それどころじゃない。
「まどか。教えて欲しいの。魔法少女なんちゃってアニメのーー」
くしゃ。
「はい。カプセルに一緒に入ってた《宝石》、魔法石の説明書だよ。のなかちゃん」
ぴら!
「多分。水系なのはーーううん。この紫と白のやつだよ」
「ありがとう。まどか」
「ううん! じゃあ、私お兄さんのところに応戦に戻るね!」
「ええ。彼をお願い」
「――……彼??」
「?」
「ううん! 任せて、のなかちゃん!」
そして。
桜木は金属バットを振り回し、戻って行った。
「説明書とは、盲点だったわ。私としたことが」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる