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EP:71 幸せの条件

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「俺様は! 開発しろっつったんだぞ!? 誰が仕込んでいいっつったよ!」

 露天風呂の石を挟んだ浴槽。
 フロイとセスナが言い合った。
 安住は、一旦ーー隔離という格好で、他の浴槽に隔離をしておいた。

 よって。
 小さな声で罵り合う。

「いいも何も。君に取る許可はない」
「っはァ゛~~?!」
「それにだ。アズミは僕の恋人になった」

「っはァ゛ーー~~??」

 大きく口を開けることしか出来ないセスナにさらにフロイが続けた。
「だからアズミに害を及ばせば、僕は君に容赦はしない」
 目を今以上に吊り上げ、さらに目を細めてセスナを見る。

「僕は君が好きな彼にしたように。殴り殺すよ」

 その言葉に。
 セスナの眉が吊り上がっていった。

 ゲイリーにしたように。

 殴り。

「殺、す…--っツ!?」

 一気にセスナの顔から血の気が引いてしまう。

「ぉ、おい?? そぅいや! っど、どこだよ?? なァ??」
「何が?」
「何が? っじゃねェし‼ あいつだよ! あのバカだよ‼」
「誰?」
 不機嫌なカナリアのように言い聞き返すフロイにセスナも声を荒げた。

「ゲイリー=ヤングだよ! 手前の男の相部屋の‼ 囚人だよ‼」

「…医務室に…行ったよ」
 石越しに安住がセスナに言った。
「もう一人の囚人ひとと」
 少し声が震えていた。
「もう、一人のーー囚人…あァ゛?」
 心当りの人物と、安住とフロイが言った人物に、
「ああ! あの馬鹿なッッ」 
 セスナが短く言った。
「あいつも居たのか」
「そりゃあ。居ない方が可笑しいと思わなかったのかよ」
「あァ゛~~」
 バシャ! と顔にお湯をかけた。
「だなァ゛~~」

 そして、言葉もなくなってしまう。

「「…………」」

 露天風呂の中に、お湯の流れる音だけが鳴り響いた。
「だから。他の囚人の穴を掘ってろよ」
日本人アズミが先だァ゛!」
「…君。僕の言葉、聞いてたの?」

 睨み合う二人の様子に。
(何をやってるんだろ? てーか、熱い…逆上せちまう)
 安住は地面の凹凸に頬を置いた。
(あづぃー~~)
 ひんやりと、そこそこ冷たい石に。
「ふぁー~~」
 目を瞑った。

「約束は約束だろうがァ?! 掘らせろ!」

「分かった」
「‼」
「今回だけだ」

「ッッ‼??」

 意識しないで聞いていた安住の目が思わず見開かれてしまう。
「ぇ、え?!」
 そして、慌てて浴槽を上がり。
 二人の居る浴槽に行ってしまう。

「いとォ~~おおおッッ‼」

「アズミ。ああ、聞こえたのか」
「っき、聞こえてたのじゃない‼ 馬鹿‼」
「一回キリってことで」

「恋人を守ろうとか思わないのかよ!」

 バシャ!

 バシャ‼

「幻滅した! 本当にがっかりした!」
「そう? 嫌いになる?」
 はにかんだ顔を向けるフロイに、安住の口もわなわな、と震えた。

「ね? アズミ、約束するから」
「何を?」
「僕は君が愛してるけど。君は?」
「!? っな、何だよ! 急にっっ‼」
「僕のことーー嫌いになっちゃう?」
 向かい合い、顔を掴んだ。
「僕のことを信じて欲しい」
「ぅ、ううう゛~~ズルい」
「ん? 何が??」

 安住はフロイの肩に顔を乗せた。
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