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第60話 望美と《宝石》
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「ありがとう。まどか」
たぬ吉の背中に腰を下ろす希美。
「っふぇ? な、何がかな? のなかちゃん」
「色々とよ」
にこやかに希美は、桜木の顔を見た。
「っそ! そんなことないよ」
桜木が頬に手を添えた。
三人は走っている。
ただ、希美はたぬ吉の懇願によって。
背中に、再び腰を下ろすことになった。
「済まんが。これからどうするのだ?」
日向は止まっている、白いマネキンを見た。
ギギギ――……と、小刻みに揺れている。
「おれには皆目、見当もつかないのだ」
「おいらもでやんすよ! 姐さん!」
銛を、強く握り締める日向。
そんな日向に、
「ううん。大丈夫だよ。お兄さん」
桜木が、拳を握りながら、
「私が守りますから!」
ふんわりと微笑む。
カカカカ!
その屈託のない笑顔に。
「っむ゛! っむ……うむ、なのだ」
日向は顔を真っ赤に、紅潮させて言う。
「まずは。上の階に戻りましょう」
希美は短くそう言った。
「そぅ、だね。のなかちゃん」
桜木が苦笑交じりに、頷く。
◆
「っだ! りゃああああ~~ッッ‼」
希美は足を大きく広げ。
腰を下ろしながら。
《宝石》をはめ込み。
扉に《魔法少女の杖》を振るっていた。
はめ込んだ《宝石》のことは。
カプセルの中の、説明の紙を見た。
もちろん、詳しい桜木からも聞いた。
「やっぱり、ダメね」
希美は、額を腕で拭いながら。
そう小さく漏らした。
日向は、そんな希美を伺うように見ていた。
「? 何かしら? 日向さん」
「いや、何……その格好は?」
「恰好??」
日向が指をさした、自身の恰好を見た。
「!?」
服の前が、真っ直ぐに裂かれていて。
胸は無難に隠れてはいるものの。
股間は露になっていた。
「ひっ‼」
咄嗟に希美は、しゃがみ込んでしまう。
顔は、膝の上に伏せられている。
その姿に。
「たぬちゃん、ポシェットから服を」
たぬ吉も、ポシェットの中に腕を伸ばした。
「はいでやんす! アニキ!」
◆
桜木が選んだ服は、ジャストフィッチしていた。
「ここの《宝石》には、浮く効果があるのはないのね」
「ううん。ないみたい」
「そう」
希美は掌の中の《宝石》を、鳴らすように動かす。
ジャラジャラ――……。
「攻撃に効きそうな《宝石》があるだけマシ、ね」
ぎゅ!
希美は杖の柄に、強く力を籠めた。
すると、杖にはめられた《宝石》も、鈍く光る。
宙を見上げれば。
野菜と果物たちも、浮き止まっていた。
だが。
白いマネキン同様に。
小刻みに、震えている。
意識はあるのか、目が――三人を追っていた。
『っぎゃ、っぎゃ、っぎゃ』
たぬ吉の背中に腰を下ろす希美。
「っふぇ? な、何がかな? のなかちゃん」
「色々とよ」
にこやかに希美は、桜木の顔を見た。
「っそ! そんなことないよ」
桜木が頬に手を添えた。
三人は走っている。
ただ、希美はたぬ吉の懇願によって。
背中に、再び腰を下ろすことになった。
「済まんが。これからどうするのだ?」
日向は止まっている、白いマネキンを見た。
ギギギ――……と、小刻みに揺れている。
「おれには皆目、見当もつかないのだ」
「おいらもでやんすよ! 姐さん!」
銛を、強く握り締める日向。
そんな日向に、
「ううん。大丈夫だよ。お兄さん」
桜木が、拳を握りながら、
「私が守りますから!」
ふんわりと微笑む。
カカカカ!
その屈託のない笑顔に。
「っむ゛! っむ……うむ、なのだ」
日向は顔を真っ赤に、紅潮させて言う。
「まずは。上の階に戻りましょう」
希美は短くそう言った。
「そぅ、だね。のなかちゃん」
桜木が苦笑交じりに、頷く。
◆
「っだ! りゃああああ~~ッッ‼」
希美は足を大きく広げ。
腰を下ろしながら。
《宝石》をはめ込み。
扉に《魔法少女の杖》を振るっていた。
はめ込んだ《宝石》のことは。
カプセルの中の、説明の紙を見た。
もちろん、詳しい桜木からも聞いた。
「やっぱり、ダメね」
希美は、額を腕で拭いながら。
そう小さく漏らした。
日向は、そんな希美を伺うように見ていた。
「? 何かしら? 日向さん」
「いや、何……その格好は?」
「恰好??」
日向が指をさした、自身の恰好を見た。
「!?」
服の前が、真っ直ぐに裂かれていて。
胸は無難に隠れてはいるものの。
股間は露になっていた。
「ひっ‼」
咄嗟に希美は、しゃがみ込んでしまう。
顔は、膝の上に伏せられている。
その姿に。
「たぬちゃん、ポシェットから服を」
たぬ吉も、ポシェットの中に腕を伸ばした。
「はいでやんす! アニキ!」
◆
桜木が選んだ服は、ジャストフィッチしていた。
「ここの《宝石》には、浮く効果があるのはないのね」
「ううん。ないみたい」
「そう」
希美は掌の中の《宝石》を、鳴らすように動かす。
ジャラジャラ――……。
「攻撃に効きそうな《宝石》があるだけマシ、ね」
ぎゅ!
希美は杖の柄に、強く力を籠めた。
すると、杖にはめられた《宝石》も、鈍く光る。
宙を見上げれば。
野菜と果物たちも、浮き止まっていた。
だが。
白いマネキン同様に。
小刻みに、震えている。
意識はあるのか、目が――三人を追っていた。
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