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第27話 崩壊の序章

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 ガッシャン!

 ガッシャン‼

 辺りが崩れ始めた。
 それに、桜木も、希美もたぬ吉も狼狽する。
「なんなの?? これは!」
 真っ暗闇で何も見えなくとも。
 盛大に崩壊する音が聞こえ、空気さえ荒ぶっていた。
 2人と一匹のの髪も、服も風に煽られ、せわしなく動く。

「姐さん?! まどか!? この世界ではこんなことがよくあることなんでやんすか?? おいら、怖いでやんすよぉ~~う‼」

 たぬ吉も、とうとう泣き言を漏らした。
「あるわけないじゃない。こんなこと」
 希美が、携帯の明かりを向けた。

「愉しそう……」
 ポツリ、と桜木が漏らした。

 ◆

 そこは漆黒の闇。

「まどか」
「うん。居る、よね? のなかちゃん」

 十代の少女は背中を合わせて、前と後ろを見据えた。
「こっちは、居ないわ」
「うん、こっちも――居ないみたいだ」
 少し、安心するも。

 まだ。

 まだまだ。

 それでは安心できなかった。
 入念に、その漆黒の闇の中を見据えた。
 確かに。

 その中に。

 蠢く影が――視えた。

「「居ない」」

 桜木と、希美の声が同調する。
 そんな、彼女らに。
「さぁ! いざ、進まんでやんすよ~~!」
 タカタカ、とたぬ吉が駆け出す。
 それに。

「待ちなさい、たぬ吉。まだ、安全とは限らないわ」

 希美が制止する。
 たぬ吉は、小さく小声で。
「そんなこと言っていたら、きりがないでやんす」
 聞き取りやすく、言う。
 その言葉に。
「分かっているわ、たぬ吉。でも順序もあるでしょう」
 希美が、たぬ吉の頭部を杖で、弱く小突いた。
「ィたっでやんすぅ~~姐さん~~」
 たぬ吉もわざとらしく声を上げた。
「のなかちゃん。たぬ吉の言う通りだよ」
 桜木が、希美に声をかけた。
「居ないみたいだし、行こう?」
 それに希美も、
「まどかがそう言うなら。そうね」
 頷く他ない。
 納得がいかないのは、たぬ吉。
「なんでおいらは、叩かれなきゃいけないんでやんすかぁ?!」
 荒く息巻く。
「ごめんなさい、たぬ吉」
 よしよし、と頭を撫ぜる。
「気にしてないでやんす! 姐さぁ~~ん♡」
 たぬ吉の尻尾が、ぶんぶんと上下運動をする。
 桜木は、希美とたぬ吉の様子を見ていた。

(それにしても、あの気配はなんだんだろう?)

 少し、気が張っているのかな、程度に、桜木も苦笑する。
 確かに、この漆黒の闇の中に。
 ――蠢くものがった。
「まるで、ここはお化け屋敷みたいだ」
 桜木の言葉に。
「まどか、お化け屋敷は苦手なの?」
 希美が聞く。
「ううん! ホラー全般は好きだよ。ゾンビも平気なんだ」
 暗くて分からないが、声は嬉々とし、浮かれていた。

「私は苦手なのよ。まどか」

 重い口調で、希美が言う。
「姐さんが?! 姐さんに苦手なものがあるんでやんすか??」
 驚いた声をたぬ吉が漏らした。
「たくさん、あるわよ」
 希美は口をへの字にさせた。
「のなかちゃん、大丈夫だよ。私も、たぬ吉も居るよ」
 安心させる桜木の言葉に。

「ええ、そうね」

 ズキズキ。

「っつ、ぅ」

 下半身に、激痛が奔った。
 それにくぐもった声も、漏れてしまう。
「のなかちゃん?? さ、行こう? 一階の薬局に」
「っつ、ぅ、ええ。行き、ましょ、ぅ゛!」

 この後、桜木に、希美とたぬ吉は。
 緊張した場面に、遭遇する。

 建物の崩壊に。
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