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第51話 燃え上がる店内で

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 辺りは、野菜が焦げる匂いに包まれていた。
 《提灯霊バケモ万物チョロスト》が炎を吹き出す。
 火が点き燃える野菜が、ゲズな笑い声を上げる。
 高らかに。

『ゲゲゲ‼』

 それを背にし、日向たちが薬局へと走って行く。
「っわ、ああ! 燃えているでやんすよ! やんすよ!」
 たぬ吉は、好奇心にも後ろを振り返り、その光景を見た。
 実況するたぬ吉を他所に、走って行く。
 返事もせずに、ひたすらに。

「あ! った!」

 視界に浮かぶ《薬局ドラッグストア》の看板に、桜木も声を出して日向に知らせた。
「お兄さん! そこが薬局だよ!」
「ん! ……以外に、こじんまりした店なのだね」
「店内は割と広いんですよ」

 たたたた!

 ったったった!

 辺り空気が、熱風に包まれていく。
 たまらなく熱い。
「何か飲みたいな」
 桜木が額を拭う仕草をする。
 それは日向も同じだった。
 薄い服から見える肌が赤く染まり、汗が伝うのが見える。
 桜木は、その伝う汗を見つめていた。
 汗は衣服に染み込んだ。
「確かに、熱いのだ」
 声を強張らせて言う日向。
「あ。たぬ吉! たぬ吉、火には気をつけないと、もぇちゃ――」

「あんぎゃ――~~でっや、んすぅ~~っっ‼」

 桜木が振り返ると、たぬ吉が火が点いていた。
 ザ――……。
 思わず血の気が引いてしまう。
「たぬ吉! 転がって地面に体に擦って!」
「ひい~~っで、っやんすぅ~~!」
 
 ゴロン。

 ゴロロン!

「っは、ぁ~~っっ」
 なんとか身体の火を消し、伸びているたぬ吉。
 そんな彼女を、桜木が起こし、脇に抱えた。
「もう! 行くよ!」
「ありがとうでやんすぅ~~まどか~~」
 しみじみと感謝を言うたぬ吉。
 先頭を走っていた日向が足踏みをしていた。
「? お兄さん、どうかしたんですか?」
「必要なものが分からないのだ」
 困った面持ちの日向に。
 桜木が微笑んだ。 
 
「ううん。あのね」

 桜木はかごを手にした。
「あ! まどか水、水は必要でやんすよ!」
「2ℓのペットボトル4本と、500mlのペットボトルも持てるだけ持って! ポシェットに入れておいて! たぬ吉!」
「分かったでやんすよ。まどか!」

 日向は、店内の中を見渡していた。
 その全てが、初めて見たものだったから。
 当たり前なのかもしれない。
 見惚けている日向に、桜木が。
「お兄さん」
「! どうかしたのかい? まどかちゃん」
 日向がにこやかに、聞き返した。

「日本にようこそだよ」
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