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第10話 ぼろぼろの望美

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「のなか、ちゃん」

 希美を呼ぶ桜木の声。

「のなかちゃん??」

 その声に。
 希美反応する。
「ん……――まどか??」
 まどろんだ表情の希美。
 視界いっぱいに桜木の泣き顔が映る。
 ボタボタタタ。

 涙に、鼻水。
 頬も真っ赤だ。

「ふふ。まどかったら、なんて顔をしているの」

 ゆっくりと、希美は腕を伸ばした。
 少し、小刻みに震えている。
 怪物たちとの性交渉によって。
 体力も消耗している。

「ごめんね、ごめんね! のなかちゃん……」

 謝り続ける桜木に。
「そんな言葉が聞きたいわけじゃないわ」
 希美が強く言う。
「! あ、のなか、ちゃん」
 身体を起き上がらせる希美に、
「のなかちゃん!」
 桜木も腕を伸ばす。
「私は別にいいのよ」

 ズク。
 希美の目が細くなる。
 ズクズクズク。

「――まどか。あなたが無事だったのなら」

 その言葉に、桜木の身体が跳ね上がった。

 ブン。

 ぶんぶん!

 強く頷いた。

「わ゛だじばへ゛い゛ぎだよ゛!」
 そして。
 桜木は希美の身体を強く抱き寄せ、
「あり゛がとう゛! のながぢゃん‼」
 感謝の言葉を言った。

 思わなかった行為に。
 希美の顔も呆けてしまう。

 遅れること数秒。

 カカカカカカカカカ!

 希美の顔が朱に染まった。
「あな、あなたがへへへ、へいきなら……わわわわ、わたしはっっ」
「のなかちゃん」
 桜木が耳元で囁いた。

「大好きだよ♡」

 カカカカカカカカカ!

「あ、ありがとう……」

 ◆

 桜木はかなりの洋服を持ってきていた。
「のなかちゃんは黒が似合うと思ったんだよ」
「ええ。黒は好きよ」
 破かれた服で前を覆う。
 さすがに、直視はされたくはなかったからだ。
「タイツもあるよ! 靴はヒールが高いやつ」

 嬉々として言う桜木。
「でも。ちょっと持って来過ぎじゃないのかしらね」
 ちゃっかり、バッグも持って来ていた。
「すぐに、見つかるかもしれないのに」
 希美の言い草に。
「? ……篠崎君が、かな??」
「案外。近くに居るのかもしれないわ」
「そう、かな」
「ええ」

 しおらしくなる桜木。
 持って着ていたバズタオルで、身体を軽く拭く。
(拭き取っても、伸びる感じしかしないわ)
 希美の眉間にしわがよる。

 ズク。

「っく」

 ズクズクズク。

 桜木は、はらはらした様子で。
 希美を見ていた。

 黒のワンピースに、黒のタイツ。

 希美が立ち上がった。

「さ。行くわよ、まどか!」

 しかし。
 一体どこへ。

「まどか」
「? 何かな?? のなかちゃん」

 バックを背負った桜木が、首を捻った。

「トイレには、行ったのかしら?」
 希美が聞いた。
 確か、トイレに向かう途中に、怪物《あんなもの》と遭遇したからだ。
「と、イレ?? ……ぁ」
 まどかは、俯いてしまう

 また。
 漏らしたことも思い出す。
 しかも、洋服に、タイツや靴。
 集めたのは、これだけあって。

 下着を忘れてしまっていた。

「ぅ、うううぅ……ごめん、んさぁいぃ~~」

 また泣きじゃくってしまう桜木。
「いいのよ。まどか、私も行きたいだけなのだから」
 希美は優しく、頭を撫ぜた。

 今はトイレに行って。
 ビデで、洗い流したかった。
 希美の望みは、それだけだった。
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