上 下
53 / 91

第53話 目醒めた望美

しおりを挟む
「――……ん?」

 私は息苦しさに、目を覚ましたの。
 視界は薄く光りが差し込んでいるようだけど。
 
「ここは、一体……――どこ、なの??」

 私は身体を起こしたのだけど、場所が不安定で上手くいかないの。
 徐々に、辺りも見えて来る。
「あ。水」
 私の目に映ったのは、水のペットボトル。
 4本はあるわね。
 1本、頂くわ。

 少し、咽喉が痛いのは、どうしてなのかしら?

 キャップを回そうとして、力を込めた瞬間。
 ズク!

「!?」

 ズクズク――……ッッ!

 下半身が悲鳴を上げたの。
 私も悲鳴を、漏らしそうになったわ。
「っぐ、ぅ、うう……っは! っぐ」
 その力で、キャップを回すことも出来たから、私は勢いよく飲んだの。
 口に入らなかった水は、口元から伝い零れて、私の膝を濡らしていく。
「ぃ、たい……ぅ゛、っふ、ぅ゛ううう゛~~」
 私の流した涙も、膝を濡らす水になるの。
「まどか、たぬ吉~~ぃいい~~」
 傍に居るはずの、彼女たちも居ないこともあって。
 私の胸中は、穏やかじゃない。
 不安で、押しつぶされそうだった。
 一体、どうして?
 私だけが、こんな場所に居るっていうの??
「まどか……たぬ吉――……」
 瞑った目には、彼女たちの顔が浮かぶ。
 にこやかに、微笑む姿が。

「どこ、なの??」

「全部、お前さんのためにやってんだぞ?」

 聞き覚えのある。
 腹の立つ彼の声が聞こえた。
 振り向いて、顔を見ることすら、嫌な奴。

「どんっだっけ、苦労してんのか、お前さんに分かる?」
 声が近くなって来ているのが分かる。
 気配が、息遣いが。

 四肢をざわつかせているもの。

「分かるわけないじゃない。意識がなかったんだもの」
 私も、素っ気なく彼に言う。
「ま。そりゃあな、でも。知りたくないかい? のなかちゃん?」
 すぐ背後に、彼がいる。

 バク。

 バクバクバクバク!

「っつ!」

 嫌だ。
 こんなときに限って、嫌なことを思い出すのね。
 私。

 私、この嫌いな奴に。
 口づけされたんだった。

 顔が熱いわ。
 私は顔を伏せた。
 その様子に、
「何?? どっかしたのかっなぁ~~♪」
 彼は――篠崎琢磨は、面白がっている声を上げるの。
 本っっっっ当に、嫌な奴!
「――~~……ッッ」
 私が黙っていると、篠崎は。
 手を肩に置いた。
 角ばった手だ。
 少年と、大人の間のような。

 触りたくなる手。

「――……篠崎? あなた、一体??」

 私は、思いっきって顔を上げると、
「‼」
 篠崎と視線がかち合った。
 真剣な表情の、篠崎と。

「前座なしに挿入れられたから痛むよな? もう少し待ってろよ。あいつらが、薬局に行ったから、もうすぐ、ちゃんとしたアフターケアが出来るかんな」

 篠崎が、あまりに真剣に言うものだから。
 篠崎が、あまりに真剣に言うものだから!

 カカカカカカカカ‼

 顔から火を吹き出しそうになってしまったわ。
 忘れかけていたのに。
 忘れかけていたのにっっ‼

「さ。おばさん?」
「おばさんって、同じ年齢でしょ」
「いやいや。《中古品おばさん》だし♪」
 よく分からない言葉に、私は頭を傾げてしまうと。
 篠崎が微笑んだ。
「っふは! 横、座るぜ? おばさん」
「本当に、嫌な奴ね」
「褒め言葉だな! っふは!」

「……私と、まどかは。あなたを探していたのよ?」

 笑う篠崎に私が言う。
 だって、探していたのは事実だったし。
 でも。
 半分は、嘘なのかもしれない。

 私は、まどかと一緒に居たかったのだから。

「お前さんたちに、俺は捕まえられねェよ? っふはは!」
「でも」
 私は、篠崎の胸元に手を置いた。
「こうして、捕まっているじゃないの」
 
 その瞬間。
 っか、かか。

 カカカカカカカカーー…ッッ。

「あなたでも、そんな顔するのね。篠崎」
 耳まで真っ赤な彼。
「ああ。捕まえられてやったんだよ。自首ってやつ?」
 頬を指先でかく仕草をする篠崎は、恥ずかしそうに言う。
「それで? この状況を平たく、簡単にお願いするわ」
 私は、そんな篠崎に興味はないの。
 興味があるのは。

「まどかと、たぬ吉はどこなの?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

処理中です...