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第49話 一階

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 桜木が放った矢によって、カボチャは光の粒子に還った。

「あ! おおお、お兄さんっっ!?」
 意識に失った日向が、地面めがけて、落下していく。
「たぬ吉! お兄さんを追って!」
「言われなくても! アニキを! 追うでやんすよぉ‼」

 ギュイン!

 ダダダダ、っだっだっだ!

『カカカッ!』

 カボチャを倒しても、野菜は売り場から。
 この場所に、集結していく。
「本っっ当に! 頭にくるよ!」
 桜木はボーガンの矢を引く。
「邪魔、しないでよ!」

 バシュ、シュ!

 すべての矢は、野菜に命中した。
 しかし。

 野菜は減らない。

「アニキ――っっ‼」
 たぬ吉は、短い手を伸ばし。
 ぐぐぐ!
「アーニーキ――~~ッッ‼‼」

 ぱっし!

「アニキ! アニキ!」

 たぬ吉は日向の腕を掴み、それを。
「お兄さん!」
 桜木が日向を拾い上げた。
 ここでやうやく、三人は一緒になった。
 前に野菜。
 左右に野菜。
 退路はないほどに、野菜に囲まれている。

『カカカカカ!』

 ゲスに野菜が嗤う。
「わわわ! まどか、まどか~~ぁ!」
 たぬ吉が泣き声で、桜木の名前を呼ぶ。
「ううん。突っ走って! たぬ吉‼」
 強い口調で、桜木はたぬ吉に指示を出した。
 だが、たぬ吉は弱腰になっており、小刻みに震えている。
「ででで、でもで、ややや、やんすよ~~ぅ?!」
「ここで立ち止まっても、られるのは一緒だよ!」
 バンバン!
 桜木はたぬ吉の背中を掌で叩く。
「――……怖いのは、分かるよ? たぬ吉」
「……まどか」
「私も、怖いよ」
 桜木が苦笑する。
「でもね。たぬ吉」
 そして、真剣な表情になった。

「死にたくないよ!」

 たぬ吉も、半開きになっていた口を閉じた。
 目の前の道を見た。
「突っ切るでやんすよ! そのあとは、どうするでやんす?! まどか!」
「あとで考えるよ!」
 ノープラン、と言う桜木に。

「分かったでやんす!」

 たぬ吉は一直線に、一階へと向かった。
 最初の目的――《薬局》に。

 ◆

 穴は地下まで開いていた。
 地下は食材売り場で、野菜たちの住処だ。
 よって、一階にも野菜たちは溢れていた。
「アニキ、アニキ?!」
 桜木と、たぬ吉は地面に伏せながら日向に声をかけた。
「――……っん?」
 それに反応するかのように。
 日向の目が動いた。

「っわ、わわわ!」

 勢いよく起き上がる日向を、桜木とたぬ吉が抑え込み。
 また寝かせた。

「??? まどかちゃん? たぬちゃん??」

 状況が分かって居ない日向は、目をぱちくりとさせる。
「ううん。おはよう、お兄さん」
 桜木が、日向の血で汚れた頬に手を添えた。
 優しい口調に、日向も。

「おはようなのだ」

 手に手を添え、桜木に、答えるように返事をした。

「まどかちゃん。たぬちゃん♪」
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